アメリカにおけるテレビ広告の今年のアップフロント(先行販売)市場は、過去に類を見ないものになることが決定的なようだ。少し前からバイヤーとセラーのあいだで予備交渉がすでに始まっているが、本番を前にした両陣営の頭のなかには、いくつかの疑問が飛び交っている。
アメリカにおけるテレビ広告の今年のアップフロント(先行販売)市場は、過去に類を見ないものになることが決定的なようだ。前年と前々年の同市場にも言われてきたことだが、この形容は今年にも当てはまる。
広告主とエージェンシーのタッグチームがTVネットワークオーナーやストリーミング専門セラーを相手に繰り広げた直近の交渉では、リニア(従来型)TVオーディエンスの減少とストリーミング視聴者の台頭といった話題が依然として中心を占めている。「リニアTV広告の価格は、いったいどこまで上がるのか?」「ストリーミング広告のレートは、いつになったら下がるのか?」「プログラマティックが支持を得るのはいつなのか?」といった疑問の数々も、依然として繰り返し浮上している。そして、測定をめぐる大変革というトピック。これが話題になっているのは、今年のアップフロントだけだ(少なくとも来年までのところは)。
少し前からバイヤーとセラーのあいだで予備交渉がすでに始まっているが、本番を前にした両陣営の頭のなかには、いくつかの疑問が飛び交っている。
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採用されるのは、どの測定プロバイダーなのか?
今年のアップフロント交渉で話し合われるトップの話題は、2位に大差をつけて「測定」だ。「最大の話題は測定だ」と、あるエージェンシーの幹部は語る。
「この2週間の大半を、キャンペーン測定の代替手段についての話し合いに費やした。今年のアップフロントのトピックといえば、これだ」と、別のエージェンシーの幹部は語る。
測定をめぐる主な疑問は、「広告主やTVネットワークオーナーの各社は、ニールセン(Nielsen)の『代替通貨』として、どの測定プロバイダーを採用するのか?」ということだ。バイヤーもセラーも、今後もニールセンが主要通貨であることに変わりはないが、将来のアップフロント契約のためのベースラインを整備するためにも、ニールセン以外のプロバイダーを「影の指標」として設定することになるだろう。
だが、一部の広告主は、その代替通貨を主要通貨として採用する道を選ぶ可能性もある。アップフロント市場の新参者である彼らは、たとえばインプレッションの価値がまだ定まっておらず、今後数年のうちに評価される可能性がある場合において、これら代替通貨に基づいてレートを設定することによって、ある程度アップフロント価格を保証するための手段とみなすことができるからだ。
「TV展開が初めての暗号通貨やD2C(Direct-to-Consumer)ブランドにおいては、クライアントを最前線に押し出して、新しい通貨の上に彼らの基盤を確立する良い機会だ」と、3人目のエージェンシー幹部は語る。
「成果保証」が再び交渉のテーブルに?
コロナ禍以前、広告主やTVネットワークは、売上における一定のパーセンテージアップなどの、特定の成果をキャンペーンに保証する項目をアップフロント契約に盛り込むようになっていた。その後、パンデミックが発生したことで、誰も保証を一切しようとしなくなった。
そしていま、成果保証が交渉のテーブルに再び乗せられるようになりつつある。完全にとはいかないまでも。エージェンシーの幹部らは一部のクライアントに対する成果保証を求める方針を示している。それに対して、TVネットワークの幹部らもまた、この要求を黙従するつもりであると語っている。ただし、現時点でわかっているのは、これがすべてだ。
「我々の姿勢は(成果保証に対して)これ以上にないほどオープンだ」と、あるTVネットワークの幹部は語る。しかし、コロナ禍により、こうした保証の算出に使われる、過去のビジネス上の数字には巨大な「アスタリスク」がつけられるようになった。「そのためのベンチマークは厄介なものになりつつある。ウェブトラフィックであれ、フットトラフィックであれ、何かほかの指標であれ、何と比較すべきなのか私には見当がつかない」。
「フレキシビリティ」は単なる一時的な流行だったのか?
2年前、アップフロント交渉に関連する大流行語は「フレキシビリティ」だった。当時の広告主たちは、コロナ禍が自社事業に及ぼす影響への対処に追われ、年間契約の代替性を高められる選択肢を模索していた。それから2年、フレキシビリティはその優先順位をいつ下げられてもおかしくない状態になってしまったようだ。
猛威をふるうオミクロン株により、一部の広告主は現在のアップフロント契約の一部を延期または解除しなければならなくなっているが、「今年に入り、いまのところ、解除のオプションを行使する広告主の数はそこまで増えていない。それなりに安定した状態がずっと続いている」と、前出のTVネットワーク幹部は語った。
[原文:Future of TV Briefing: 3 questions heading into this year’s TV upfront negotiations]
TIM PETERSON(翻訳:ガリレオ、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU