運用型広告は日本のパブリッシャーにとって、いまやマネタイズの大きな柱のひとつだ。しかし一方で、収益機会の損失や、メディアブランドの毀損過激に繋がる悪質広告の脅威が顕在化している。
イスラエル初のアドセキュリティベンダー、GeoEdge(ジオエッジ)の調査によると、日本のユーザーは18セッションに1回のペースで、悪質広告の脅威にさらされていることがわかっている。
悪質広告の種類には、過激な描写や性的描写を伴う、不適切・不快なものをはじめ、フィッシングサイトに強制的にユーザーをリダイレクトさせるものなどさまざまだ。運用型広告が、日本のパブリッシャーにとってマネタイズの大きな柱になるなか、こうした悪質広告の脅威が日本でも顕在化し、収益機会の損失やメディアブランドの毀損が起こっている。
「コロナ禍で広告需要が低下するなか、パブリッシャーはこれまで以上にアドセキュリティを強化し、収益拡大とメディアブランドの質向上に努めるべきだろう」。こう語るのは、GeoEdgeでAPAC担当ディレクターを務める、エラン・ナボン氏だ。同社は、上記のような悪質広告をモニタリング・調査し、リアルタイムでブロックするソリューションを、国内外のパブリッシャーに提供している。現在、国外ではフィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)やハースト(Hearst)、国内でも朝日新聞や産経新聞といったパブリッシャーが導入している。
また、2020年5月14日、同社はヘッダービディングソリューションを提供するFLUX(フラックス)との戦略提携を発表。FLUXは2018年に創業された、新進気鋭のドメスティックアドテクベンダーだ。これにより、「FLUX Headerbidding Solution」を利用するパブリッシャーは、GeoEdgeが提供するツールを利用することで、広告のセキュリティやクリエイティブ品質の一元管理が可能になった。なお、9月14日からは、フジテレビ系列28局が運営するデジタルニュースメディア、FNNプライムオンラインで、GeoEdgeのソリューション提供が開始されている。
FLUXでシニアエグゼクティブマネージャーを務める柳田竜哉氏は、「GeoEdgeとの提携は、セキュリティやクリエイティブの品質管理をサポートし、パブリッシャーの広告運用における課題解決への一手として意味付けている」と語る。
国内市場の現状
GeoEdgeが国内で実施したモニタリング調査は、深刻な状況を示唆している。というのも、GeoEdgeがモニタリングした300億インプレッションのうち、実に8000万件に、悪質広告が含まれていたことがわかったのだ。つまり日本のユーザーは、18セッションに1回のペースで、悪質広告の脅威にさらされていることになる。
「日本の運用型広告市場は、米国などに比べるとまだ小さいが、今後大いに成長することが予想される。しかしそれは、悪質広告の被害が増加する可能性もあるということだ」とナボン氏。実際、GeoEdgeへの国内パブリッシャーからの問い合わせは増加傾向にあるという。
一方柳田氏は、日本のアドセキュリティ領域の課題について、以下のように述べる。「運用型広告がメディアの大きな収入源となっているなか、パブリッシャーはメディアブランドを毀損するかもしれない広告の掲載を、許容せざるを得ない状況になっている」。
同氏によると、アドフラウド対策やアドベリフィケーションツールといった、広告主のためのブランドセーフティのサービスは、国内でも数多く提供されている。しかしパブリッシャーのブランドを、悪質な広告から守るためのサービスは、ほとんど見られないという。実際ナボン氏によると、日本でアドセキュリティソリューションを展開しているのは、いまのところGeoEdgeのみだという。
収益機会の最大化に
悪質業者の攻撃によって、パブリッシャーのインプレッションが奪われれば、当然広告収益は落ちる。また、昨今のコロナ禍の影響で広告需要が低下するなか、収益を最大化させるためにも、パブリッシャーはより一層セキュリティを重視するべきだろう。
ナボン氏によると、悪質広告はSSP(サプライサイド・プラットフォーム)やアドネットワークなど、協業するパートナーを吟味しブラックリストを作成することで、ある程度は防ぐことができる。しかし、「こうした対応は、同時に収益の低下を招く恐れがある」と、ナボン氏は強調する。
「GeoEdgeのソリューションは、ユーザー体験を損ねる可能性のある広告を自動検知し、リアルタイムでブロックする。悪質広告による被害を未然に防ぎ、収益機会の損失を防ぐことができるのだ」。
顧客体験の質向上に繋がる
悪質広告の脅威は、収益機会の損失だけでなく、顧客体験やメディアブランドの毀損にも繋がる。
朝日新聞では、より良い顧客体験を提供するため、2019年1月より朝日新聞デジタルにGeoEdgeのソリューションを本格導入。同社のデジタル・イノベーション本部 カスタマーエクスペリエンス部 植木快氏によると、当時朝日新聞デジタルでは、より良いユーザー体験を提供するため、オープンオークション経由で掲載される広告の質を、より高めていくことが課題になっていたという。
「GeoEdgeのソリューションを導入した結果、悪質広告が掲出される前にリアルタイムでそれらをブロックできるようになった。いまは、インシデント発生前にリスクが解消されるという、理想的な状態を築けている」と植木氏。
「また、GeoEdge導入前は、ユーザー体験を損ねる可能性のある広告が掲載されている恐れがあれば、掲出経路を自力で特定し、該当SSPにメールで該当広告のブロックを依頼するという運用が頻繁に発生していた。しかし導入後はその頻度が減り、業務の効率性も改善した」。
悪質広告の具体例
では、悪質広告には、具体的にどのようなものがあるのか。柳田氏によると、パブリッシャーが懸念すべき悪質広告は、3つのタイプに分けることができるという。1つ目のタイプは、薬機法や景表法といった法令に抵触したり、芸能人の肖像権を侵害する恐れのあるような広告、2つ目は、コンプレックス商材の過度な訴求、そして性的な表現といった読者を不快にさせる広告。そして3つ目は、一見普通の広告を装っているが、オートリダイレクトさせるためのスクリプトが仕組まれているなど、詐欺的な悪質広告だ。
「1つ目、2つ目のタイプの広告については、表現や内容のレベルにより、ギリギリ掲載可能なものもあるかもしれない。掲載可否の判断が、パブリッシャーによって異なることもあるだろう。しかし、3つ目のタイプの広告については、すべてのパブリッシャーにとって、等しく許容できるものではない」。
実際にGeoEdgeがブロックした悪質広告の事例を見てみよう。これは、上記でいうところの3つ目のタイプにあたる、Morphixx Malvertisingと呼ばれるクレジットカード詐欺を狙った悪質広告だ。悪質業者は、作成したフィッシングページにユーザーを強制的にリダイレクトさせる。フィッシングページには、企業ロゴが不正利用されていたり、「当選おめでとうございます」といった文言があり、ユーザーのクレジットカードや個人情報を記入させるように仕向けるのだ。なお、最近ではクレジットカード情報のほかにも、仮想通貨の盗難を狙う悪質業者も見られている。
ナボン氏によると日本では、こうしたユーザーを強制的に遷移させる、オートリダイレクト広告(強制リダイレクト広告ともいう)が非常に多いという。

実際にGeoEgeがブロックした悪質広告
GeoEdgeの今後
続けてナボン氏は、GeoEdgeの国内における取り組みについて、「アドセキュリティの問題を解決するには、その国のエコシステムをしっかりと把握し、それをソリューションに反映させなければならない」と述べる。現在GeoEdgeは、日本市場向けたサービスのローカライズや、日本市場ならではの傾向や、それを解決するための知見の提供を進めているという。
「今後は、多くの労力と時間を投資し、パートナー企業と共に日本市場ならではのソリューションを展開していくつもりだ。そうすることで、『メディアの信頼性』を築くためのサポートをしていきたい」。
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Written by DIGIDAY Brand STUDIO
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