「ネット時代における『GQ』は、万人向けではない」:GQ編集長 ウィル・ウェルチ氏

ウィル・ウェルチ氏は2019年1月、メンズファッション&ライフスタイルマガジンGQの編集長に就いた際、GQの新時代がいま、正式に幕を開けたと宣言した。そして、その新GQは万人向けではない。

「インターネットが支配する時代において、このカルチャーの発展にニッチ化は欠かせない」とウェルチ氏。「自分はどんな人物で、どこに向かっているのか、明確に宣言する必要があるし、そこにこだわるほど、大きく成長できる。だから、私は最初に伝えたんだ。我々は今後、自分たちが誰であり、誰ではないのかを超が付くほどはっきりさせていく。そして、GQは万人向けではない、と。私が編集長になってから作ってきたGQとGQスタイル(Style)は、万人に向けたものじゃない。面白いと思わない人も出てくると思う。2019年のいま、アメリカ人男性全員に思いをしっかりと届けることはできない。その視点は単純にもう古いんだ」。

ウェルチ氏は現在、的を絞り込んだコンテンツと、進化を続けるソーシャルメディア戦略を通じて、GQブランドの強みをなおいっそう押し出した誌面作りを目指している。

7月第2週に米DIGIDAYで公開されたポッドキャストでは、米DIGIDAY編集長のブライアン・モリッシーとウェルチ氏が膝を突き合わせ、新たなGQ像、進化を続ける雑誌編集長の役割、メンズファッションカルチャーで起きている変化について語り合った。以下がその概要だ。

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GQはなぜ変化しようとしたか

「私が編集長になるという発表がなされた際、『うわっ、そいつは大変だな。もしも**年前にこの話が来ていたら、あれもこれもできて良かったのに、とは思わないか?』なんて言ってくる人も、たしかにいた。でも**年前だったら、そもそもこの仕事は受けていない。いまの状況は、私にぴったりだ。私は変化を積極的に受け入れる。リスクは大好きだし、率直に言って、いまは創造性を発揮するための自由に溢れていると思う。メディア業界は――コンデナストだけでも、雑誌だけでもなく――全体として、いわばひっくり返された。物事が猛烈なスピードで変わっているし、何が起きているのか、正確には誰にもわからない。だからこそ、私はそこに向かっていきたいし、実験がしたくてたまらない。で、実験の大半はいまのところうまくいっている。お金がそれこそ、勘定が追いつかないほどばんばん入ってきているのであれば、こんな向こう見ずな人間をこの席に座らせとは、誰も思わない、そうだろ? 普通は、定石にしがみついていたい、王道から外れたくない、と思う人を求める。で、それは私という人間向きじゃない」。

新時代に即した雑誌編集者とは

「自分のことは、いまも雑誌編集者だと思っているし、それが何よりもはっきりと私の姿勢を示している。ただし、日々の業務はたんに印刷版の雑誌を編集するだけじゃない、はるかに多岐にわたっている。動画やソーシャルメディア、GQ.comやGQのソーシャルプラットフォームに、日々長い時間を費やしている。いま、ソーシャルと2回言ったけれど、まさにそのとおりでね、ソーシャルのことはいつでも考えているし、個人的には、今年はとくにインスタグラムを重視している。セレブを絡めたり、ファッション写真を載せたりといった活動が主で、効果を上げていることはすべて、印刷版の雑誌が原点になっている。ただ、いちばん面白いのは、どうやったらそれらをシンクロさせられるか、アイデアを練ることだ。いかにも大手雑誌らしい展開を考えているわけじゃない。どうやったら誌面をGQ.comに着地させられるか、どんな動画ができるのか、つねに思いを巡らせている。言ってみれば、時代と逆行する形で、印刷版のコンテンツを第一に考えてはいるけれど、決断を下す際には、いかにしたらそれをデジタルに着地させられるのかも念頭に置いている」。

大きく進化したメンズファッション界

「少年たち、たとえば10~15才の男の子たちと話してみれば、すぐにわかる。彼らの話題はイージー(Yeezy)や、レアもののシュプリーム(Supreme)×ナイキ(Nike)一色だし、それは本当にすごいことだと思う。私が入社した2007年当時、GQがしていたことといえば、男性読者にベーシックなスタイルとは何かを説明して、着こなしのルールを教えて、という程度だった――サイズの合ったスーツの選び方、どのネクタイとどのシャツが合うのか、イタリアの伝統的スタイルはこういうもので、対するイギリスとアメリカの伝統的スタイルはこういうもので、とか。入社当初、私はスタイリング担当の共同編集者だったから、毎日、そんなことばかりしていた。本当に、そういう記事を毎号載せていたんだ。でもいまは、多くの男性が着こなしのコツを心得ているし、みんなセンスが格段に良くなった。メンズファッションは全体として、びっくりするくらいダイナミックで、表情豊かなものになった。昔は、おしゃれにこだわるごく少数のサブカルチャー派か、オフィスで浮かないための無難な服をGQに教えてもらう多数派かの、どちらかだった。でもいまや、おしゃれはポップカルチャーの生地[の一部]という地点にまで来たんだ」。

Gianna Capadona(原文 / 訳:SI Japan)