グループナイン(Group Nine)によるブランデッド・プロダクト・ボックスの取り組みは、導入から間もなく、同社の収益を牽引する存在となった。この通称「ボックスド(BOX’d)」プログラムには、さらなる成長が期待されており、2年目は8桁(数千万ドル:数十億円)の収益が見込まれるという。
デジタルメディア持株会社グループナイン(Group Nine)によるブランデッド・プロダクト・ボックスの取り組みは、導入から間もなく、同社の収益を牽引する存在となった。
これは、提携スポンサーの製品をグループナイン傘下のメディア編集部員とともにキュレートし、箱詰めにしたものを抽選で配送する、いわゆるD2C広告プロダクトであり、導入初年度で7桁(数百万ドル:数億円)の収益をもたらしたと、グループナインのチーフレベニューオフィサー、ジェフ・シラー氏は語る。同氏は具体的な数字こそ明かさなかったが、この通称「ボックスド(BOX’d)」プログラムには、さらなる成長が期待されており、2年目は8桁(数千万ドル:数十億円)の収益が見込まれると断言した。
「永続性のあるものに成長した」
同プログラムは、コロナ禍中の2020年11月、グループナインのパブリッシャー勢および広告主が消費者にリーチするための一手段として導入されたもので、これまでにエンターテインメントやCPG、アルコール業界のブランド勢――たとえばHulu、Netflix、CBS、ディスカヴァリープラス(Discovery+)、缶詰スープで知られるキャンベル(Campbell’s)、米コーヒーブランドのフォルジャーズ(Folgers)、メキシコ初のビールブランドのコロナ・エクストラ(Corona Extra)など――と提携し、19種類を作製してきた。同プログラムにはグループナイン傘下の全メディア企業――スリリスト(Thrillist)、ナウディス(NowThis)、ドードー(The Dodo)、シーカー(Seeker)、ポップシュガー(PopSugar)――が参加している。同社広報によれば、抽選参加者はのべ約25万人、ボックスの出荷数は6000個近くに上るという。
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このプログラムは「弊社のブランドパートナーおよびマーケターが、自宅から出られずにいる弊社オーディエンスとエンゲージするために、何か面白い方法はないかと考えて導入した。それが一気に飛躍し、コロナ禍が終息しても終わらない、永続性のあるものに成長した」とシラー氏は自負する。
かつての日常らしきものが戻りつつあるなか、同プログラムは今後、旅行や自動車など、さらに多くのカテゴリーに拡大していくことになると、シラー氏は期待を寄せている。「我々はすでに、通常の方程式から外れている多くのカテゴリーでかなりの成功を収めており、だからこそこのソリューションには大いに自信を持っている」。
どのように実施しているのか?
同プログラムの実施に至る典型的な過程は、eメールアドレスの獲得または商品を試用したい消費者の発見に効果的な手段を求めるブランドがグループナインに打診するところから始まると、シラー氏は語る。ボックスはまた、キャンペーン、TV番組、イベントのテーマ(主題)に絡めた形でも利用できる。
続いて、グループナインがそのブランドを傘下デジタルパブリッシャーの1社と組ませ、ブランドと編集者が厳選した約5品を詰めたボックスを作製するとともに、抽選を開催し、各当選者にボックスを送付する。通常はグループナインの大規模キャンペーンの一環として実施すると、シラー氏。また、消費者は抽選に応募するだけでなく、ブランドのバーチャルまたはライブイベントへの招待に返事をすることでも、ボックスに当選できる。抽選参加者のeメールアドレスをキャンペーンのスポンサーと共有するのか訊ねたところ、グループナインの広報は「ファーストパーティデータの取得はそもそも、同プログラムの構成要素となっている」と回答した。ただもちろん、ブランドがマーケティングメッセージを送るのは、オプトインした消費者に限られると、広報は言い添えた。
グループナインが提携スポンサーに請求するのは「最低個数作製する各ボックスに基づく」定額だと、シラー氏は語る。「また、抽選の応募人数やエンゲージメント率、そしてボックスに関する情報シェアのメディアインプレッション数も提供する」と、同氏は付け加えた。料金は各ボックスの中身や作製するボックスの個数によって「上下する」という。
「ボックスド」プログラムの内容
- 最初のボックスはドードーの「ベスト・ドッグ・デイ・エヴァー(Best Dog Day Ever)」イベントに絡めたもので、同イベントは2020年、カーペットクリーナーブランドのリゾルヴ(Resolve)と組み、バーチャルでは初めて開催した。1100人以上が抽選に応募し、350人の当選者にボックスが送付された。
- コロナ(Corona)と組んだボックスは「プロテクト・アワ・ビーチ(Protect Our Beaches)」キャンペーン用に作製した。再生可能な、プラスチックフリーのボックスを使い、リーフセーフの日焼け止めやトルコ綿製タオルといった、エコフレンドリーなアイテムを詰めた。2万件近い応募があり、250個のボックスが送付された。
- これまでで、もっとも反応が良かったのはPopSugarとV8が組んだ「キープ・イット・ローリング(Keep It Rolling)」ボックスだという。これはキャンベルと提携したもので、5万4000人以上の応募があり、225個のボックスが送付された。ボックスには、xV8プラスエナジー(キャンベル)ドリンクやバラ(Bala)のウェイトバングル、UVブライト(UVBrite)の浄水ボトルといった、ウェルネス関連のアイテムが収められた。
11月第2週には、ポップシュガーおよびシーカー、レゴ(LEGO)との提携による「ボックスド」キャンペーンを開始した。当選者には、子どもが親とともに手に取って遊べるアイテムを収めたボックスが送られる。20案件目となる次のボックスは、チーズブランドのヴェルヴィータ(Velveeta)と提携するもので、2021年度末前に登場する。
エンゲージメントの深さに期待
「ブランドからの贈り物として、これは非常に深い消費者エンゲージメントであり、書き言葉や動画を越えるつながりを実現する」とシラー氏。「ボックスド」キャンペーンはまた、ナイキ(Nike)やスキムズ(Skims)といったブランドがプロモーションの一環として新作シューズや衣類をソーシャルメディアインフルエンサーに送るマーケティング手法にも似ている。実際、この近似性は意図的なものだ。同キャンペーンの抽選の当選者は、いわゆるアンボクシング(箱を開けて中身を見せる)動画の流行に自分も乗っていると感じられると、シラー氏は語る。
経験的マーケティングエージェンシー、パブリック・レーベル(Public Label)のインテグレーテッドマーケティング&アナリティクス部門SVP、マシュー・レイダー氏も、これに同意する。「誰かが丁寧にキュレートし、受け手のことをよく考え、思いを込めて作る。これはつまり、真心のこもった贈り物だ」。郵便で届くそうしたボックスを受け取ることで、人々のなかにノスタルジックな感情(どこか懐かしい思い)が喚起され、それが「ブランドと消費者との間にエモーショナルな価値を創造する。これは替えがきかない(中略)。消費者はボックスとその中身へ直に触れ、感触を確かめ、文字どおりエンゲージできるわけであり、多くの人々が自宅にいて、さまざまな経験ができない現在、こうした交換は数多く流通している」と氏は指摘する。
また、「ボックスド」プログラムの構成要素である、消費者が抽選に応募して参加するという形態は「抽選という形を借りたオプト・イン・サンプリング」の機会をブランドに提供すると、レイダー氏は指摘する。ブランド側が期待するのは、ボックスを受け取った人々がいわば「伝道師」となり、試用した商品の素晴らしさを友人や家族に広めてくれることだと、氏は言い添える。
さらなるメリットも存在する
商品の試用はさらに「コンバージョンにつながるカスタマージャーニーのリスクを低減する」とレイダー氏は指摘する。氏は以前、とあるパーソナルグルーミングブランドでマーケティング戦略にサンプリングを利用していた。消費者がすでにその商品を試し、気に入っているなら、売場で見つけた際にそれを購入する可能性が高く、満足できない恐れのある新商品をあえて買うリスクは冒さないだろうと、氏は説明する。
レイダー氏はさらに、コスメおよびパーソナルグルーミング商品は、同プログラムにとりわけ合っているのではないか、と言い添える。
[原文:Group Nine’s branded product boxes brought in at least $1 million in revenue in the first year]
SARA GUAGLIONE(翻訳:SI Japan、編集:長田真)