Forbesはここ数年、さまざまなカテゴリーのプロを支援するエコシステムの構築に取り組んできた。その目的は、多様なシステムを通じたファーストパーティデータの収集にある。努力は実を結び、ファーストパーティデータを取扱う広告主向けプラットフォーム「ForbesOne」の利用は加速している。
パブリッシャー間の競争が激化するなかで、Forbes(フォーブス)はここ数年、さまざまなカテゴリーのプロフェッショナルを支援する魅力的なエコシステムの構築に取り組んできた。その目的は、この多様なエコシステムを通じたファーストパーティデータの収集にある。
2020年は、Forbesにはそれほど目立った動きはなかった。だが2021年に入り、ファーストパーティデータを取扱う広告主向けプラットフォーム「ForbesOne(フォーブスワン)」の利用が加速している。
ForbesOneの初期バージョンでは、ユーザーの行動をもとに22種類にカテゴリー分類をおこなっていた。しかし同プラットフォームは現在70のデータセットを統合し、Forbesの全商品におけるコンテンツや個人ユーザー、顧客企業の状況をほぼリアルタイムで把握できるようになっている。
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単なるデータ収集ツールではない
ForbesOneの狙いのひとつは、サードパーティCookie提供が終わろうとしているいま、ファーストパーティデータの利用による収益確保にある。だが、それだけにはとどまらない。ForbesOneがもたらす可視性や分析機能を社内で活用することをも想定している。たとえば、「バーチャルイベントの前後にForbesのコンテンツがどう使われていたか」をプロダクトマネージャーが確認することで、それ以降のイベント内容を再調整したり、コンテンツの利用レポートをもとに編集者が報道内容や配信戦略を立てる合理的な手法への切り換えが可能になる。
同社のCRO、ジェシカ・シブレー氏は「ForbesOneは、既存の商品に取って代わるものではない。既存の商品をさらに改善していくためのものだ」と語る。
競合他社製のファーストパーティデータプラットフォームがそうであるように、ForbesOneもサイトで閲覧されているコンテンツのカテゴリーや会員向けニュースレター、バーチャルイベント、ショッピングコンテンツ関連のデータを複合的に判断材料としている。
また、デモグラフィックデータにはForbesの読者から直接提供された役職名などといったゼロパーティデータも使用されている。同社は最近、商品ラインナップを増やしており、これもForbesOneのリーチ拡大につながっている。
「コストはかかるが価値も大きい」
Forbesのサイトは、2020年10月からペイウォール方式を採用した。また、12月には富裕層に向けた不動産マーケットプレイスの「Forbes グローバル・プロパティ(Forbes Global Properties)」の立ち上げを発表。さらに2021年1月には、ニュースレターの執筆者を増やすためのプログラムを開始している(同社はすでに30の有料ニュースレターを展開中)。
一方で、興味のある広告が配信されているかを直接読者に尋ねるといった地道な取り組みもおこなっている。Forbesはこういった何十というデータセットを統合し、広告主にさまざまなカテゴリーを提供している。そのカテゴリーには専門性の高いものに加えて、「30歳以下」や「中小企業のオーナー」、「豪華旅行」、「金融専門」といったForbesの既存のフランチャイズやコミュニティがある。広報担当者も「ログインやサブスクリプション、メール、類似モデリングなどによりオーディエンスの4割にリーチできる」と自信を覗かせる。
データ戦略バイスプレジデントのアダム・ウォリット氏は「こういったカテゴリーへのリーチは、確かにコストがかかる。しかし、そのコストが生み出してくれる価値のほうがはるかに大きい。サードパーティCookieと比べても競争力がある」と語る(具体なコスト額については非公開)。
また、同社デジタル戦略および運用担当シニアバイスプレジデント、アリソン・ウィリアムズ氏は「コアとなっているユーザーの把握と、実際にそのコアユーザーが、このプラットフォームをどんな目的で何のシステムに組み込んで利用しているのかを知りたい」と語る。
これらのプラットフォームの統合も、営業担当者への指導も、基本的には時間がかかる。Forbesは2020年夏に、下半期に向けた営業戦略会議でForbesOneを「最優先販売商品」に定め、以降毎週ミーティングを重ねている。ミーティングには、プリセールスやサービス(保守)担当チームに加え、ウォリット氏をはじめとする要職も参加している。また、開発や編集などほかの部門のスタッフも、定期的にForbesOneや業界における変化について詳細な分析を行っている。現時点で、ForbesOneの契約更新率は40%となっている。
いずれはオープンデータに?
2020年の時点でもある程度の採用件数はあったが、2021年に入ってからが同製品の本格的なスタートとなった。ユーザーからの力強い手応えを得ている。シブレー氏は「ベースとしては大きなものではないが、今年に入ってから、寄せられる関心は倍増している」と語る。ただしボックス・メディア(Vox Media)のプラットフォーム「フォルテ(Forte)」の顧客数には及ばないと、米DIGIDAYのインタビューに対し同氏は答えている。フォルテは、2020年に100社以上の採用実績を残している。
独立系エージェンシーのマーカス・トーマス(Marcus Thomas)のメディア&分析パートナーを務めるラファエル・リビラ氏は、同社が(フォーブズワンの)最適化を続けていることが、やがてリピーターの確保につながると語る。
同氏はForbesが「オープンな環境からデータを抽出して、ファーストパーティデータを独占的に活用しようと、今後もできる限りのことを続けていくはずだ」と指摘しつつ、やがては多くのパブリッシャーがそれを諦め、逆にこれまでに整えたカテゴリーデータをなんらかの形でオープンデータとして開放するのではないかと予測する。「ファーストパーティデータの独占的な活用を続けられる企業は、限られてくるはずだ」。
[原文:After 18 months in the oven, Forbes’s first party data play hits the market]
MAX WILLENS(翻訳:SI Japan、編集:分島 翔平)
Illustrated by IVY LIU