ドイツメディアの最新トレンドは、業界横断型の連合だ。この連合は、消費者データのプライバシーを優先し、FacebookとGoogleの二大覇権に対抗することを目指している。メディア企業のアクセル・シュプリンガー(Axel Springer)は、同国の有名なふたつの連合のひとつに参加している。
ドイツメディアの最新トレンドは、業界横断型の連合だ。この連合は、消費者データのプライバシーを優先し、FacebookとGoogleの二大覇権に対抗することを目指している。
「ビルド(Bild)」や「ディ・ベルト(Die Welt)」といった全国紙を発行するメディアコングロマリット企業アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)は、ドイツの有名なふたつの連合のひとつに参加している。この連合には、自動車メーカーのダイムラー(Daimler)や保険大手のアリアンツ(Allianz)、ドイツ銀行(Deutsche Bank)も参加している。ドイツの航空会社ルフトハンザ(Lufthansa)や通信会社のドイツテレコム(Deutsche Telekom)、ITセキュリティ会社のブンデスドルクレイ(Bundesdruckerei)も8月最終週に署名し、参加企業は計9社になった。
連合の目標は、すべてのパートナーのサイトでログインを一元化し、来年5月から適用されるデータプライバシー関連の新規制「EU一般データ保護規則」(以下、GDPR)を順守することにある。ユーザーは個人アカウントを作成すると、参加企業のサイトで共通のセキュリティ設定とパスワードを利用できる。参加企業は、このログインを「マスターキー」と呼んでいる。今後、消費者に対するマーケティングでも、「マスターキー」という呼称が使われる予定だ。
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このサインインプラットフォームは、英語の「verify(照合する)」と「me(私)」を組み合わせた「Verimi(ベリミ)」という名称で消費者に売り込まれる。サービスの内容と利用方法を説明する専用サイトでは、プロダクトのローンチに先立ち、このイニシアチブのプロモーションをはじめている。
Verimiの主目的
Verimiの主目的は、多くのサイトで延々と続くオンラインアカウント管理プロセスをなくすことにある。こうしたプロセスは、GDPRと「eプライバシー指令(ePrivacy directive)」の施行後にますます複雑化する見込みだ。Verimiを利用することで、企業が保有する自分自身に関するデータを次のように管理できる。まず、登録時に、連合の参加企業にデータが転送されることに「同意」し、転送に同意するデータの種類を明らかにするよう求められる。そうした情報は、参加企業が実施するパーソナライズされた広告ターゲティングをGDPRに準拠させるのにも役立つ。拒絶の意思を表明しているユーザーを広告のターゲットから外したいメディア企業や広告主にとって、役に立つ情報なのだ。
アクセル・シュプリンガーはメディア企業以外と手を組むことで、一般的なメディア連合とは異なる道を歩んできた。ほかのメディア連合では、競合企業間で意見の不一致が生じて前進が妨げられる事態が生じているが、メディア企業以外と手を組めば、そうした事態を回避できる。アクセル・シュプリンガーは現在、連合に参加している唯一のメディア企業だが、ほかのメディア企業も参加できる。創設時のパートナーがすでに事業展開している市場を皮切りに、ほかの欧州市場にサービスを拡大するのが目標だ。
同連合は、年内または遅くとも2018年はじめまでに、実際に稼働するプロダクトを市場に投入すると確約している。5月に構想についてはじめて発表してから、半年ちょっとでの導入となる。Verimiは独立したユニットとして稼働し、ソーシャルメディアやマーケティング、データプライバシーなど、さまざまな経歴を持つ30人がスタッフを務める。参加企業は、既存の人材を共有するのではなく、オープンな市場からチームを雇い入れてきた。
もうひとつのライバル
連合の目的は、ユニバーサルログインを提供するもうひとつの主要な業界横断型連合と似ている。こちらを主導するのは、ドイツ放送局のRTLグループ(RTL Group)とプロジーベンザット・アインス(ProSiebenSat.1)、インターネットサービスプロバイダーのユナイテッド・インターネット(United Internet)。
どちらの連合も、GoogleやFacebook、Amazonのような米国の技術プラットフォームに代わる欧州のプラットフォームを提供するために結成され、マスオーディエンスにリーチするのが目的だ。そのため両連合は今後、当然張り合うことになる。だが、ユニバーサルログインは、Verimi連合がリリースを計画している多くのプロダクトの先駆けとなるだろう。ただし、今後リリースされるプロダクトの詳細はほとんど明かされていない。
「デジタル化は、シンプルさと信頼に基づいている」と、ドイツテレコムのCEOを務めるティモテウス・ヘットゲス氏は語る。「Verimiで目指しているのは、実用的で超安全なオンラインマスターキーの提供だ。顧客のデジタルIDが引き続きEUの管轄下にあり、ドイツのデータ保護規則によってセキュリティが守られるようにしていく」。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)