2018年も暮れを迎え、ガーディアン(The Guardian)は、3年に及ぶ損益分岐点への復帰計画の期限まで、あと3カ月と迫っている。英DIGIDAYは、2018年に達成した最大の出来事と2019年の展望について、ガーディアンでチーフレベニューオフィサーを務めるハミッシュ・ニックリン氏に話を聞いた。
2018年も暮れを迎え、ガーディアン(The Guardian)は、3年に及ぶ損益分岐点への復帰計画の期限まで、あと3カ月と迫っている。
英DIGIDAYは、2018年に達成した最大の出来事と2019年の展望について、ガーディアンでチーフレベニューオフィサーを務めるハミッシュ・ニックリン氏に話を聞いた。
以下、会話の抄訳だ。読みやすさを踏まえ、少し編集してある。
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――2018年、もっとも大きな出来事は?
マーティン・ソレル氏がWPPを去り、S4を立ちあげたのは大きな出来事で、今後の動向も注目だ。マーク・リード(WPPの現CEO)氏は自身の新たな戦略のアプローチについてのスピーチで、以前と比べて広告バイイングの力と実際の力との関係性が希薄化していると語ったが、これはメディアにとって、そしてメディア取引にとって大きな発言だ。2019年には全貌が明らかになってくるだろうが、これがメディア全体に与える影響は軽視できるようなものではないだろう。
――パブリッシャーにとって、それはどのような意味があるのか?
確かなことはまだわからない。取引でのサイズとスケールに関して良いことは、取引が適した場所で行われ、目標とする収益のサイズ感を知ることができるということだ。また、取引外の技術的なところで、メディアバイイングの計画や実施にあたって、プログラマティック技術に完全に任せられているかどうかについて言えば、我々はまだそこまで達していない。つまりこれは、危険性をはらんでいるということだ。最終的には良かったと思えるだろうが、その前にこの騒然とした状況を落ち着かせる必要がある。もうひとつの大きなポイントとして、GDPRもある。
――長期的な目線でのGDPRの影響は?
最終的には、業界はGDPRがあって良かったと思えるだろう。だが、GDPRによってデータの所有元や利用法、そしてデータまわりのパワーバランスをどこに落ち着けるかを見直さなければならなくなった。以前は「業界がデータを食い物にしている」と批判することができたが、現在はベンダー、パブリッシャー、エージェンシー、そして最終的にはユーザーがデータを利用する際に、オープンであることと透明性が必要とされている。ユーザーの同意を得たパブリッシャーは、今後大きな力を持つことになるだろう。パブリッシャーは、我々のページにタグを打つことに慣れすぎてしまい、彼らはそれがいったい何なのか、そしてデータに何が起こっているのかをまったく知るよしもなかった。だが、そんな日々はもう終わった。我々自身のデータをもっと自分でコントロールするべきときが来ており、これこそが唯一、良いことなのかも知れない。
――マイナス面は?
短期的には、おそらくデュオポリーを強めてしまったことだろう。Googleがパブリッシャーを呼んで開催したミーティングのすべては、彼らがどのように(GDPRに)対応するかを我々に伝えるためだけのものだった。それが引き起こしたすべての頭痛のタネは、本当に大きかった。だが、我々はそれを乗り越えた。ICO(Information Commissioners’ Office:プライバシー監視機関)が大企業にはじめて罰則を課すようなことがあれば、業界全体の反応が楽しみだ。GDPRは終わった、などとは到底言えない。だが長期的には、読者に対してオープンで透明性のあるパブリッシャーには、良い結果をもたらすだろう。
――2019年に改善したいことは?
プログラマティックのエコシステム内の透明性だ。これがお金の流れを追うことを難しくしている。つまり私は、人々から得た金を隠し、本来行うべきではないやり方で利益を得ようとしているベンダーをどうにかしたいと思っている。売り側と買い側、双方のログの照合できるように、取引の履歴データを的確に保持することだ。そうすれば金の流れを把握できる。
――ガーディアンにおけるマーケターの最終予算の比率については満足か?
我々は、チェック目的でいまも自身のインベントリをランダムに購入しているが、すべて問題ないという自負がある。我々が見てきたものの3割には、(2016年に報告されているように)そのときの主流に合っていたとは言いえないものがあった。だがもちろん、時が経つにつれて大きな価値を生んだものもあった。最近になって同じ実験を行なったが、結果は五分五分だった。それぞれのテックベンダーとの個々の取引に依存しているため、総じて平均的な結果を出すことは難しい。最新の状況を確実に把握するために必要なチェックは日々行なっている。
――2018年、ルビコンプロジェクトとの係争が落ち着いたことは、ひとつの節目となったか?
それについて多くを話すことはできない。だが、常にリソースの垂れ流し状態だったので、それが終わったのは良いことだ。(アドテク)業界または業界内の特定のベンダーは、一連のビッドキャッシング騒動のあとにお互いの信頼関係を強めているようだが、これは興味深い。マフィアの集会のような危険な状態が常に(アドテクを)静かに取り巻いてきたが、これは誰もが話したがらなかったためだ。現在はその静けさは吹き飛び、非常に大きな力を握っている。これは自主規制のサインだ。節目について言えば、我々にとってはルビコンのことよりもオゾン(Ozone)の方が大きな節目だったと感じている。
――2019年、広告主はオープンなマーケットプレイスへの投資を減らすと思うか?
間違いなく、2019年はオープンなマーケットプレイスでのバイイングが減少傾向を見せる、はじめての年になるだろう。そして、プレミアムな取引の割合が増えるだろう。また、コンテキストに関係なく、オープンなマーケットプレイス全体で一番安価にオーディエンスを見つけることに注力する、といったことは減るだろう。我々の2018年のプログラマティック関連の歳入の8割は、オープンなマーケットプレイス上での取引でのものだ。私は、もっと直接的なプログラマティック取引によってそれを変えていきたいと思っている。プレミアムな取引をプログラマティックでの直接取引で行う事例は、昨年の同時期と比較して3桁台のパーセンテージで増えている。
――損益分岐点回復計画の期限を向かえている2019年、ガーディアンの注力ポイントは?
我々は信頼性、透明性、そしてクオリティに関しては何年にもわたって徹底的に話し合ってきたし、それが正しいことだったことは証明された。広告主にとってもインパクトがあった。今後も、方針はそのままに取り組みを続けていく予定だ。我々がベンダーとどのように協働し、必要なデータへのアクセスを交渉するかという点で、透明性に対して倍賭けしていく意思がある。私の2019年の予測として、テックベンダーに渡っていたデータのコントロールを取り戻そうと必死になるパブリッシャーが増えてくるだろう。現在テックベンダーから提供されている一連のサービスを個別に契約しようとする動きも出てくるだろう。つまり、常に疑問視されてきた付加価値的なサービスを切り捨て、真の有用性だけを追求するということだ。
我々は、プログラマティックで購入できるユニークでネイティブな広告フォーマーットへの投資を増やし、下限価格の決め方に関してもより合理的に行なっていくつもりだ。理想的なのは、下限価格をインプレッションごとに変更できるような、動的な値付けのアルゴリズムだ。私が知る限り、これを実現できているパブリッシャーはどこにもいない。だが、我々はそれを達成すべきだ。