一般データ保護規則(GDPR)の施行を受けて、コンテクスチュアルターゲティング(文脈ターゲティング)が復活しつつあるが、プログラマティックギャランティード(Programmatic Guaranteed)の取引に対するアドバイヤーの需要も、一部のパブリッシャーのあいだで高まりつつある。
一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)の施行を受けて、コンテクスチュアルターゲティング(文脈ターゲティング)が復活しつつあるが、プログラマティックギャランティード(Programmatic Guaranteed)の取引に対するアドバイヤーの需要も、一部のパブリッシャーのあいだで高まりつつある。
自動的ではあるが、固定価格で購入することに事前合意したうえで、広告主がファーストパーティデータを適切なパブリッシャーのオーディエンスデータとマッチングできるこの手法の広告バイイングは、デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)とサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)のあいだでは、いまもなお比較的初期段階の技術であり、これまでは勢いが増すのが遅かった。だが、アドテク幹部によると、一部の広告主がGDPR遵守の広告バイイングをめぐってまだ感じているプレッシャーが、プログラマティックギャランティードの取引に対する関心の高まりに拍車を掛けているという。一部のDSPとSSPも、高まる需要を満たすために、この技術の独自開発を推進している。
動画で特に需要増す
英国のある大手パブリッシャーは、過去2年と比べて、今年の第1四半期にプログラマティックギャランティードの取引が増加している。
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「GDPRによるプレッシャーが理由だ」と、同パブリッシャーの幹部はいう。「GDPRの遵守について少し神経質になっているエージェンシーと、エージェンシーがどうしているのか確信が持てない顧客が、プログラマティックギャランティードのバイイングを求めている。一般的に、プレッシャーはエージェンシーよりも顧客から掛けられている」。
別のデジタルパブリッシャーも、特に動画で、プログラマティックギャランティードの取引が流入している。2017年の7~12月には、動画インベントリー(在庫)の40%強をプログラマティックギャランティードの取引で販売していたが、2018年1~6月には、その割合が70%以上に急増したという。
「我々の販売ルートで1月から今日までに1000%超上昇している。8万ポンド(約1180万円)から100万ポンド(約1480万円)以上に増加した」と、前述のパブリッシャー幹部はいう。同パブリッシャーによると、ディスプレイ広告でもプログラマティックギャランティードの取引がそこそこ増加したが、動画ほど顕著ではないらしい。
在庫不足も需要の一因
広告主はごく特定のオーディエンスのターゲティングに、より多くの資金を投じるため、プログラマティックギャランティードの取引は、インベントリーが不十分な場合に用いられることが多い。
「GDPRによって間違いなくインベントリー不足が進んでおり、プログラマティックギャランティードで市場が成熟するなかで、明らかにこうした取引が増加している」と語るのは、国際ニュース通信社ロイター(Reuters)の欧州担当プログラマティック責任者であるギョーム・ペリエ氏だ。
サードパーティデータを利用したオーディエンス購入の規模拡大は、長年、主力の広告ターゲティング手法だった。だが、パーソナライズされた広告ターゲティングへの個人データの利用についてユーザーに同意を求めるGDPRにより、出どころが常に明白とは限らないサードパーティデータの利用は、広告主にとってリスクを伴うものになった。その結果、いまのところ、一部の広告主はサードパーティデータの利用を完全に回避したがっている。そうした神経過敏のひとつの副産物として、コンテクスチュアルターゲティング手法が急増してきた。コンテクスチュアルターゲティングでは、個人の行動データではなくページ上の閲覧対象に基づいて、個人向けに広告のターゲティングが行われるからだ。
PMPでは不十分な場合
ニューズUK(News UK)傘下の動画ネットワーク、アンルーリー(Unruly)でプログラマティック責任者を務めるポール・ギブンズ氏は、次のように語る。「GDPRにより、同意管理者になったので、バイヤーがプレミアムパブリッシャーともっと密接な関係を構築する必要性が高まっている。バイイングモデルとしてのプログラマティックギャランティードなら、動的価格設定や変動するインプレッション数のような、プライベートマーケットプレイス(以下、PMP)に存在する多くの欠点が取り除かれる」。
ギブンズ氏によると、プログラマティックギャランティードの取引を通じてパブリッシャーから直接購入する場合、広告主はパブリッシャーと交渉したり、ユーザーの同意を引き出している方法や利用している同意管理プラットフォーム(CMP)など、もっと情報に通じた質問を行ったりできるという。「引き受けた多くのデータを集計するベンダーからは、そうした可視性を得るのが難しい」。
多くのパブリッシャーがしばらくプログラマティックギャランティード手法を支持していたのは、こうした取引を直販キャンペーンのように扱うので、パブリッシャーのアドサーバーにおける優先順位がかなり高くなり、さらに割り増しの料金を請求できるのも理由のひとつだ。だが、十分な規模を提供するという点で、PMPでは不十分な場合があるのも理由だ。その場合、エージェンシーも苛立たせる可能性があるからだ。
「量の予測」と「質の保証」
「GDPRの施行後に、プログラマティックギャランティードが増加した。比較的信頼できて質の高いインベントリーの出どころであり、料金面で予期しない問題はあるものの、買い手はもっと効率よくデータの処理や監査を行える」と、メディアエージェンシーグループ、エンジン(Engine)の最高戦略責任者を務めるピート・エドワーズ氏は語る。
ほかのエージェンシーも、インベントリーの質がいい割に、GDPR違反のリスクが低く、メディアの計画や購入の決定にまだデータ主導の手法を適用できる便利なオプションとして、プログラマティックギャランティードに対してこれまでよりも好意的になりつつある。
「コンテクスチュアルバイイングには、適切なタイミングで適切な場所を確保できる利点があるが、プログラマティックギャランティードのようなプレミアムなインベントリーの取引では、顧客のためのメディア掲載で量の予測がつき、質が保証される」と、メディアエージェンシー、カラ(Carat)の顧客管理担当ディレクターであるマシュー・ランデマン氏は語る。
代理店の姿勢の変化
とはいえ、顧客獲得単価を抑えるよう圧力が掛かっているエージェンシーは、プログラマティックギャランティードで通常提供されるより低いCPMでデータを重ね合わせる方法を常に探すだろう、とあるパブリッシャーはいう。
「短期的には利益を得られるだろう。ただし、エージェンシーのトレーディングデスクには好まれない。エージェンシーはプログラマティックギャランティードを真のプログラマティックとは見なしていない。それでも、まだ神経質になっている広告主がいるので、サードパーティデータのターゲティングを利用し続けるほかの方法をエージェンシーが見つけるまでは、プログラマティックギャランティードから利益を得ることになる」と、あるパブリッシャー幹部は述べている。
とはいうものの、GDPRによってパブリッシャーとエージェンシー間の動きがさらに良い方向に変わりつつあると、確信しているパブリッシャーもいる。
「エージェンシーの姿勢が変化してきた。特にプログラマティックでは、以前よりも対話がかなりオープンになっている。以前なら、CPMレートに言及したとたんに無視された。購入時に避けられるだけだった」。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)