現在、増大しつつあるデジタル広告支出の85%をGoogleとFacebookが占めており、ほかのパブリッシャーは残り物を争っている状態だ。そのためドイツでは、パブリッシャー各社がこれまでの対立関係を解消し、一体となった大規模なデータプール構想を計画しはじめた。
アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)、グルナー・ヤール(Gruner + Jahr)、「RTL」を傘下に持つベルテルスマングループ(Bertelsmann Group)、デア・シュピーゲル(Der Spiegel)の親会社など、ドイツの10大媒体社グループのうち8グループが、タブロイド紙「ビルト(Bild)」をはじめとする約1000の有力Webサイトの膨大な読者データをプールする。
現在、増大しつつあるデジタル広告支出の85%をGoogleとFacebookが占めており、ほかのパブリッシャーは残り物を争っている状態だ。そのためドイツでは、パブリッシャー各社がこれまでの対立関係を解消し、一体となった大規模なデータプールの構築を計画している。
アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)、グルナー・ヤール(Gruner + Jahr)、「RTL」を傘下に持つベルテルスマングループ(Bertelsmann Group)、デア・シュピーゲル(Der Spiegel)の親会社など、ドイツの10大媒体社グループのうち8グループが、タブロイド紙「ビルト(Bild)」をはじめとする約1000の有力Webサイトの膨大な読者データをプールする。
未加工のデータが集められるのは、ドイツテレコム(Deutsche Telekom)傘下の「エメトリック(Emetriq)」というプラットフォーム。エメトリックは、このデータを選り分けて整理し、十分にターゲティングされた質の高いオーディエンスセグメントを作り出すという。パブリッシャーはこれを広告パッケージの強化に利用できるのだ。
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GoogleやFacebookに対抗
アクセル・シュプリンガーのセールスハウスであるメディア・インパクト(Media Impact)のCEO、カールステン・シュベッケ氏は「最大の敵はもはや伝統的な媒体社ではない。我々は力を合わせてGoogle、Amazon、Apple、Facebookに対抗しなければならない」と語った。
パブリッシャー側はデータセグメントを、4000~1万5000ユーロ(約53万~180万円)の定額料金で利用する。料金はページのインプレッション数とデータを利用する広告インプレッション数で決まるという。
エメトリックのCEO、ダニエル・ノイハウス氏は、次のように述べている。「ドイツでは、パブリッシャーとセールスハウスほど苦しんでいるところはない。十分なデータがなく、データをサイロ化させておいては、GoogleやFacebookには近づけるほど、集約することさえできないからだ。もうデータの蓄積ははじまっており、まだ足元にもおよばないが、データの量と質は近づきつつある」。
ドイツのパブリッシャー事情
ドイツでパブリッシャーたちが協力するのは珍しいことではない。「アドオーディエンス(AdAudience)」は、アクセル・シュプリンガーをはじめとするドイツの有力媒体グループ7つのジョイントベンチャーで、プログラマティックギャランティードによる(残ったインベントリではない)広告の販売のために2010年に設立された。
エメトリックは、このアドオーディエンスを通じて、全参加パブリッシャーのデータ(すべて匿名)にアクセスできる。ソーシャル分野のデモグラフィック(人口統計)データ、オンラインにおけるログインのデータ、意図、行動、購入のデータ、Webサイトのセマンティックデータ(意味的データ)にコンテクスチュアルデータ(状況のデータ)と、パブリッシャーは多岐に渡る大量のデータを利用して、広告主が関心を寄せるであろう質の高い読者プロフィールとセグメントを作成できる。
ノイハウス氏はさらに、「クッキーの削除率は全員の問題だ。そのため、我々が女性ユーザーは450万人いるというときには、全員がアクティブユーザーであることを強調することが大事だ」と語った。
リーチが大きく高質なセグメント
エメトリックが作成したセグメントはすべて、調査グループGfKのオンライン消費者パネルに照らしてチェックされる。また、ドイツテレコムが自社データの一部を提供。そのおかげで、データの確度は87%あるとノイハウス氏は主張する。
セグメント化されたデータはパブリッシャーに戻され、パブリッシャーはそのデータを、自社のDMP(データマネジメントプラットフォーム)で使用するか選ぶことができる。
パブリッシャーのジョイントベンチャーであるアドオーディエンスのCEO、ステファン・クレッツ氏は、次のように述べている。「実際の恩恵は、クライアントが必要としている、リーチが大きくかつ質が高いセグメントが作れることだ。質が高くてリーチが小さいものや、リーチが大きくてデータの質が低いものを作るのはそれほど難しくないが、両方を備えるものは、簡単には作れない」。
構想がもたらすメリット
パブリッシャー側のメリットとして、それぞれのブランドが擁するポートフォリオよりはるかに巨大なデータプールから、匿名化された高度なデータセグメントを受け取り、それをインプレッション単価(CPM)の向上に使えることがある。このプロジェクトはまだ初期段階にあるため、アドオーディエンスがCPM上昇の証拠として紹介できる数字はあまりないが、クレッツ氏によると、当初段階の兆候からはそれが「かなりのもの」であることがうかがえるという。
いまのところ、データへのアクセス、キャンペーンへのデータの利用、および自社のオープンなDMPからのデータの追加ができる広告主は、ドイツテレコムに限られている。
「エメトリックのコンセプトは、データが必要な場面で人々が革新的になるのを促し、物事を実現させることだ。Google、Facebook、Amazon、Appleがどこも集約したデータを自分だけのものにして共有しないのであれば、いずれイノベーションを殺すことになる」と、ノイハウス氏は語った。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)
Photo by Thinkstock / GettyImage