匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらう、DIGIDAYの告白シリーズ。今回は、ヨーローッパの主要なニュースパブリッシャーのディレクターに、2018年のアドテクやパブリッシャーにとって、もっとも困難な出来事のいくつかについて話を聞いた。
2018年のヨーロッパにおけるメディア・広告業界にとっての極めて重要な出来事は、間違いなくGDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)の施行開始だった。それから7カ月が経ったいまも、業界は取締の制裁を恐れて息をこらしている。だが、その制裁はまだはじまったばかりだと信じているものもいる。
匿名性を保証する代わりに本音を語ってもらう、DIGIDAYの告白シリーズ。今回は、主要なニュースパブリッシャーのディレクターに、2018年のアドテクやパブリッシャーにとって、もっとも困難な出来事のいくつかについて話を聞いた。
読みやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。
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――2018年、パブリッシャーにとって最大のプレッシャーは?
GDPRの施行については事前に知っていたが、まさかこのような形で施行されるとは思いもしなかった。そのため、我々を含む業界内の全員が(5月25日の)2〜3カ月前までは様子見の状態で、立場を明確に示してそれに取り組むようなことはしなかった。
――もっとも大変だった出来事は?
おそらく、5月24日にGoogleがパブリッシャーとのミーティングを開いたときだろう。そこでは、5月25日以降のGoogleの方針についての話があった。議論する時間的な余地はまったくなかった。イギリスの大手ニュースパブリッシャーが1社も参加しなかった理由はそこにある。それは、ある種のボイコットのようだったが、それによって何か得られたわけではなかった。パブリッシャーでデータや広告運用を行い、GDPRにも取り組んでいた責任者の多くは、5月25日は仕事を休んだ。単に問題に対応するのが嫌だったし、金曜日は常に、トラブルシューティングをする日として良い日ではないからだ。
――以降、GoogleのGDPRに関するコミュニケーションは改善したか?
いや。GDPRの主な目的のひとつはデータ(利用)の規制だが、同時にGoogleとFacebookのデュオポリー(複占)に立ち向かうという意図があったにも関わらず、実際はそのデュオポリーの状態を強めてしまっただけだった。彼らは誰からの要求にも答える必要がなくなった。GDPRは、Googleの「ウォールド・ガーデン(塀で囲われた庭)」の壁をさらに高くする根拠を与えてしまった。我々のコンセントストリング(consent string:一連の同意)が適切に渡されていなかったため、すべてを白紙に戻してGoogleと契約をやり直さなければならなかった。Googleは2018年の6月に大儲けをしたはずだ。
――CMPのコンセントストリングの渡し方には満足しているか?
非常に多くのCMP(consent management platform:同意管理プラットフォーム)が、技術基盤のない状態で作り上げられている。だが、市場の要求に答えるために何かしらを構築する必要があったのだ。ややこしい状態が続いている。我々は無料のものではなく、独立系(のCMP)を選択して、それに金銭を支払うことを決めた。この世にタダのものなどないからだ。サードパーティのプロバイダーには我々のデータへのアクセスを与えたくはなかった。いまでも、それが適切なものとして機能しているのか確かではない。データ保護の同意書など、何ひとつとしてサインしていない。なぜなら、我々の会社の規模が非常に大きく、どのような相手であれ、契約違反でもあろうものなら大ごとになってしまうからだ。
――CMPが機能しているかどうかの確証がない理由は?
コンセントレート(consent rate:同意獲得費用)が、本来のその価値から考えると高すぎる。また、高い金額を支払っているにもかかわらず、雇っているベンダーの管理能力が低い。多くのプレミアムなパブリッシャーからも、同じ扱いを受けているという話も聞いている。2018年8月までは、CMPから適切にコンセントストリングを受け取れていなかったし、それによって損失も被った。目の当たりにしている(コンセントレート)の数字が正しいかどうかもわからない。
――GDPRに関して最悪な状況が待っているか?
カーペットの下に溜まっていた埃ははらわれたが、GDPRはまだ終わっていない。ICO(Information Commissioners’ Office:プライバシー監視機関)によって、さらに詳細な調査が続くだろう。近々何かアクションがあり、我々は再び対応に追われると考えている。
――2019年の大きな動きは?
パブリッシャーのアライアンスと、ユーザーIDの統合が焦点になるだろう。eプライバシー法の施行を控えているいま、我々が2017年にGDPR施行に先立って置かれた状況とまったく同じ状態のように感じている。誰もが年末に向けて予算に追われているために注意を払っていない。大きなプレッシャーがかかっている。だが、最終期限が延びたからといって、それを無視して良いということではない。