英ガーディアン紙は、有料会員による収益を飛躍的に増加させている。有料会員の数はなんと過去1年間で、1万5000人から20万人に伸びた。ガーディアンの会員プログラムは2014年に開始され、広告収入の減少に対抗する形で去年1月にプロモーションが強化された。単発の寄付も10万件集めたそうだ。
英ガーディアン紙は、有料会員による収益を飛躍的に増加させている。有料会員の数はなんと過去1年間で、1万5000人から20万人に伸びた。
ガーディアンの会員プログラムは2014年に開始され、広告収入の減少に対抗する形で去年1月にプロモーションが強化された。単発の寄付も10万件集めたそうだ。
現在、彼らが掲げる目標は、さらに壮大だ。2019年4月までに、100万人の有料会員数に達することがゴールだという。
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ペイウォールではない
メンバーシップ、マーケティング、コンシューマー収益のマネージングディレクターであるデーヴィッド・マグリアーノ氏は述べる。「弊紙の会員プログラムは、ただペイウォールに別名をつけたものではない。なぜなら会員になった人々は、特にエクストラのコンテンツや彼らだけが閲覧できるものがあるわけではないからだ。彼らは、ただガーディアンのジャーナリズムが、オープンな状態で維持されることが重要だと同意してくれているために登録している」。
ガーディアンの会員プログラムには、3つの有料会員プランがある。毎月5ポンド(約700円)を払う「サポーター」、毎月15ポンド(約2100円)を払う「パートナー」、そして毎月60ポンド(約8400円)の「パトロン」だ。イベントの際は優先予約やディスカウントなどの特典が得られる。
ガーディアンは特に「サポーター」のプランをプロモーションしている。事実、会員登録の大部分はサポーターだという。収益に関して具体的な数字は公表しないが、20万人がひと月に最低5ポンド(約700円)を支払っているとすると、毎月100万ポンド(約1億4000万円)が入ってくる計算だ。これは年間では1200万ポンド(約17億円)になる。会員プログラムに従事している従業員は、どんなときでも50人ほどはいるという。業務内容はデータ、デベロッパー、マーケティング、ユーザーエクスペリエンス、ジャーナリズムとさまざまだ。
勧誘メッセージの工夫
会員を募るメッセージの内容にも何度も修正・改善が加えられた。30の異なるメッセージを試した結果、20万人の会員数に達した。毎回メッセージの長さ、メッセージの内容、そしてサイト上の配置が変えられた。
初期に作られたメッセージのなかにはガーディアンの歴史に触れたものがある。「フォンハッキングからパナマ文書そしてピータールーの虐殺(1819年)に至るまで、私たちはそこにいた。速報を200年間伝え続けてきた。ガーディアンに寄付を」。
単発の寄付では平均的な量を集めたが、このメッセージは会員プログラムへ誘導するという点では成績は良くなかった。独自のオーナーシップ構造、独立性、そして質の高いジャーナリズムを生み出すことのコストという点にメッセージの焦点を移すと、会員登録の割合は一気に上昇したそうだ。

現在メッセージは英、米、豪ガーディアン紙上の記事の末尾に表示されている。
大きなニュースで会員増
メッセージの配置場所についてもいくつか試した。記事の末尾、広告の位置、コンテンツ中でのリンク表示、広告ブロックをしている閲覧者へのポップアップ表示など、さまざまなものが試みられた。なかでも最後のポップアップ表示は特に効果的だったという。ソーシャルネットワークを使って会員登録や寄付を募ることもした。しかし、会員登録の割合が高かったのは、自分たちのサイト上やeメールによるニュースレター経由だった。
有料会員への登録数が増加した3つの時期があったという。ひとつはパナマ文書の調査、EU離脱に関する国民投票、そしてアメリカの大統領選挙だ。去年の夏にはアメリカとオーストラリアでも会員登録を促すメッセージを発信しはじめた。現在ではサイトを訪れる大部分のオーディエンスがメッセージを目にするようになっている。
ガーディアンによるドナルド・トランプ報道は、アメリカのオーディエンスからの寄付の駆動力となった。「アメリカのオーディエンスに対して我々が行ったリサーチによると、私たちのリベラルな価値観と、私たちが外部から加えていたグローバルな視点を評価してくれたようだ」と語るのは、メンバーシップのエグゼクティブ・エディターであるナタリー・ハンマン氏だ。
読者たちとの関係構築
特にアメリカと英国の読者たちと、より深い関係性を築こうとガーディアンは狙っている。あまり報道されていない分野を積極的にカバーすることは、そのために彼らが尽力していることのひとつだ。「約束」と題されたシリーズはその例だ。このシリーズでは、オバマ元大統領を2度支持したあと、トランプ現大統領を支持したペンシルバニア州ノーサンプトン郡といった地域に焦点を当てている。
選挙の前、ガーディアンは読者たちから何をレポーターに報じて欲しいかフィードバックを募集した。その結果生まれた報道のなかには「ミドルタウンからの眺め:大統領選挙に関するギャリー・ヤングの独自な視点」や「労働とリバプール:政党の亀裂を見せる街」がある。
それでも、一般的に言ってオンラインのコンテンツのためにお金を払わせるのは難しい。この勢いを保つことは至難の業だろう。
だが、もしもガーディアンが2019年までに100万人の有料会員数に達したら、3年以内に読者からの収益を3000万ポンド(約42億2000万円)から6800万ポンド(約95億7000万円)へ倍増するという野望が実現可能な範囲に見えてくる。この計画は去年、発表された。もしも100万人の会員が1年間に最低額のプランである年60ポンド(毎月5ポンド)を支払った場合、収益はこれだけで6000万ポンドになる。
コミットする消費者たち
メディア分析企業エンダーズ(Enders)のダグラス・マッケイブCEOは、アメリカではニューヨーク・タイムズ、イギリスではタイムズ、ガーディアンといった質の高いニュースサービスに対する会員数増加の傾向が明らかに見られると指摘する。
「国内外における、政治的・経済的な進展が加速することで、信頼できるブランドが提供する質の高いニュースの価値に対して、消費者たちはどんどんと自覚的になりつつある。不安定な状況のせいで、人々はより従事し、コミットするようになっている」と、彼は付け加えた。
Jessica Davies(原文 / 訳:塚本 紺)