- 広告費は増加しているものの、広告主はROIの高い証明をパブリッシャーに求めている。質の高いインベントリを持つサイトでは、ビューアビリティやクリック率などよりも「アテンション指標」の導入と標準化が求められている。
- あるパブリッシャーはイベントにおいて新しいKPIの要求が見られた。現在のスポンサーはブランドリフトよりも直接的な売上やオンラインへの誘導を求めており、この傾向は今後も続くと予想される。
- サードパーティCookieの廃止に伴い、パブリッシャーは代替手段を探求。広告主からのROIの要求に応えるため、新しい指標やファーストパーティデータの活用を模索している。
米国フロリダ州キービスケーンで開催された2023年のDIGIDAY PUBLISHING SUMMIT(以下、DPS)でもっとも重要な収穫のひとつは、市場に広告費が再び流れ込み始める一方で、広告主がその投資に見合うだけのリターンの証明をパブリッシャーにこれまで以上に求めている、という事実だった。
9月18日から20日に開催されたDPSのステージセッションやパブリッシャータウンホールで、メディア幹部たちはKPIが変わってきていることを語った。特に、MFA(made-for-advertising:広告のためにつくられた)サイトではなく、良質なインベントリーを持つ企業では明らかな変化が見られるようだ。
Google ChromeのサードパーティCookie廃止が迫るなか、パブリッシャーはそれに代わるものを探している。別の識別子でもファーストパーティデータでも、Cookie終焉後もプログラマティックキャンペーンの効果を同様に証明してくれるものであれば何でもいい。D2C広告サイドからは、コンデナスト(Condé Nast)、ブラビティ(Blavity Inc)、アパートメントセラピーメディア(Apartment Therapy Media)の幹部たちが、「貴重な広告費獲得を競うなかで広告主にもっと高いROIの保証を求められる」という発言が相次いだ。
以下に、変わりゆくKPIと広告主にROIを証明しなければならないことついて、パブリッシャーが語った内容の一部を紹介する。
アテンション指標を増やしてほしい
コンデナストのグローバル最高ビジネス責任者のデボラ・ブレット氏は、広告主に売り込みをかける際に使用する「ビューアビリティ」「クリック率」「インプレッション数」などの最低限の検証指標の先へと進む用意ができている、と述べた。
これらの代わりに、「ホバー率」「滞在時間」「スクロールのパターン」などのアテンション指標を使用し、コンデナストが保有するプロパティで購入するキャンペーンがオーディエンスの関心を得る効果だけでなく、プレミアム料金に見合った価値があることを証明したいという。
「人類の常として、稼ぐ仕組みができればその仕組みを悪用する方法を必ず誰かが考え出す。ここ数年のMFAサイトの増加はそういうことだ。だが、今はもっと有意義な指標を作り出すために懸命に取り組んでいるところで、クリック屋など悪用に長けているのか、実際にプレミアムなのかの違いを立証しようとしている」とブレット氏は話した。
パブリッシャーがこのような指標を導入することはひとつのスタート地点とはなり得るが、ブレット氏によれば、それがどのようにROIの証明に役立つのかをわかってもらうには広告主やエージェンシーにかなりの啓蒙活動を行っていかなければならなく、パブリッシャー各社が同じアテンション指標を採用して測定を行い、ある程度の標準化を進めるというパブリッシャー間の統一も必要になるという。
「業界がMFAのようなものから離れていっているのはよいことだが、このようにあまり合法的とはいえない指標(ビューアビリティなど)がデジタルメディアの取引でこれだけ長く使われている大きな理由の一部は、それが簡単だったからだ」とブレット氏は話す。「アテンション指標を使用した取引が簡単にできるようにしなければうまくいかないだろうし、そうなれば計測が適切に行えた場合にデジタルなエコシステムで実現できる価値を証明する機会をまるまる失ってしまうことになる」。
有意義なオーディエンスエンゲージメントの証明
多様なオーディエンスにリーチするブランドを擁する黒人所有のメディア企業として、ブラビティは[続きを読む]
- 広告費は増加しているものの、広告主はROIの高い証明をパブリッシャーに求めている。質の高いインベントリを持つサイトでは、ビューアビリティやクリック率などよりも「アテンション指標」の導入と標準化が求められている。
- あるパブリッシャーはイベントにおいて新しいKPIの要求が見られた。現在のスポンサーはブランドリフトよりも直接的な売上やオンラインへの誘導を求めており、この傾向は今後も続くと予想される。
- サードパーティCookieの廃止に伴い、パブリッシャーは代替手段を探求。広告主からのROIの要求に応えるため、新しい指標やファーストパーティデータの活用を模索している。
米国フロリダ州キービスケーンで開催された2023年のDIGIDAY PUBLISHING SUMMIT(以下、DPS)でもっとも重要な収穫のひとつは、市場に広告費が再び流れ込み始める一方で、広告主がその投資に見合うだけのリターンの証明をパブリッシャーにこれまで以上に求めている、という事実だった。
9月18日から20日に開催されたDPSのステージセッションやパブリッシャータウンホールで、メディア幹部たちはKPIが変わってきていることを語った。特に、MFA(made-for-advertising:広告のためにつくられた)サイトではなく、良質なインベントリーを持つ企業では明らかな変化が見られるようだ。
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Google ChromeのサードパーティCookie廃止が迫るなか、パブリッシャーはそれに代わるものを探している。別の識別子でもファーストパーティデータでも、Cookie終焉後もプログラマティックキャンペーンの効果を同様に証明してくれるものであれば何でもいい。D2C広告サイドからは、コンデナスト(Condé Nast)、ブラビティ(Blavity Inc)、アパートメントセラピーメディア(Apartment Therapy Media)の幹部たちが、「貴重な広告費獲得を競うなかで広告主にもっと高いROIの保証を求められる」という発言が相次いだ。
以下に、変わりゆくKPIと広告主にROIを証明しなければならないことついて、パブリッシャーが語った内容の一部を紹介する。
アテンション指標を増やしてほしい
コンデナストのグローバル最高ビジネス責任者のデボラ・ブレット氏は、広告主に売り込みをかける際に使用する「ビューアビリティ」「クリック率」「インプレッション数」などの最低限の検証指標の先へと進む用意ができている、と述べた。
これらの代わりに、「ホバー率」「滞在時間」「スクロールのパターン」などのアテンション指標を使用し、コンデナストが保有するプロパティで購入するキャンペーンがオーディエンスの関心を得る効果だけでなく、プレミアム料金に見合った価値があることを証明したいという。
「人類の常として、稼ぐ仕組みができればその仕組みを悪用する方法を必ず誰かが考え出す。ここ数年のMFAサイトの増加はそういうことだ。だが、今はもっと有意義な指標を作り出すために懸命に取り組んでいるところで、クリック屋など悪用に長けているのか、実際にプレミアムなのかの違いを立証しようとしている」とブレット氏は話した。
パブリッシャーがこのような指標を導入することはひとつのスタート地点とはなり得るが、ブレット氏によれば、それがどのようにROIの証明に役立つのかをわかってもらうには広告主やエージェンシーにかなりの啓蒙活動を行っていかなければならなく、パブリッシャー各社が同じアテンション指標を採用して測定を行い、ある程度の標準化を進めるというパブリッシャー間の統一も必要になるという。
「業界がMFAのようなものから離れていっているのはよいことだが、このようにあまり合法的とはいえない指標(ビューアビリティなど)がデジタルメディアの取引でこれだけ長く使われている大きな理由の一部は、それが簡単だったからだ」とブレット氏は話す。「アテンション指標を使用した取引が簡単にできるようにしなければうまくいかないだろうし、そうなれば計測が適切に行えた場合にデジタルなエコシステムで実現できる価値を証明する機会をまるまる失ってしまうことになる」。
有意義なオーディエンスエンゲージメントの証明
多様なオーディエンスにリーチするブランドを擁する黒人所有のメディア企業として、ブラビティはDE&Iイニシアチブに予算の一部を割り当てる広告主を相手にすることも多い。CROのマイク・ハジス氏はDPSのオンステージ・セッションで、キャンペーンのROIがもっとも大きくなるのは、その割り当てを超えてくる広告主だ、と語った。
たとえばマクドナルド(McDonald’s)は、ブラビティと複数年のディスプレイ広告契約を結んでいる。「黒人歴史月間」や特にDE&Iに焦点を絞ったキャンペーンにとどまることなく、全体的な全米キャンペーンの一般市場デジタル戦略にブラビティを含めているのだ。
ハジス氏は「効果はあった」と言い、「マクドナルドではそれは店頭売上にもエンゲージメントにも現れている。その(広告費に対するリターンという)面では、あらゆる指標に効果が現れている」と述べた。ただし、具体的な数値は明かさなかった。
ハジス氏のチームは、四半期ごとのビジネスレビューでマクドナルドの売上データとブラビティのファーストパーティ、CTR、エンゲージメントの各データを組み合わせて、複数年契約がマクドナルドにリターンを生み出していることを常に確認しているそうだ。
イベントスポンサーなどの大型契約の確保
DPSのステージセッションで、アパートメントセラピー最大のイベント『Small/Cool(自宅の一室を対象としたデザインコンテスト)』について語った同社プレジデントのリヴァ・シロップ氏は、収益確保、特にイベントスポンサーの確保に関しては特別に難しい年だった、と話した。
その原因の一部は、高額なイベントキャンペーンに資金を投じる意思のある広告主が、これまでの年のスポンサーたちと異なるKPIを使用していたからだ。シロップ氏のチームはその点に気付き、スポンサー候補のニーズに応える調整をイベントスポンサー募集に盛り込むことができたそうだ。
「過去には、多くのブランドが少々華やかさもある定番イベントに関わりたいと希望し、イベントと関連付けられることができれば十分だった。それほど明確なKPIでなくても、喜んでもらえた」とシロップ氏は話す。だが2023年は、「このようなブランドリフトからは本格的に離れていっている様子が見られる」という。
その代わりに、『Small/Cool』のイベントスポンサーが望んでいるのは、イベントからほぼ直接的に対面での販売やオンライン店舗への誘導で売上へとつないでいくことだ。シロップ氏とそのチームは、こうした傾向が今後も続くと予想する。同氏は「2024年のイベントについては、本格的に販売ができたり、クライアントにとって具体的な何かを行えたりするようにして、より確固としたKPIの確実な達成を狙うことを考えている」と話した。
なお、アパートメントセラピーのイベント事業内での商取引へのアプローチに関するDIGIDAY記事はこちら。
[原文:For premium publishers, proving an advertiser’s return on investment is more important than ever]
Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)