「Go90」とともに破綻:ベライゾンに運命を左右されたオウサムネスTV

2015年秋は、オウサムネスTV(AwesomenessTV)にとって、よい時期だった。

それは、ちょうど米国の無線通信大手ベライゾン(Verizon)が、モバイル動画向けストリーミングプラットフォームのGo90(ゴーナインティ)を立ち上げようとしていたころ。デジタルコンテンツベンチャーであるオウサムネスTVは、大きな話題になったGo90を対象にテレビ品質の番組を制作するための非常に魅力的な契約を結んだところだった。

ベライゾンは明らかに、映画プロデューサーのジェフリー・カッツェンバーグ氏と彼の映画スタジオ、ドリームワークス・アニメーション(DreamWorks Animation)が株式の半数以上を所有しているオウサムネスTVにぞっこんだった。1年後、ベライゾンは1億5900万ドル(約177億円)を支払ってオウサムネスTVの株の24.5%を獲得し、6億5000万ドル(約723億円)の内在価値を生み出した。

それから2年後、ベライゾンはメディアビジネスからの撤退を決め、バラエティー(Variety)の記事やその他の情報筋によると、オウサムネスTVはたった5000万ドル(約55億円)程度でバイアコムに売却された。この件に詳しい3つの情報筋によると、これは、2018年にまだ1億ドル(約111億円)の売上を出せる力のある企業の価値を劇的に下げる行為だという。

これの何が問題なのか? オウサムネスTVの売上の33~40%はGo90から来ており、Go90は数年間で最高1億8000万ドル(約200億円)をオウサムネスTVに支払ってきたと情報筋はいう。ベライゾンがGo90の提供を止め、メディアビジネスから完全に手を引くと、オウサムネスTVが持つ財布には簡単にはふさぐことができない穴があいてしまう。Go90のサービス停止は、コムキャスト(Comcast)/NBCユニバーサル(NBCUniversal、NBCU)、ベライゾン、ハースト(Hearst)が絡むオウサムネスTVの複雑な所有構造と相まって、オウサムネスTVは、かつて想定されていた価値を大きく下回って売却されるという結果を招いた。

この説明は、オウサムネスTVの元および現在の従業員6人とかつてのオーナーたち(全員が匿名希望)の会話に基づいている。バイアコムとの契約を取り仕切ったコムキャストとNBCユニバーサルの代表にコメントを求めたが回答は得られなかった。ベライゾン、バイアコム、オウサムネスTVの代表はコメントを拒否した。

ティーンのためのデジタルエンターテインメントネットワーク

表面上、オウサムネスTVは正しいことをやっていたように見える。十代の若者をターゲットに消費者ブランドを確立していた。オウサムネスTVはかつてYouTube上で、ピーク時には10番組を自主制作し、そのメインチャンネルには650万人近い購読者がいる。

オウサムネスTVはさらに、Hulu(フールー)に2つ、YouTubeプレミアム(YouTube Premium)に2つなど、ストリーミングプラットフォームに番組を販売してもいる。過去にはNetflix(ネットフリックス)やニコロデオン(Nickelodeon)に番組を販売・ライセンス提供したこともあり、3本の特集フィルムの制作が進行中だ。

全体として、オウサムネスTVの売上の約3分の2は番組制作とライセンスビジネスからのもので、残りはほとんどが広告によると、情報筋はいう。

「ビジネスは、すべての分野で一貫して成長し続けているが、Go90からの売上を失うことをどう調整していくのか?」と、情報筋は話す。「Go90の未来については不確実性があると知っていたが、ベライゾンのリーダーシップの変更の規模と範囲や、5G時代へ向けてワイヤレスビジネスに戻ろうとするブランド戦略のシフトは、予想された以上に大きな影響を及ぼした」。

ベライゾンの金で生き、ベライゾンの金で死ぬ

オウサムネスTVのビジネスは、ベライゾンに密接に依存してきた。複数の情報筋によると、オウサムネスTVはGo90との契約では、複数年で1億5000万~1億8000万ドル(約167億〜200億円)が支払われた。

この契約は、オウサムネスTVとベライゾンが2016年に発表したサブスクリプション制の動画ジョイントベンチャー「メイド・フォー・モバイル(Made for Mobile)」にもさらなる影響を受けていた。オウサムネスTVの株式の半数以上を所有するドリームワークス・アニメーションをコムキャストが買収すると、このジョイントベンチャー計画は断念された。ベライゾンがメイド・フォー・モバイルにつぎ込む予定だった資金の一部は、改訂されたGo90との契約を通じてオウサムネスTVに入ることになり、オウサムネスTVはベライゾンから最高3000万ドル(約33億円)の支払いを追加で受けた。

だが、メイド・フォー・モバイルが中止されてからも、オウサムネスTVは人員の他に、ロサンゼルスにある高価なオフィススペースも含めたインフラストラクチャーを維持し続けた。もっと最近では、(バイアコムによる買収後にオウサムネスTVを去ることになる)CEOのジョーダン・レビン氏を含む新しい経営チームを迎えて、フリーランサーを抜きにして200人以上の従業員を抱えるまでに成長したオウサムネスTVを縮小する計画もあった。

「他の企業が調整している部分を、この会社はまったく調整しなかった」と、情報筋はいう。

複雑な所有構造

オウサムネスTVが経験したより最近のトラブルのいくつかは、ここに3社の異なるオーナーがいて、そのうちの2社、コムキャストとベライゾンは、コンテンツを中心としたジョイントベンチャーに関わりたがらなかったという事実に起因するだろうと、情報筋は説明する。

一方、オウサムネスTVの内在価値は、ベライゾンが投じた資金をベースに6億5000万ドル(約723億円)に達したが、そのお金は会社の経営ではなく投資家の方に行ったと情報筋は話す。これはつまり、オウサムネスTVが内在価値が示すところより低いレベルで運営されていて、収益性のラインも頻繁に急変したことを意味した。

オウサムネスTVは、ブロードバンドとメディアの巨人であるコムキャストが2016年にドリームワークス・アニメーションを38億ドル(約4226億円)で買収したときについてきたおまけだったと、情報筋はいう。コムキャストへの売却の条件のひとつとして、ドリームワークス・アニメーションのCEO、カッツェンバーグ氏はこの映画およびTV番組の制作スタジオを離れることになっていた。コムキャストとドリームワークスの間で契約が成立した数カ月後、オウサムネスTVの創設者でCEOを務めていたブライアン・ロビンズ氏がオウサムネスTVを去った。この動きはベライゾンの幹部たちに不意打ちを食らわせた。彼らは、ハリウッドの大御所(カッツェンバーグ氏)や伝説のプロデューサー(ロビンズ氏)とともにビジネスをするという発想のもとにオウサムネスTVに投資をしていたからだと、情報筋はいう。

コムキャストとNBCユニバーサルがオウサムネスTVの株式の半数以上を保有することになった直後に、オウサムネスTVの未来――追加投資を受けるのか、売却されるのか、その他の道を行くのか――を決めるために、ジョーダン・レビン氏がCEOとして雇われたと情報筋は話す。

情報筋は、ブロードバンドやTVプロバイダーのライバル同士として、コムキャストとベライゾンはともに手を携えてオウサムネスTVのようなデジタルコンテンツベンチャーに取り組むことに関心を寄せてはいなかったという。3社目のオーナーであるハーストは、オウサムネスTVの株式を保有する静かな投資家で、戦略には積極的に関与しなかったそうだ。

ある情報筋はこう語る。「ジョイントベンチャーの複雑さのせいで独断的な意思決定が困難になった。すべてのパートナーが横一線に並ぶ必要があるが、誰一人並ぼうとしなかった」。

ベライゾンは徐々に、Go90やストリーミング動画への投資に不満を感じるようになり、モバイル動画ビジネスからの撤退を検討しはじめた。コムキャストは、BuzzFeedやVox Media、Snapchat(スナップチャット)を含むデジタルメディア投資のポートフォリオのなかに、オウサムネスTVがフィットするとは思っていなかった(バイアコムとの契約の一部として、コムキャストは、オウサムネスTVが見過ごしてきたドリームワークスTVと関連資産を保持することになる)。

ある情報筋は、「(コムキャストとNBCUは)デジタルメディアのテーブルにつくために多彩な分野で宣伝や投資をたくさん行っている。コムキャストは、ドリームワークスのためにドリームワークス(・アニメーション)を買収したわけだが、同時にオウサムネスTVも買ってしまったことに後から気づいた。だからオウサムネスTVを所有することに、感情的にも知的財産的にも何もなかった」と述べる。

別の情報筋はこういう。「誰もそれを欲しがっていなかった」。

勝利を邪魔されることも

バイアコムはオウサムネスTVのオーナーになったが、オウサムネスTVはバイアコムのニコロデオンやMTVのようなネットワークと競合するために作られたものだった。だが、バイアコムによる買収は、オウサムネスTVにとってはある種の原点回帰でもある。創設者のブライアン・ロビンズ氏が現在、バイアコムの映画スタジオであるパラマウントで働いていて、オウサムネスTVのオフィスで社内向けに契約が発表された時もその場にいた。

一方、オウサムネスTVの最高ビジネス責任者だったケリー・デイ氏が、現在はバイアコム・デジタル・スタジオ(Viacom Digital Studios)のプレジデントを務めている。バイアコム・デジタル・スタジオは、デジタルプラットフォーム向けの動画番組の制作に焦点を絞ったバイアコムの新ユニットだ。オウサムネスTVは、買収にともなって、バイアコム・デジタル・スタジオに統合されるだろう。その過程で人員整理も行われるだろう、と情報筋はいう。

それでも、特にバイアコムがかつての支持層だったティーンエイジャーやヤングアダルトとのつながりを取り戻そうとしているなかで、業界内部の人間の目には、この動きは賢明なものと映っている。バイアコムは他にも、ビドコン(VidCon)やインフルエンサーマーケティングプラットフォームのフーセイ(Whosay)を最近買収している。

エージェンシーのエピック・シグナル(Epic Signal)の創設者であるブレンダン・ガハム氏はこう語る。「TV視聴率の低下にともない、バイアコムのティーンに対する影響力やリーチする能力は、近年劇的に弱まってきている。MTVはかつて、ティーンにつながるルートだったが、YouTubeやインスタグラム(Instagram)、Snapchatがティーンの注目を集めるようになり、そことのつながりが薄れているのは間違いない。計算されたこうした動きは、バイアコムがメディア企業として若者に話しかけ、若者文化を牽引する立場を再び主張するのに役立つだろう」。

この動きはまた、オウサムネスTVがライセンスビジネスや広告ビジネスを成長させるのにも役立つだろう。広告ビジネスは主に、ホリスター(Hollister)やゼフォラ(Zephora)のようなクライアントとのブランデッドコンテンツパートナーシップの成長によって牽引されていて、前年比53.5%の伸びを示している。オウサムネスTVはさらに、3人のオーナーの下で準独立企業としてビジネスをしていたときに必要だったほどのペースで新しい売上の流れを作り出さなくてもよくなるだろう。

ある情報筋はいう。「主流派メディアに見捨てられたと感じている若者層のあいだには特に、高額なTVとYouTubeにあるような安価なクズ番組の間にはまる何かへの需要があると、私は確信している。ただ、そうしたビジネスを採算の取れるものにする方法が、私にはまだわからない」。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)