AMP対応をやめたいという声が一部にある一方で、大半のパブリッシャーは容易にやめられないのが現状だ。多くのパブリッシャーがデスクトップファーストからモバイルファーストに移行するなか、先月、Google検索(Google Search)は、この動きに重要な区切りをもたらすある日程を発表した。
AMP対応をやめたいという声が一部にある一方で、大半のパブリッシャーは容易にやめられないのが現状だ。
多くのパブリッシャーがデスクトップファーストからモバイルファーストに移行するなか、先月、Google検索(Google Search)は、この動きに重要な区切りをもたらすある日程を発表した。2021年5月から、Googleのページエクスペリエンスに関する新基準とGoogleニュースのコンテンツポリシーを満たすかぎり、どのようなページも、モバイル版Googleで表示される「トップストーリー」セクションへの掲載対象となる。このセクションは、長年、多くのパブリッシャーにとって、追加的な参照トラフィックの重要な供給源となってきた。
AMP(モバイルページの表示を高速化するための仕様)に準拠するページは、Googleのモバイル検索において間接的に優遇されてきたが、この参照トラフィックへのアクセスも、AMPを活用する主要なメリットと見なされてきた。他方、AMP仕様を渋々ながら採用し、(一部は広告主側の不備によるものではあるが)収益化の点で問題があると不平を言いつづけるパブリッシャーは少なくない。
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「AMPの穴を埋めるのは容易でない」
だが、パブリッシャー4社の情報筋が米DIGIDAYに語ったところによると、たとえこのメリットがなくなったとしても、AMPに投資してきたパブリッシャーたちがこれから手を引く可能性は低いという。理由のひとつとして、今日、大量のコンテンツが消費されるモバイル環境で、AMPが優良なユーザーエクスペリエンスを提供する枠組みであることに変わりはない。さらに、AMPストーリーズ(AMP Stories)やGoogleディスカバー(Google Discover)など、AMPに有利な機能も、トラフィックの増加に貢献する可能性がある。そしてGoogleはAMPの一部をパブリッシャーのページ内で機能させることを計画しており、これもパブリッシャーがAMPから撤退するのを躊躇させる要因となるだろう。
ある大手パブリッシャーのSEO責任者は、「AMPのサポートをやめると言えば、我々のプロダクトチームはおおいに歓迎するだろう」としながらも、「AMPの穴を埋めるのは容易でない」とも述べている。
「AMP非対応のページに、AMP対応のページと同程度のパフォーマンスを要求するなら、そのための作業は簡単にはすまない」と、このSEO責任者は語る。「論点となるのはリソースの問題ではなく、メリットとデメリットのトレードオフだ」。
2016年の春にAMPが公開された当初、その前年に「インスタント記事(Instant Articles)」を始めたFacebookに追いつくための施策と見る向きもあった。実のところ、Googleは、いくつかのメディアプラットフォームにAMPのリーチを広げ、オープンソースという性質を活かしてより多くのサポートを獲得するなど、追いつく以上の成果を上げた。
一方、AMPの収益化に不満の声も
アドネットワークやベンダー各社の独自フォーマットに開発の基礎を与えるという点において、大きな進歩を遂げてきたGoogleだが、AMPの収益化に関しては、多くのパブリッシャーが、自分たちのモバイルサイトの実力に値する成果を上げていないと感じている。
「そのギャップはいまだ解消されていない」と、ある大手パブリッシャーの幹部は話す。この人物は重要なパートナーと交渉中のため、匿名で取材に応じるとした。
この幹部は、これらの問題は広告の読み込み速度の問題にとどまらないと指摘する。「[AMPによって]セッションの深さが制限される。それはパブリッシャーにとって命取りだ。セッション当たりのページ数が1.8から1.3に減るなら、間違いなく大事だ」。
だが、パブリッシャーたちは何年も前からこれらの問題を承知したうえで、AMPを使いつづけてきた。理由は単純だ。高速でパフォーマンスの高いモバイルページを作成するのは容易ではない。そしてGoogleがパフォーマンスの高いモバイルページを今後も優遇しつづけるなら、実績のあるフォーマットを使いつづけることは理に適う。「AMP非対応のページが、AMP対応ページのパフォーマンスを上回ることはないだろう」と、別の幹部も言っている。
AMPを注視しつづけるふたつの理由
このようなジレンマに加え、パブリッシャーたちにはAMPを注視しつづける理由がふたつある。GoogleディスカバーとAMPストーリーズだ。
2018年の公開以来、ディスカバーは予測不能ではあるが有望なトラフィックの流入元となってきた。パブリッシャー3社の関係者によると、Googleがもたらす参照トラフィックのうち、多いときで最大25%がGoogleディスカバー由来だという。
「Googleは[ディスカバーを通じて]無償で参照トラフィックを提供しようとしている」と、最初の幹部は言う。「それを頼りに事業を確立しようとは思わないが、興味深くはある」。
また、無償の参照トラフィックが流入しはじめると、AMPストーリーズへの関心も高くなる。2018年に緩やかなスタートを切ったAMPストーリーズは、ディスカバーへの組み込みを契機として、成長に弾みがついた。これらふたつのフォーマットでプログラマティック広告による収益化が可能になるという先月の発表に、一部のパブリッシャーは大きく沸いた。
今後の展開における重要なポイント
今後、パブリッシャーは、AMPの特定の部分を選んで、自分たちのモバイルプランに統合することを望むかもしれない。GoogleでAMPのプロダクトマネジャーを務めるルディ・ガルフィ氏も、「この点はAMPの今後の展開で重要なポイントになるだろう」と述べている。
「収益化をめぐる柔軟性がネックとなって、AMP非対応を選ぶ人々がいる」と、ガルフィ氏は指摘する。「重要なのは、さまざまなエクスペリエンスをパーツとして組み込み、同化させる能力だ」。
「今後はその実現に注力したい」。
[原文:Even with a key advantage removed, Google’s AMP likely to stay in publishers’ mobile product plans]
MAX WILLENS(翻訳:英じゅんこ、編集:長田真)