いまや英国におけるデジタルオーディオは、広告主が本気で検討すべき規模を誇っている。同国のリスナー数は週あたりで2200万人にのぼり、その数字は2020年までに3000万人を上回るからだ。それと同時に、デジタルオーディオ広告の購入も、よりシンプルになってきた。
いまや英国におけるデジタルオーディオは、広告主が本気で検討すべき規模を誇っている。同国でラジオのオーディエンスを測定する団体、ラジオ・ジョイント・オーディエンス・リサーチ(Radio Joint Audience Research:RAJAR)による最新の数字では、リスナー数は週あたりで2200万人にのぼり、その数字は2020年までに3000万人を上回ると見込まれている。
それと同時に、デジタルオーディオ広告の購入も、よりシンプルになってきた。「キャピタル(Capital)」「ハート(Heart)」「クラシックFM(Classic FM)」などのラジオ局を所有する英メディア企業グローバルラジオ(Global Radio)はいま、メディア計画へのオーディオの組み入れをさらに促進すべく、デジタルオーディオが抱える最大の課題に取り組んでいる。
「アドテクのインフラは、ディスプレイ広告や動画広告と組み合わせられるような形で、広告主がオーディオ広告を取引できるように整備されている」と、グローバルラジオでコマーシャルデジタルディレクターを務めるオリバー・ディーン氏は語る。
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欧州全土で6000万人にリーチ
たとえば、グローバルラジオのデジタルオーディオ取引「デジタルオーディオエクスチェンジ(Digital Audio Exchange:以下DAX)」では、全デジタルストリーミングサービスに渡って、広告主はオーディオキャンペーンのターゲットを絞り込める(ただし、購入は落札可能価格ではなく固定価格)。2014年に市場に初登場してから3カ月目までは、DAXで取引を行っている広告主は14社だったが、いまではその数は月あたり300社にまで成長している。
ディーン氏によると、英国におけるDAXのリスナー基盤は、この1年半で1000万人から1500万人に拡大しており、同プラットフォームは欧州全土で6000万人にリーチしているという。DAXが活用するのは、140におよぶ音楽プラットフォームの広告インベントリー(在庫)だ。
そのなかには、グローバルラジオ傘下の全ラジオ局、ライバル企業のバウアー(Bauer)が所有するネットワーク「アブソルートラジオ(Absolute Radio)」、デジタルストリーミングサービスの「サウンドクラウド(Soundcloud)」、ポッドキャスト企業のオーディオブーム(Audioboom)、あるいはディーザー(Deezer)のような各種サービスが含まれる。目につくのはSpotifyが入っていない点だろう。Spotifyが英国でプログラマティックによる広告取引を開始したのは、比較的最近の2016年7月だとしてもだ。
測定とアトリビューションの問題
これまで広告主にとって重大な障害となっていたのは、測定とアトリビューション(広告効果を評価し、予算配分を最適化するプロセス)だった。とりわけ、広告を聴取した人の行動を追跡することが高い壁となっていた。「オーディオファイルにクッキーを埋め込むわけにはいかない」と、ディーン氏は指摘する。
だが、昨年10月からグローバルラジオの広告主は、オーディオ広告が人々をサイトに導いたかどうか、アクセスした時刻、サイトでの彼らの行動(ユーザーが購入に至るまでのプロセスなど)、さまざまな種類のクリエイティブにどの程度効果があったのか、といったことを追跡できるようになった。
「ファッション専門ウェブサイト『リスト(Lyst.com)』は、自社サイトにタグを埋め込んだ。そうすることで、グローバルラジオのリスナーが『リスト』のサイトにアクセスすると、我々にそれが分かり、そのユーザーの行動をモニターして対照群と比較できる」と、ディーン氏は付け加えた。このトラッキングを利用するグローバルラジオの広告主の割合は、ローンチ時には10%だったが、その割合は毎月着実に増加してきた。
計画ツールの高性能化が意味するのは、広告主がオーディオ広告をほかのメディアにリンクできるようになるということだ。デジタルオーディオ聴取の大部分(英国では65%)は、モバイルで行われている。そのためオーディオ広告の屋外広告とのリンクは、英通信大手のBTグループ(BT Group)やマクドナルド(McDonald’s)などの広告主による、さまざまな活用事例を生み出しつつある。
また、クリエイティブの強化にもグローバルラジオは重点を置いてきた。同社では、プロデューサーやスクリプトライターなどを含む従業員60人が、オーディオクリエイティブチームで働いている。
ローカライズした訴求も可能
グローバルラジオは現在、英国の国営宝くじを運営するキャメロットグループ(Camelot Group)のために、地域別のダイナミッククリエイティブ(パーソナライズド広告)を活用する同社初のキャンペーンを展開している。このキャンペーンで、マンチェスターのデジタルオーディオのリスナーは、ロンドンのリスナーとは異なった広告を耳にすることになる。
「時刻や天気、リアルタイムの航空券価格のように、データポイントを参照できる点が画期的だ。この手法を用いることで、特定のオーディオ広告のターゲットを絞ることができる」。
昨年末、スポーツ賭博サービスのスカイベット(Sky Bet)は、エージェンシーのメディアコム(MediaCom)と組んで同様のキャンペーンを展開し、サッカーの試合に関連する地域のリスナーに広告を配信した。
1年前と比べて需要倍増
メディアコムでコマーシャルトレーディングディレクターを務めるチャーリー・イェイツ氏によると、デジタルオーディオは同エージェンシーのメディア計画の約3分の1に組み込まれており、その割合は1年前と比べて倍増したという。この成長はメディア消費の変化による部分が大きい。
だが、DAXの功績は、同プラットフォームがデジタルストリーミングと同時に従来型のラジオインベントリーの購入も簡単にしたことだと、イェイツ氏は指摘する。「それが成長にとって、最大の障害になるか、最大の理由になるかだ」。
「我々がオーディオに統合できるデータは高度化している。このデータは、古いオーディエンスだけでなく、新しいオーディエンスにもリーチしていることをクライアントに納得してもらうのに利用可能だ。そして、データが高度化するほど、古いメディアの測定方法は新しいメディアに通用しなくなる。いま我々は、以前には望んでも声を届けられなかったオーディエンスを獲得しつつある。それこそがきわめて重要だ」。
Lucinda Southern (原文 / 訳:ガリレオ)
Images: courtesy of Global Radio.