テレビ の未来は、大量の「リアリティ番組」とともにある

リアリティ番組のほうがビジネスになる――それがテレビ業界の現状(リアリティ)だ。

リアリティショーをはじめとする台本のない番組はかつて、Netflixのコンテンツチーフ、テッド・サランドス氏から「使い捨て」とまで言われた。だが、それがいまやテレビネットワークはもとより、Netflixといったストリーマー勢にとっても欠かせない存在となっている。というのも、テレビ視聴の形が従来型からストリーミングに移行し、新たなストリーミングサービス勢が次々に参入してくるなか、彼らのビジネスは程度の差こそあれ、不確実な状況に直面させられているからだ。

「最高の宣伝にはならないが、最強に近いビジネスになる」と、あるテレビネットワーク幹部は語る。台本のある番組の場合、1本あたりの制作費が数百万ドル(数億円)に上りがちだが、台本のないシリーズものは一般に、1本50万ドル(約5000万円)以下に抑えられるため、放送局/配信側にはより大きな利益が見込める。

ドラマシリーズは大きな賭け

『ザ・クラウン(The Crown)』や『フリーバッグ(Fleabag)』といった質の高いドラマシリーズは確かに、批評家筋からの評価と視聴者の関心を集めうる。だが同時に、こうした番組は危険な賭けでもある。2019年、テレビおよびストリーミングで流れたドラマシリーズが532本もあった事実 ――2009年の210本から急増した――を見てもわかるとおり、賭けに勝利する確率は下がり続けている。

台本のない番組は一方、賭けに勝つ確率は同じく低いかもしれないが、制作費が少なければ、賭け金も少なくて済む。結果、テレビネットワークとストリーマーはこうした番組の数、つまり賭けの数を比較的安価で増やし、視聴者の興味を引く確率を上げることができる。そして、どれがひとつでも成功すれば、今度はその続編やスピンオフを手早く、かつ低予算で制作できるのだ。

「選択肢は2つ――1年に3本、豪華なドラマシリーズをやるのか、あるいは同じ予算で、リアリティものを30本やるのか。後者の場合、大半はコケるが、1本でも当たれば、視聴者が戻ってくる確率はより高くなる」と、前出のテレビネットワーク幹部は語る。

ストライキや広告需要も後押し

有料テレビ契約をキャンセルし、ストリーミングサービスに移行する人が増えるなか、テレビネットワークは既存の視聴者を維持し、ビジネスの最低ラインを死守するため、無台本番組にますます傾倒しつつある。たとえばディスカヴァリー(Discovery)は、ディズニー(Disney)やワーナーメディア(WarnerMedia)といった潤沢な資金力を有するライバルと渡り合うため、無台本番組を頼みの綱にしている。一方、ワーナーメディアもまた、ケーブルテレビネットワークの枠をさらに多くの無台本番組で埋める動きを見せている。

「ご承知のとおり、一般向けエンターテイメントコンテンツは(中略)成績を残せていない」と、AT&T COO兼ワーナーメディアCEOジョン・スタンキー氏は1月の四半期アーニングコール中、台本のある従来型の番組について語った。業界紙ハリウッド・レポーター(Hollywood Reporter)によれば、2019年度、ケーブルテレビで高視聴率を獲得したオリジナルシリーズ25本の内、台本ありの番組は1/4に満たなかった。 さらに、脚本家/放送作家のストライキの決行が予想されており、これが無台本ものへの傾倒に拍車を掛ける可能性もある。

台本なしの番組は、テレビネットワーク勢の目にとりわけ魅力的に映る可能性がある。近年、業績の見通しが暗くなるなか、制作費の削減がますます重視されているからだ。リニア型(いわゆる地上波)からストリーミングへの移行により、ふたつの収益源からなるテレビ業界の伝統的なビジネスモデルが存続の危機に晒されている――ふたつの収益源とは有料テレビサブスクライバー数に応じてプロバイダーから徴収する料金と、スポンサーから得る各番組へのCM放映料金だ。テレビネットワークは近年、サブスクライバー1人当たりの料金とCM料金のいずれの引き上げも図り、一応の成功を収めてはいる。だが、有料テレビプロバイダー勢がネットワークを見限りはじめ、さらには広告主も、減少を続ける従来型のテレビ視聴者にリーチするためにより高額の料金を要求されることに不満を表明しており、この構図は大きな山場を迎えようとしている。リサーチ会社モフェットナサンソン(MoffettNathanson)によれば、2019年だけで600万人が従来の有料テレビサブスクリプション契約をキャンセルした。

新進パブリッシャーにとっては好機

先行きに対する不安はテレビネットワーク勢を制作費削減へと向かわせており、その影響は制作会社に波及している。「広告主と[有料テレビ]配給業者からのプレッシャーはチャンネル勢を圧迫し、それを受けて、チャンネル勢は現場のプロデューサー勢を圧迫している」と、前出のテレビネットワーク幹部は語る。

台本のない番組のプロデューサーはこの圧力の高まりを実感している。ネットワーク幹部が既存の人気シリーズに口出しをする頻度が高まっているばかりか、「台本なしの番組を扱う従来型のバイヤー勢も多くが、同じ番組をより低予算で作れと、制作会社に強要している」と、ある業界幹部は語る。

無台本番組の人気は一方、制作側、とりわけ新顔には好機となっている。低予算で作れる無台本ものは、いわば手の届く果実であり、スタジオビジネスの成長を財務面の不安に邪魔されたくない新進パブリッシャーにとっては、堅実な基盤となる。

あるパブリッシャー幹部によれば、無台本のシリーズものは現在、自社の編成の3/4近くを占めているという。今後はドラマなど、台本のある番組の制作本数を増やしていくとしており、この割合は変わっていくだろう。だが目下のところ、同社のエンターテイメント部門は確実な予算達成が欠かせない状況に置かれており、無台本シリーズのほうがその目的に適う可能性が高い。「台本なしのほうが採算性を計算しやすいし、我々のビジネスにとっては都合が良い」と、先のパブリッシャー幹部は語る。

Tim Peterson(原文 / 訳:SI Japan)