Googleはパブリッシャーにとって、長らく恐れられる存在だった。だが、昨今は友好的な姿勢をアピールしている。少なくとも、Facebookとの比較においては、そう言えるだろう。とはいえ、Googleの支援には限界がある。パブリッシャーはAMPを理解して、自ら収益化の努力をしなくてはいけない部分もあるのだ。
Googleはパブリッシャーにとって、長らく恐れられる存在だった。だが、昨今は友好的な姿勢をアピールしている。少なくとも、Facebookとの比較においては、そう言えるだろう。
パブリッシャーは、Googleがオープンソースで進めるモバイルウェブ高速化プロジェクトAMP(アンプ:Accelerated Mobile Page)を歓迎しているが、AMPの収益力については満足していない。それに対するGoogleの回答が、AMPをネイティブアドと動画広告に拡張し、モバイル広告の表示を高速化する「AMP for Ads」(A4A)だ。
Googleが認識しているのは、パブリッシャーにとって現在が難しい時代であり、将来の財務面の安定化を支援する取り組みがさらに必要だということだ。この点については、強い態度を打ち出している。Googleは11月14日、ブログ投稿において、オープンなウェブの価値に対する信頼を明言し、そうした環境では「パブリッシャーが自らのコンテンツから売上と収益を出せる」と記した。
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AMPの新データが示すもの
AMPの価値を裏付けるため、Googleは新たなデータを紹介。AMPを導入したパブリッシャー400社を調査したところ、その大半で非AMPのモバイルページよりも広告料金が上がったという。また、80%以上でビューアビリティ率が向上し、85%で広告のCTRが上がり、過半数でインプレッション単価が上がった。それでもやはりGoogleは、パブリッシャーがAMPのマネタイズについて多くの疑問を抱いてきたことを認識している。
「我々には、(パブリッシャーに)収益をもたらすという財務的なプレッシャーがある」と、Googleでグローバルパートナーシップ、ニュース、パブリッシングの各部門を統括するマネージングディレクターのローラン・コルディエ氏は述べた。AMPやほかの新たな広告製品について説明する報道機関向けイベントでの発言だ。
そのなかでGoogleは、最大のライバルであるFacebookには言及しなかった。Facebookも、同プラットフォーム上でパブリッシャーがコンテンツをマネタイズできるよう、支援策を進めてきた。しかし、GoogleのAMPはパブリッシャーがページの見た目と使い勝手をより自由にコントロールできるようにしている。
一方、Facebookで読み込みが高速化する「インスタント記事(Instant Articles)」は、Facebookの閉じたエコシステムにしか存在できない。一部のパブリッシャーはインスタント記事に対して冷ややかで、Facebookの閉じた環境よりも、自社サイトのほうが記事ページをより効果的に収益化できると考えている。
パブリッシャーの努力も必要
Googleのコルディエ氏は、パブリッシャーがAMPページで非AMPページと同程度のインプレッション単価を得られない理由は理論上ないと説明する。ただし、多くのパブリッシャーがまだAMPページの広告を直接販売していないため、得られる単価も限られている。
その主な原因は、AMPの新しさだ。つまり、まだAMPページが少なく、すべての種類の広告に対応しているわけではない状況で、パブリッシャーがAMPページを広告主にとって魅力的なものにするのは難しい。「現在は、プログラマティックのほうがよりチャンスがある」と、「USAトゥデイネットワーク(USA Today Network)」のデジタル担当SVP、マイケル・カンツ氏は語る。
とはいえ、Googleの支援には限界がある。AMPがウェブから無駄な要素をはぎ取ることで読み込みの高速化を実現するのに対し、動画広告はもともと重い。しかし、重い広告を配信するのが普通になっているエージェンシーを押し返さなければならないのは、パブリッシャーであって、Googleではない。
「パブリッシャーは受け入れる広告について、より厳格になっていく可能性がある」と、コルディエ氏は予想する。
サブスクリプションには不向き
パブリッシャーはまた、AMPを導入して成果をあげることも、自らの役割として求められる。ページの読み込み時間を短縮して読者のページ滞在時間を延ばすAMPのやり方に好意的だが、一部には、AMPページだと通常のモバイルページより訪問1回あたりのページビューが少なくなることへの不満もある。
コルディエ氏はこれについて、AMPのさまざまな機能(ほかの記事のおすすめや、ナビゲーションメニューなど)を十分に活用できていないパブリッシャーもいるからではないか、と推測する。「一定水準の最適化が必要だが、全体にはまだ行き渡っていない」と、同氏は語る。
サブスクリプションを販売するパブリッシャーにとって、AMPページにサブスクリプションを適用する仕組みがないことも弱点だが、今回もこの件に関する発表はなかった。Googleの幹部らは、サブスクリプションに読者を誘導するニーズがパブリッシャーにあることを理解しているものの、それを支援する具体的な計画はないと述べる。
さらにパブリッシャーを支援
Googleは今回、ほかにもパブリッシャーのマネタイズに役立つ新ツールを発表した。広告主による動画広告の需要が大きくなっているとの認識から、傘下のダブルクリック(DoubleClick)のプラットフォームで広告主がネイティブ動画広告を出稿できるようにするという。ダブルクリックは、アドレサブル広告(効果を追跡可能な広告)をテレビに配信する方法として使われている「ダイナミック広告挿入」を、ビデオオンデマンドに拡大していく。
Googleはさらに、パブリッシャーが広告表示の需要を最大化できるよう支援する「エクスチェンジ入札(Exchange bidding)」を、パブリッシャーのモバイルアプリに拡大していく。
Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Thinkstock / Getty Images