パブリッシャーの記事や動画が話題になるかどうかは、アルゴリズムに左右される。グループナインメディア(Group Nine Media)はそうした状況を受け、動画がバイラルになることを狙うよりも、不発の割合を減らすことに注力している。
パブリッシャーの記事や動画が話題になるかどうかは、アルゴリズムに左右される。グループナインメディア(Group Nine Media)はそうした状況を受け、動画がバイラルになることを狙うよりも、不発の割合を減らすことに注力している。
グループナインが獲得する再生回数のうち、バイラル動画はかつて大きな割合を占めていた。チューブラー・ラボ(Tubular Labs)によると、2016年6月の時点では、グループナインによるソーシャル動画の総再生回数のうち、1000万再生以上の動画が37%を占めていたという。だが今年6月には、その割合は19%まで低下した。
バイラルヒットへの依存度を下げて以降、今年6月の動画再生回数は前年同月比で59%増加し、46億回に達した(チューブラー・ラボ調べ)。同じ期間の比較で、月間動画公開数は34%増加し、2670本となった。
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バイラルは操作できない
グループナインは、スリリスト(Thrillist)、NowThis、ドードー(The Dodo)、シーカー(Seeker)などのデジタルパブリッシャーの持ち株会社として、昨年10月に設立。だが、各ブランドはそれ以前から存続しているので、傘下の資産の扱いで統計データを比較している。
グループナインのソーシャル動画再生回数は急増した。現在グループナイン傘下にある資産の月間動画再生数は、2014年の時点で数百万回にすぎなかったと、同社でオーディエンス開発および分析を担当するシニアバイスプレジデントのアシーシュ・パテル氏は語る。同社は、バイラルに頼らない現在のアプローチのほうが持続可能だと考えているという。
「誰でも失敗を直視することは望まないものだ。見なかったことにして先に進みたいと思う」と、パテル氏は語る。「だが、バイラルヒットになるかどうかは、我々がコントロールできるものではない。それに比べ、パフォーマンスの低いコンテンツを減らすために実行できることは、より明確だ」。
どんな動画がウケるのか?
グループナインは、不人気だった動画の再生数を増やすため、同じ動画を複数バージョンで制作してテストを実施。その結果、ホストが語りかける動画は大量の字幕でユーザーの興味を引く必要がある一方、視覚的に興味をひく動画は字幕をつけるとかえって反応が悪くなることがわかった。
また、人物がカメラに向かって話す動画では、冒頭でカメラアングルの切替を入れないかぎり、モバイルユーザーはすぐに再生を中止することもわかったと、パテル氏は明かす。アル・ゴア元副大統領が出演する以下の動画のように、カメラアングルが何度も切り替わるのは、ユーザーを退屈させないためなのだ。
語りの動画の再生をユーザーに中止させないための別の戦術は、画面を2分割して別の画像を表示することだ。以下の2本の動画は、内容は同じだが、1本目の冒頭は画面の左側が別の画像で、2本目の冒頭は全面がトランプ大統領の映像になっている。動画の冒頭のわずか数秒間、画面を2分割して表示するだけで、再生数は36%も増加した。
(差別への抗議として国歌斉唱時に起立しなかった)NFLのコリン・キャパニック選手についての、トランプ氏とオバマ氏のコメントを比較。実に多くを語っている。
メディアのバイラル離れ
グループナインがバイラル動画偏重を改めるのは、バイラルになること自体の魅力が薄れている現状の表れだ。アップワージー(Upworthy)やディストラクティファイ(Distractify)など、SNSに大きく依存するバイラルパブリッシャーは、アルゴリズムの変更によるトラフィック不安定化の影響をもろに受けた。エリートデイリー(Elite Daily)の親会社は、このミレニアル世代向けパブリッシャーに対する投資の全体で損失を計上し、バッスル(Bustle)に売却した。また、バイラルスレッド(Viral Thread)はブランド名から「バイラル」を消し、「VT」として生まれ変わろうとしている。
Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)
Photo via Group Nine