ワシントン・ポスト(The Washington Post)の自社パブリッシングプラットフォームであるアーク(Arc)は、クライアントに多くの自社開発の機能を提供することで、早い段階からビジネスを勝ち取った。最近では迅速なペイウォールの立ち上げと運営を約束し、事業を拡大している。
ワシントン・ポスト(The Washington Post)の自社パブリッシングプラットフォームであるアーク(Arc)は、クライアントに多くの自社開発の機能を提供することで、早い段階からビジネスを勝ち取った。最近では迅速なペイウォールの立ち上げと運営を約束し、事業を拡大している。
昨今、インターネット全体において、自社のユーザーデータやサブスクリプションの重要性が増しているとともに、より多様なクライアントを求める同社は、他社ベンダーとの提携や機能統合にも力を入れている。
外部テクノロジーとの提携を発表
11月23日には、すでにハースト(Hearst)やボストン・グローブ(Boston Globe)などのパブリッシャーと提携している顧客データプラットフォーム(CDP)のブルーコニック(BlueConic)や、支払い管理プラットフォームのスプリードリー(Spreedly)との機能統合を含む、いくつかのアップデートをワシントン・ポストは発表した。
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これらに加えて、アークはページ構築テンプレートにサブスクリプションページ用のテンプレートを追加することも発表した。同社は現在、継続してパブリッシャーによるサブスクリプションサービス開始を簡易化する取り組みを行っているが、このテンプレート追加もその一環だ。ワシントン・ポストは7月に、最初のサブスクリプションのテンプレートを複数公開した。また、サイトやモバイルアプリにおける、ユーザーごとに異なるサブスクリプション体験のテストをしやすくする機能も追加した。
アークのすべてのクライアントがサブスクリプションビジネスを運営しているわけではないが、昨年アークがサブスクリプション用ツールをローンチして以来、サブスクリプションはアークのクライアントにとってますます重要な優先事項となっている。アークの広報担当者によると、アークを利用するクライアントたちが抱える登録読者数とサブスクリプション読者数は合わせて5000万人となっており、この4カ月だけで20社がサブスクリプション運営の新規クライアントとして追加されたという。広報担当者は全体で何社のクライアントを持っているかは明らかにしなかった。
アークはソフトウェアをサービスモデルとして提供している。クライアントのアクティブなユーザー数や利用するツール、サポートする必要があるキャパシティとページビューの量に応じて変化する月額料金をクライアントが支払う。年間コストは通常数十万ドルから数百万ドル(数百万円から数億円)の範囲で上下する。
「私たちは、クライアントがより早く市場に参入できるよう努力している」と、アークのプロダクト部門バイスプレジデントであるマット・モナハン氏は言う。
「共通しているテーマは柔軟性」
アークは長年自社開発の機能に頼ってきたが、今年に入って外部のテクノロジーとの提携を求める流れを見せており、スプリードリーとブルーコニックの機能統合はその例となっている。6月には、コンテンツ配信プラットフォームのアカマイ(Akamai)、体験モニタリング・サービスのキャッチポイント(CatchPoint)、データ統合プラットフォームのミュールソフト(Mulesoft)との提携を拡大すると発表した。
アークの動きは、マーケティング関連テクノロジーのエコシステムが成熟し続けるなかで、ほかのツールの運用に柔軟に対応しようとするマーケティングプラットフォーム業界全体のトレンドにも適合する。「CMSと統合されるCDPという概念は、ますます一般的になっている」と、CDP分野にサービスを提供する業界団体、CDPインスティテュート(CDP Institute)のファウンダーでCEOのデーヴィッド・ラーブ氏は言う。ラーブ氏は、メッセージング・プラットフォームのツイリオ(Twilio)が11月2日にセグメント(Segment)を32億ドル(約3330億円)相当の株式で買収したことや、デジタル体験プラットフォームのアクイア(Acquia)が昨年末にCDPアジャイルワン(CDP AgilOne)を金額非公開で買収したことを含む、いくつかの最近の買収を指摘した。
アークのビジネスにとって、ますます多様化する顧客のニーズに対応することが必要となっており、そのタイミングで他社サービス機能との統合が行われていることも重要だ。10月には、何年にもわたって追い求めた末に、エネルギー企業のBP社を同社初の非メディア系クライアントに加えた。BPに加えて、アークは現在、グラハム・メディア・グループ(Graham Media Group)などの放送局やダラス・モーニング・ニュース(Dallas Morning News)などの新聞出版社にもサービスを提供している。ワシントン・ポストの広報担当者は、パンデミックが始まってからアークが全体でどれだけクライアントを増やしたのか、現在のクライアント数についての質問には答えなかった。
「私たちのフォーカスはより広くなった。多くのケースで共通しているテーマは、柔軟性だ」とモナハン氏は言う。
MAX WILLENS(翻訳:塚本 紺、翻訳:長田真)