Googleが「ヘッダー入札を終わらせる」という報道が相次いだのは、2016年4月のことだ。だがそれ以来、サーバーサイド製品市場では競争が激化し、ヘッダー入札を導入するパブリッシャーが増えた。情報筋によると、そんな企業は、Googleの動きを注視しながらも、次期製品でヘッダー入札を終わらせないと見ているという。
プログラマティックの統合が急速に後退する状況は起こりそうにない。
Googleが「ヘッダー入札を終わらせる」という報道が相次いだのは、2016年4月のこと。きっかけは、同社がサーバーサイドの製品を開発しているというAdExchangerの記事だ。しかしそれ以来、サーバーサイド製品の市場では競争が激しくなり、ヘッダー入札を導入するパブリッシャーが増え続けている。情報筋によると、そうしたパブリッシャーはGoogleの次の動きを注視しながらも、同社の次期製品がヘッダー入札を終わらせるという説には懐疑的だという。
「私の予想では、(Googleがエクスチェンジ入札で)ヘッダー入札を即死させたりはしないだろう。とりわけ、パートナーの大半がサーバー・トゥ・サーバー・ソリューションに取り組んでいる現状では」と、IBTメディア(IBT Media)のマーコ・サミュエル氏は語る。
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注目すべき先陣争い
Googleのサーバーサイド製品であるエクスチェンジ入札は、いまも試験段階にある。同社は、この製品を市場投入する時期を発表しておらず、具体的な統計データやテスト結果も明かしていない。ただし、Googleの広報担当者によると、2016年4月以降、パブリッシャーのパートナーの数を4倍に増やし、パイロットプログラムにおけるエクスチェンジパートナーの数も倍増させたという。さらに2016年11月にスマアト(Smaato)と提携して以来、ふたつのモバイルアドエクスチェンジをプログラムに加えている。イールドモ(Yieldmo)とモブフォックス(MobFox)だ。
情報筋は、Googleのエクスチェンジ入札がパブリッシャーに大きな衝撃を与える可能性を認めながらも、同社の市場支配力が4月の時点より弱まっていることを強調した。4月以降、市場の競争は激しさを増し、Amazon、アップネクサス(AppNexus)、bリアルタイム(bRealTime)、イールドボット(Yieldbot)、インデックスエクスチェンジ(Index Exchange)といった企業がこぞって、独自のサーバーサイドインテグレーションに取り組んでいる。競争の激しい市場で、どのソリューションが大勢から採用されるのかはわからない。
「注目すべき先陣争いがある。パブリッシャーを支援するスケーラブルなサーバー接続とサプライサイドプラットフォーム(SSP)風のツールを、どこが最初に開発するかという競争だ」と、あるパブリッシャーの幹部(匿名希望)は語る。「GoogleとAmazonはサーバー接続を提供しているが、ツールはない。ベンダーはツールを提供しているが、サーバー接続はない。そこで問題になるのは、ベンダーがサーバー接続を提供する前に、GoogleやAmazonが優れたパブリッシャー向け製品を開発できるかどうかだ」。
Googleがより優位?
別のパブリッシャー幹部は、Googleがほかのプロバイダーより優位に立つと予測している。同社傘下のダブルクリック(DoubleClick)のエクスチェンジが広く普及しているからだ。従ってパブリッシャーは、新しいベンダーと統合するよりGoogle製品と統合するほうがスムーズだと考えるかもしれない。ただし、この幹部も、Googleがサーバー製品を導入するという話には懐疑的だ。「Googleが何かを作るのは、いつも自分たちのためであり、クライアントのためではない」からだと、この幹部は指摘する。
記者がプラットフォームについて書くときに陥りがちな、勝者がすべてを手にするという言説には反するが、仮にブラウザベースのヘッダー入札が絶滅するとしても、独占状態や寡占状態が原因ではなく、何らかの提携がきっかけとなる可能性がある。
「(Googleのエクスチェンジ入札が)大手ヘッダーパートナーどうしの統合を進める可能性はあるが、それがヘッダー入札の終わりをもたらすとは思えない」と、サミュエル氏は語る。
ベンダーもパートナー
アップネクサスのサーバーベースの製品は、Amazon、パブマティック、インデックスエクスチェンジと統合されている。Googleもまた、他社製品との連携に取り組んできた。
「Googleのチームが透明性を高めたおかげで、我々は(Googleのエクスチェンジ入札との)連携に対応し、パブリッシャーへの利益を拡大できるようになった」と、インデックスエクスチェンジの製品担当シニアバイスプレジデント、ドリュー・ブラッドストック氏は語る。
Googleの製品管理担当ディレクター、ジョナサン・ベラック氏によると、サーバーサイド製品はGoogleに新たな原動力をもたらし、パブリッシャーだけでなくエクスチェンジ企業もパートナーになるという。12月には5社ほどのエクスチェンジ企業と諮問委員会を開き、サーバーサイドへの移行に関する意見や懸念をヒアリングした。
「我々は、エクスチェンジ入札が策略などではないことを納得してもえるよう尽力している」と、ベラック氏は語る。
1社独占にしてはならない
ヘッダー入札の終わりに関して、誰がとどめを刺すのかを予想することも刺激的ではあるが、そもそも実際に終わりが来るかどうかもはっきりしない。技術力のあるパブリッシャーはサーバー・トゥ・サーバーへの移行を進めているが、ほかの多くのパブリッシャーはようやくヘッダー入札のことを知ったばかりだ。
コムスコア(comScore)のトップパブリッシャー200社のうち、ヘッダー入札を利用している企業は40%以上に上る。また、アップネクサスの広報担当者によると、同社のヘッダー入札を利用しているパブリッシャーの数は増え続けているという。
ヘッダー入札が登場する前、ダブルクリックはGoogleにのみすべてのインプレッションの確認と入札を許可し、ほかのすべてのエクスチェンジを排除した。イールドボットのCEOを務めるジョナサン・メンデス氏によると、パブリッシャーにとって最大の関心事は、1社の企業が市場を支配する事態を防ぐことだという。
「パブリッシャーは、できるだけ多くの入札者と独自のつながりや関係を維持することにより、Googleに対する入札のプレッシャーを強めたいと考えるだろう」と、メンデス氏は予想する。同氏のイールドボットも、サーバーサイド市場でGoogleと競合することになる。「そうした連携で、Googleだけが落札する状況に戻らないようにしたいはずだ」。
Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)