メディア企業、グループ・ナインは先頃、独自のオンラインマーケットプレイスをローンチした。ザ・ドードーやポップシュガー、ナウディスやスリリスト、シーカーといった人気メディアを抱える同社は、このプラットフォームをエンゲージメント率がもっとも高いチャネル、つまりモバイルに特化させる道を選んだ。
メディア企業、グループ・ナイン(Group Nine)は先頃、独自のオンラインマーケットプレイスをローンチした。ザ・ドードー(The Dodo)やポップシュガー(PopSugar)、ナウディス(NowThis)やスリリスト(Thrillist)、シーカー(Seeker)といった人気メディアを抱える同社は、このプラットフォームをエンゲージメント率がもっとも高いチャネル、つまりモバイルに特化させる道を選んだ。
実際、その新プラットフォーム、Swipe.Shop(スワイプショップ)は、スマートフォンでの購買体験を考慮した仕様になっている。
「モバイルでのショッピングは急速に普及しており、いまや多くの人が、インスタグラムやマッチングサイトなどを利用する際、日常的にスワイプを行なっている。Swipe.Shopはそれを踏まえて立ち上げた」と、グループ・ナインのチーフクリエイティブオフィサー、アナ・プラックス氏は述べる。
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Swipe.Shopでアクセスできるショップは計80店。ショップの顔ぶれは、ホリデーシーズンまでの6週間毎日変わる。また、各ショップはそれぞれ独自のカテゴリーに属し、常時20~50点の商品を揃える。ユーザーは好みの品をクリックすれば、各店舗ページのチェックアウトプラットフォームで購入できるという。
なお、グループ・ナインのメディアブランドは、すべてこのプラットフォームに出店するという。全メディアブランドが、こうしたひとつのシステム上で展開されるのは、今回がはじめてのことだ。しかし、ポップシュガーのBeauty Shop(ビューティ・ショップ)やナウディスのActivism Shop(アクティヴィズム・ショップ)をはじめ、いずれのショップもメディアの特色を失うことなく、各ブランドカラーを担保したまま販売を進めることができるという。これこそが、Swipe.Shopの大きな特徴であり強みだと、プラックス氏は語気を強める。
スポンサー収益とコミッション収入
同プラットフォームのマネタイズは、大きく分けてふたつの方法で行われる。アフィリエイトコミッションとスポンサーシップ契約だ。
グループ・ナインは2020年の第4四半期、スポンサーシップ経由で7桁の収益を手にした。Swipe.Shopも、同社におけるスポンサー収益源において最高額を叩き出し、トップメディアに躍り出たと、チーフレベニューオフィサーのジェフ・シラー氏は語る。また、スポンサーシップ契約以外の収益源については、アフィリエイトコミッションで収益を得ていくという。スポンサー収益とコミッション収入の具体的な見込み額は明かされなかったが、シラー氏の発言からは自信が垣間見られた。
なお、ローンチ時における12のスポンサー、ギャップ(Gap)、バティスト(Batiste)、コロナ(Corona)、エルフコスメティクス(e.l.f. Cosmetics)、H&M、コールズ(Kohl’s)は、それぞれ自身のショップを同プラットフォーム上に構え、グループ・ナイン傘下ブランドと提携するとともに、自社製品を販売している。
スポンサーに求められる理由
広告スペースを巡る競争の激化に伴い、「現在、マーケターには創造力が求められている。彼らは、消費者がどこにいても、常にその目の前に広告を提示できるマーケティングミックスの必要性を強く実感している」と、D2Cブランドに特化したマーケティングエージェンシー、メディア・デザイン・グループ(Media Design Group)のCEO、ステイシー・デュランド氏は語る。
それゆえ、今回グループ・ナインが立ち上げたようなマーケットプレイスは、2020年の第4四半期から2021年度に向けて、ターゲットとなるデモグラフィックに確実にリーチしたいブランド勢のあいだで、注目されているのだという。
また、新型コロナ禍中に底を打ったFacebookのCPMが、米大統領選と、間近に迫ったホリデーシーズンによって上昇に転じたことも見逃せないと、デュランド氏は指摘する。加えて、リニアとコネクテッド、いずれのTV広告費もコロナ禍以前の水準に戻っていることを同氏は指摘。そのため、マーケターはほかの選択肢を探しはじめているという。
「昨今のマーケティングで、広告のコンテンツが果たす役割は大きい。消費者は、常に広告にさらされているのだ」とデュランド氏はいう。
アフィリエイト出展も魅力的
また、非スポンサーの出展ブランドについても、大きなメリットがある。彼らは、アフィリエイトネットワーク上で販売する商品について、既存の販促記事・情報を活用して効率的に販売することが可能だとプラックス氏。さらに同氏は、2019年から2020年にかけて前年比55%増と急伸したアフィリエイト事業は、Swipe.Shopによりさらに大きな成長を遂げるだろうと付け加える。
しかしグループ・ナインは、出店するブランドの半数からは、アフィリエイトコミッションもスポンサー費も徴収しないという。その半数とは、小規模ブランドを指し、その内15%は米黒人経営の会社になると、プラックス氏は語る。それら小規模ブランドにはさらに、グループ・ナインが展開するSwipe.Shopのマーケティングにおける商品宣伝枠も無料で提供している。
ニューヨーク市の人々はいずれ、タイムズスクエアのビルボードやタクシーのルーフトップにSwipe.Shopの文字を目にすることになるだろうと、プラックス氏は語る。同社はさらにソーシャルメディアでもプロモーションを積極展開する予定で、各SNSフォロワーが連携して相乗的な拡大を狙っているという。現在のインスタグラムフォロワー数は、ザ・ドードーが970万人、ナウディスが270万人となっている。
なお、プラットフォーム上には、グループ・ナインが抱える各メディアの編集コンテンツは掲載されない。しかし、インスタグラムおよびFacebook上でのライブストリーミングを毎日実施し、各メディアブランドの編集部員が、それぞれ厳選した商品を紹介するQVC(米国の大手テレビショッピング企業)スタイルの動画を配信するという。
モバイルファーストなプラットフォーム
同社がモバイルに特化した仕様を選んだのは、グループ・ナインが抱えるメディアのトラフィックは、90%がモバイル経由だからだ。また、2020年6月のニールセン・デジタルコンテンツ視聴率によると、同社は米国随一のモバイル動画配信パブリッシャーでもある。しかし何よりも、コロナ禍中にオンラインショッピングが顕著な伸びを見せ、その大半がソーシャルメディアといったモバイルファーストなプラットフォームで行なわれた点が、大きかったのは間違いない。
なお、このプラットフォームのCMSは、グループ・ナインが自社開発したものであり、構想から完成までに約半年を要したという。
Swipe.Shopは何も、今期のホリデーシーズン限定のプラットフォームではない。バレンタインデーや母の日、父の日といった主な商戦シーズンに合わせてショップを入れ替えながら、年間を通して運営していくとプラックス氏は語っている。
また、ホリデーシーズン以外でも、今回のキャンペーンの成功が今年度末のKPI(重要業績評価指標)で証明できれば、来年度も高い確率で広告主を獲得できるだろうと、デュランド氏は強気な姿勢を崩さない。「あとは、価格が適正であれば、すべてうまく行くはずだ」。
[原文:Group Nine’s new marketplace Swipe.Shop takes aim at mobile shoppers’ holiday spending]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)