2021年9月、ニールセン(Nielsen)がMRCの認定を取り消されたことを受け、米国のテレビ広告業界の企業や団体は新たな測定環境の構築を試みている。あまりに多くの関係者が独自のプレイブックを作成しているように見えるが、どうすれば全員が同じページを読むことができるのだろうか?
2021年9月、ニールセン(Nielsen)がMRCの認定を取り消されたことを受け、米国のテレビ広告業界の企業や団体は新たな測定環境の構築を試みている。
NBCユニバーサル(NBCUniversal)、バイアコムCBS(ViacomCBS)、ワーナーメディア(WarnerMedia)などのテレビネットワークグループは測定プロバイダーを評価し、広告主のために新たな選択肢を用意。電通、オムニコム・メディアグループ(Omnicom Media Group)などのエージェンシーも同様だ。そして、広告主を代表する業界団体の全米広告主協会(Association of National Advertisers:以下、ANA)、テレビネットワークを代表するVABなどが仲介者として、独自の測定イニシアチブ、タスクフォースなどを結成している。
すべてにおいて非常に混乱している。ここで再び疑問が生じる。あまりに多くの関係者が独自のプレイブックを作成しているように見えるが、どうすれば全員が同じページを読むことができるのだろうか? 答えは、業界幹部たちとの最近の会話から判断すると、さまざまな組織が独自のプレイブックをつくっているかもしれないが、それらはすべて、ANAによって、クロスメディア測定の選集にまとめられるということだ。
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主なポイント:
- テレビネットワーク、エージェンシー、業界団体は皆、新しい測定システムの構築に取り組んでいる。
- これらのさまざまな取り組みは相反するように見えるが、むしろ互いを補うことを目的としている。
- 最終的には、メディア・レーティング・カウンシル(Media Rating Council:以下、MRC)が状況整理を担うことになるかもしれない。
混乱した測定
しかし、実際のところ、テレビの測定を巡る状況はどう再編されるのだろうか? つまり、次々と生まれている取り組みが互いの邪魔をせず、前進しようとする業界をつまずかせないためにはどうすればよいのだろうか?
ANAのグループエグゼクティブバイスプレジデント、ビル・タッカー氏は「ANAはクロスメディア測定を明確に推進している」と話す。タッカー氏は独自のクロスメディア測定(Cross-Media Measurement)プログラムを含む測定の責任者だ。「我々の使命は、すべての広告露出を完全に測定できる測定ソリューションを生み出すことだ。つまり、クロスメディアのリーチ、フリクエンシー指標のことであり、そこにはコンテンツの品質も組み込まれている。それだけだ」。
それだけにしては、ずいぶん多い。しかし、テレビネットワーク、エージェンシー、測定プロバイダーの幹部から話を聞いた限り、狙うところはもう少しシンプルなようだ。筆者が理解した今後の展開を紹介しよう。
複雑化する測定項目とプロバイダー
テレビネットワークは数十の測定プロバイダーを評価し、どのプロバイダーにどのタイプの測定を任せるかを決定する。たとえば、リーチとフリクエンシーの測定にはニールセンとTVスクエアード(TVSquared)、マルチタッチアトリビューションの測定にはコムスコア(Comscore)とビデオアンプ(VideoAmp)といった具合だ。広告主とエージェンシーも同じことを行う。そして、それぞれが承認された測定プロバイダーのリストを持つことになり、広告購入の交渉については個別に行われるだろう。
もしそうなれば、業界団体にとっては、とくに広告を見た人数と頻度を測定する際、さまざまな測定プロバイダーを調整することが課題となる。タッカー氏によれば、VABがオープンAP(OpenAP)とともに、テレビとストリーミングのデータを調整する技術的手段を構築し、それがANAのクロスメディア測定システムに接続される予定だという。オープンAPはテレビネットワークのFOX、NBCユニバーサル、バイアコムCBSが共同所有する技術プラットフォームで、近い将来、ディスカバリー(Discovery)も参加する。
オムニコム・メディアグループのアドバンストTVアクティベーション担当マネージングディレクター、ケリー・メッツ氏は「ひと言で言えば、受益者はVABとANAだ。これらのタスクフォースは(広告バイヤーとセラーが測定プロバイダーを評価し、どのプロバイダーに任せるかについて合意するという)作業の恩恵を受けることになる」と説明する。
裁量を握るのはMRCか
しかし、はっきりさせておこう。単純に聞こえるかもしれないが、実際の作業ははるかに複雑なものになる可能性が高い。各社がリーチやフリクエンシーの測定に使っている世帯の定義をいかに一致させるかといった課題があるためだ。電通グループのカラ(Carat)で米国法人のCEOを務めるマイク・ロー氏は「何をインプレッションとするかについても定義が必要だ」と話す。
現在の状況の火付け役となった組織がある。MRCだ。VABとANAが標準化のまとめ役だとしたら、MRCは業界幹部から最終的な審判と見なされており、その認定によって、測定の新しいプレイブックの全ページが同じ言葉で書かれていることが保証される。
マグナ(Magna)のエグゼクティブバイスプレジデント兼マネージングディレクターとしてオーディエンスインテリジェンス、戦略を担当するブライアン・ヒューズ氏は次のように述べている。「この混乱を巻き起こしたのがMRCの認定問題だということは指摘しておくべきだろう。そして、公平を期すために言っておくと、ニールセンはこれまでに認定された唯一のテレビ測定プロバイダーなのだ」。
[原文:Future of TV Briefing: How TV’s different measurement undertakings fit together]
TIM PETERSON(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:小玉明依)