アドブロックは深刻な問題だ。そして、このアドブロックがどれほど悪影響を及ぼしているのかをよりわかりやすく教えてくれる新しいレポートが発表された。ロイター研究所(Reuters Institute)が発表した「デジタルニュースレポート2016(Digital News Report 2016)」だ。
本記事では、米国、英国、日本、ポーランド、ドイツの5つの国に焦点を当て、アドブロックを利用している人々と、その理由について詳しく見てみることにした。
アドブロックは深刻な問題だ。そして、このアドブロックが及ぼす悪影響をよりわかりやすく教えてくれる新しいレポートが発表された。ロイター研究所(Reuters Institute)が発表した「デジタルニュースレポート2016(Digital News Report 2016)」だ。
26の国にまたがる5万人以上のオンラインニュース利用者を対象とした、このレポート。アドブロックをもっともよく利用しているのは、ニュースをもっぱらオンラインで読む人と35歳未満の人たちであることを示している。
一方、スマートフォンユーザーの間ではまだアドブロックは広く普及しておらず、アドブロックを利用している人の割合はわずか8%だった。ただし、回答者の3分の1が、来年にはアドブロックを利用するつもりだと答えている。
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とはいえ、調査結果は国や地域で大きく異なる。たとえば、ポーランドはアドブロックの利用者の割合が38%と高くなっているが、日本では広告をブロックしていると回答した人はわずか10%だった。
そこで、本記事では、米国、英国、日本、ポーランド、ドイツの5つの国に焦点を当て、アドブロックを利用している人々と、その理由について詳しく見てみることにした。
日本の利用者はたった10%
ポーランドでアドブロックの利用が多い理由としては、ニュースサイトに大量の広告が掲載されていることに加え、「きわめて煩わしい」広告を掲載した違法なビデオストリーミングサービスの利用者が多いことが考えられる。イギリスでは、アドブロック利用者の割合は21%で、アドブロックのおかげで新聞社がもっとも大きな痛手を被っているという。
その一方、日本の利用者はたった10%しかいない。この普及率の低さは、認知度の低さによるという意見が多いようだ。極東の島国だからこその結果かもしれない。
回答者のほとんどは、アドブロックをノートパソコンかデスクトップパソコンで利用すると述べているが、このことはパブリッシャーにとって多少の安心材料といえる。2015年には、インターネットへのアクセスに利用する主なデバイスとして、モバイルデバイスを挙げる人の方がデスクトップパソコンを挙げる人より多くなったからだ。
また、この傾向は2016年に28%拡大すると、ゼニスオプティメディア(ZenithOptimedia)は2016年の「メディア消費予測(Media Consumption Forecasts)」で伝えている。
日本では全年齢で低い割合
ロイターのデータは、ある明確なメッセージをパブリッシャーに伝えている。それは、アドブロックを利用する割合のもっとも高い年齢層が18歳から24歳までということだ。ただし、年齢が上がるにつれてアドブロックへの関心は小さくなっている。
なお、日本においては、全年齢において低い割合となっていることが興味深い。この様子だと、マーケターやパブリッシャーたちは、アドブロックについてまったく気にしなくてもいいというレベルだろう。あくまで、「いまのところ」だが。
しかし、欧米においては、このような状況でも、このレポートからは暗いトンネルの出口に射しこむわずかな光が見えてくる。どの国でも若年層の人たちはアドブロックの利用率が高いユーザーグループであるものの、無料ニュースの広告を受け入れる心づもりができている若者が世界中で増えているというのだ。
ユーザー体験はどの国も課題
人々がアドブロックを利用するようになった理由は実にさまざまだ。レポートによれば、理由はひとつだけではないものの、広告の量とユーザーを追跡する広告の存在を理由に挙げる回答者がどの国でも群を抜いて多かった。
本項目については、日本は比べるべくもないというレベルであることは、上記2つの結果から明らかだろう。しかし、インターネット上のプライバシー保護については、国内においても、年々関心が高まっているのを感じる。もしかしたら、日本でも近い将来、雪崩を打つ可能性もあるかもしれない。
アドブロックを利用する人の増加は、パブリッシャーが直面している大きな問題のひとつだ。ある研究者は、パブリッシャーが現在行っている対策以上のことをしなければ、2020年までに350億ドル(約3兆6600億円)の損害を被ることになると予測している。
やはり男性が高い利用率
また、パブリッシャーはアドブロックにおける男女差の問題にも直面している。男性の方が広告をブロックしている割合が高いが、レポートによれば、女性はニュースを読むために、Webサイトやアプリではなくソーシャルメディアを利用する傾向がはるかに高いという。
アドブロックはパブリッシャーが直面している大きな問題のひとつだが、レポートによれば、企業は進化と対応を続けているという。現在、多くのパブリッシャーがスポンサードコンテンツにシフトしているが、スポンサードコンテンツでは、ほかの記事コンテンツと同じ書式、フォント、テンプレートが使用されることが多く、ブロックをするのが困難だとレポートは指摘している。
Jemma Brackebush(原文 / 訳:ガリレオ) ※一部[日本版]編集部で加筆
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