米フォーブス(Forbes)は12月1日、今年で10回目となる「30 Under 30(フォーブス が選ぶ30歳未満の30人)」のリストを公開。2011年に産声を上げてから10年弱、北米における注目の若きアントレプレナー(起業家)を選出するこのシリーズ企画は、いまやフォーブス最大の収益源のひとつに成長した。
フォーブス(Forbes)は12月1日、今年で10回目となる「30 Under 30(フォーブスが選ぶ30歳未満の30人)」のリストを公開。2011年に産声を上げてから10年弱、各業界で注目される北米の若きアントレプレナー(起業家)を選出するこのシリーズ企画は、いまやフォーブス最大の収益源のひとつにまで成長した。
30 Under 30はもともと、同誌のWebサイトに掲載する特集記事に過ぎなかったが、現在は年1回のリストの発表に留まらず、随時更新される独自のプラットフォームや、定期的に開催されるサミット、そして動画およびソーシャルメディアプログラムを用意している。さらに今年はじめて、これまでの30 Under 30受賞者が、互いに連絡を取り合えるような、オンライン・ディレクトリーが登場した。
新型コロナウィルスの世界的大流行により、対面でのカンファレンス開催が軒並み中止となった今年、30 Under 30は1カ月にわたるバーチャルハッカソンも開催。受賞者および応募者が協力し、ミシガン州デトロイトのコミュニティが抱える諸問題の解決にあたった。これは、30 Under 30のチームが独自に選んだ都市と数年間、緊密に連携し、現状の改善を目指していくというものだ。30 Under 30のチームが、デトロイトに注目しはじめたのは2019年ころ。チーフコンテンツオフィサーのランドール・レーン氏によれば、デトロイトを勧めたのは、米ネット大手AOLの創業者スティーヴ・ケース氏だという。
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「計り知れない価値を加えてくれた」
また、30 Under 30は、フォーブスがクロスプラットフォームキャンペーン広告を高値で販売するための、有効な手段でもある。実際いまやその注目度は、世界の長者番付を発表する「Forbes 400」や、世界でもっとも影響力のある女性100人を選出する「The World’s Most Powerful Women」といった、長い歴史を誇る同誌の人気シリーズ企画のそれに匹敵するという。
「わずか10年で、30 Under 30は弊社に計り知れない価値を加えてくれた」と、フォーブスのCEO、マイク・フェダール氏は語る。だが、30 Under 30関連の具体的な収益額について、フェダール氏は開示しなかった。
30 Under 30に絡めた各種キャンペーンのスポンサー契約には、複数年にわたるものもあると、チーフレベニューオフィサーのジェシカ・シブリー氏はいう。たとえば、ウィスキーブランドのマッカランと30 Under 30との契約は7年目を迎えている。オンラインローンサービスのロケット・モーゲージ(Rocket Mortgage)も、前述のデトロイトにおける30 Under 30サミットと3年契約を結んでおり、今年はその2年目となる。
30 Under 30のセールスポイント
シブリー氏いわく、30 Under 30の高い人気を支えるセールスポイントは、現在までにリストに載った1万人近い、全員40歳未満のアントレプレナーからなるコミュニティなのだという。
このコミュニティは、オーディエンスの平均年齢が若いだけでなく、人種的多様性がより豊かで、さらに同誌の他企画のフォロワーや一般の読者層よりも、女性比率が高いとレーン氏はいう。
今年の30 Under 30のリストには、Food & Drink(食品&飲料)、Finance(金融)、Celebrities(著名人)、Education(教育)、Sports(スポーツ)など20の分野から各30人、計600人が名を連ねた。なお、受賞者のうち半数近くは非白人であり、40%を女性が占めているという。選考については、まず編集チームが候補者をある程度の人数まで絞り込み、続いて最終候補を投票で選び、その名簿を各分野の審査員に渡す。たとえば、今年の音楽部門の審査員は、人気シンガーのテイラー・スイフト氏が審査した。
企画そのものの魅力だけではない
「ほかの『成熟したやり方』では、30 Under 30のオーディエンス層にはリーチしづらい」と、メディアコンサルタントのグレン・マニュエル氏は指摘する。「だからこそ、フォーブスの代表的な広告主らは」これまでと同様のメディアバイイング方式で、「より若く魅力的なオーディエンスにリーチできる、この機会に飛びつくことになる」。
さらに、広告主を惹きつけているのは、企画そのものの魅力だけではないと、シブリー氏は指摘する。受賞者に関心を寄せる大勢のソーシャルメディアフォロワーや、身近にいる人々がリストに載ったことを知り、フォーブスというブランドに親近感を抱いたオーディエンスも、企業/ブランドにとっての大きな魅力なのだという。
また、シブリー氏によると30 Under 30は、このシリーズ企画がなければ、フォーブスに広告を出さなかったかもしれない、多くのブランドを連れて来てくれたと語る。一例を挙げると、フォーブスはマイクロソフト(Microsoft)本体と仕事をしたことはあったが、同社のブランド、サーフェス(Surface)が同誌に広告を出してくれるようになったのは、間違いなく30 Under 30のおかげだという。フットウェアブランドのコールハーン(COLE HAAN)もしかりで、30 Under 30がなければ、同誌への広告出稿はなかったのではないかと、同氏は見ている。
通年で出稿するスポンサーも
フォーブスのオーディエンス規模が一番大きいのは、同誌のWebサイトとソーシャルチャンネルだ(米メディア監査協会[Alliance for Audited Media]によれば、6月30日現在、同月刊誌の読者は約65万人。デジタル市場分析会社コムスコア[Comscore]によれば、10月のWebサイトのユニーク訪問者は7500万人だったという)。
「1回のイベントでは限られたスペースしかなく、1号きりの雑誌企画ではスペースが限られている。ただ、30 Under 30コンテンツならば、1年を通して展開していける」と、シブリー氏は語る。フォーブスのWebメディアやソーシャルチャネルだけでなく、同社が抱えるほかのメディアや30 Under 30以外のイベントを含めての話だ。「いまや、印刷広告を買うだけで満足する人はいない。たった数日間のイベントに出るだけで満足する人もいない」。
年間を通したスポンサー契約の一例として、シブリー氏は2019年のデルタ航空(Delta Airlines)とのパートナーシップを挙げる。デルタを支援するべく、同誌は過去および同年の30 Under 30受賞者18名で諮問委員会を結成。さまざまな分野のアントレプレナーで構成されるこの委員会に、「レッドアイフライト(深夜便)」の顧客体験を改善させたという。しかし、この提携による収益額について、シブリー氏は開示していない。
いまやメインストリームに
オーディエンスをマネタイズをするには、記事の内容や視点で読者を引き寄せる、魅力的なコミュニティを形成するだけでは不十分だ。フォーブスのように、シリーズ企画を常にアクティブにさせておくことで、広告主を惹きつけておく必要がある。ローカルジャーナリズムを支援するレンフェスト研究所(The Lenfest Institute) のチーフオペレーティングオフィサー、ケン・ハーツ氏は、「その点を肝に銘じておかなければならない」と語る。
そして、広告主に継続的に出稿してもらうには、そのコミュニティにはそれに相応しい規模が欠かせないと、ハーツ氏は指摘する。フォーブスの場合、「30 Under 30」という名称から、計30人しかいないと思われるかもしれないが、実際には数百、いや数千の受賞者が存在する。
前出のレーン氏は、以下のように述べる。「若手アントレプレナーのアワードという考えは、当初は珍奇でしかなかったが、いまやメインストリームへと成長した」。
[原文:How Forbes’ 30 Under 30 franchise has become a top selling point for the brand]
KAYLEIGH BARBER(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)