テレビ局はFacebookのライブ動画を自社の稼ぎ頭であるテレビ事業のマーケティング媒体として捉えているようだ。特にスポーツ放送局は積極的にFacebook ライブ動画を活用してリーチ拡大、マネタイズの道を探っている。一方、スポーツ以外の放送局もライブ動画のコンテンツ作りを積極的に模索しているようだ。
Facebookのライブ動画は、膨大な視聴者を獲得している。そんななか、テレビ局はそのライブ動画を、自社の稼ぎ頭であるテレビ事業のマーケティング媒体として捉えているようだ。
NBA(プロバスケットボール協会)は10月25日夜(米国時間)、開幕試合に先立って、「クリーブランド・キャバリアーズ」のメンバーにチャンピオンシップ・リングを授与した。このセレモニーの様子をターナー・ネットワーク・テレビジョン(Turner Network Television:以下TNT)が試合前からテレビで中継していたため、アメリカにいる人ならテレビで目にしたかもしれない。
TNTはこのセレモニーを、Facebookページの「NBA on TNT」でもストリーミング配信していた。その狙いは、その後の試合中継にチャンネルを合わせてもらうことだ。
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「何よりもまずマーケティングだ」というのは、TNTで販売および知的財産権のパートナーシップ担当シニアバイスプレジデントを務めるウィル・ファンク氏。同氏は、さまざまなプラットフォームでライブ動画の拡大を目指す業界カンファレンス「ライブフロンツ(THE LIVEFRONTS)」で米DIGIDAYの取材に応じ、「ライブ動画を通して試合を観たくなったら、テレビのライブ中継に誘導するようにした」と語った。
スポーツ中継をソーシャルで観る日
Twitterはスポーツの試合をライブ配信する権利の購入をはじめている。また、「ブリーチャー・レポート(Bleacher Report)」や「ラッドバイブル(Lad Bible)」など、Facebookでの経験が豊富な数少ないパブリッシャーは、Facebookのライブ動画上で独自に試合のライブ配信をはじめている。
だが、ソーシャルプラットフォームでのスポーツ中継の規模は、まだ極めて小さいのが現状だ。CBSやTNTのようなメディアパートナーが、ソーシャルプラットフォーム上で全試合を配信することは当面ないだろう。
「(ソーシャルが)我々のプレミアムコンテンツを大量に配信する場所になるとは思えない。経済的状況が劇的に変わらない限りね」と、CBSスポーツ(CBS Sports)でデジタル部門担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるジェフ・ゲルトゥラ氏は語る。
それでも積極的なテレビ局
だからといって、スポーツテレビ局が、さまざまなコンテンツの実験場所としてFacebookライブ動画を利用するのを止めることはないだろう。たとえばCBSスポーツは日曜の朝に、Facebookでファンタジーフットボールの番組を配信している。同社は「ファンタジーフットボールトゥディ(Fantasy Football Today)」という番組をWebサイトやアプリで毎日配信しており、Facebookを同番組のほかのエピソードに人々を引き寄せる手段と考えている。
CBSスポーツがこの取り組みをはじめたのはごく最近だ。そのため、自社プラットフォームで配信しているコンテンツにオーディエンスを呼び込むという点で、Facebookがどれほど効果を発揮するのかは、まだわからないという。それでも、同社はこの実験に積極的な姿勢を見せている。
「これはまだ、はじまりにすぎない」と、CBSスポーツのゲルトゥラ氏は述べる。「我々はさまざまなコンテンツを試し、どれがうまくいくのかを確認しているところだ。ただし、これはまだマネタイズ可能なビジネスにはなっていない」。
スポーツテレビ局は、彼らにとってもっとも価値の高いコンテンツであるライブ番組をテレビで放映するため、多くの放映時間を割いているという点で、当然ながらユニークな存在だ。そんなスポーツテレビ局にとってデジタルとソーシャルは、リーチの拡大とマネタイズを行う場所とみなされている。
スポーツ以外の放送局も参入
一方、NBCユニバーサル(NBCUniversal)の所有する「E!ニュース(E! News)」など、スポーツ以外のテレビ局もFacebookライブ動画で実験を行っている。Facebookから利益を上げられるようになるのは、こちらのほうが早いかもしれない。
E!ニュースは現在、Facebook向けに毎週4時間程度のライブ番組を制作。そのひとつが、午前9時半(米国東部時間)から毎日配信しているモーニングショー「ライブ・フロムE!(Live From E!)」だ。また、木曜日には「フリースタイル(Freestyle)」という名のFacebookライブ番組の配信を計画しており、最初の3つのエピソードはアルタ・ビューティー(Ulta Beauty)がスポンサーに決まっていると、E!ニュースのエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、ナジャリアン氏は述べている。
ナジャリアン氏によれば、E!ニュースはFacebookライブ動画での広告販売の取り組みを拡大しているものの、さらに詳しいデータを入手することが必要だという。Facebookは「1分あたりの平均視聴者数」データを提供していないが、テレビ局や広告主は普通、このデータから番組の視聴者数を把握している。一方、TwitterはNFL(プロフットボールリーグ)のライブ配信でこのデータを提供しており、このようなデータは、メディア企業にとってFacebookライブ動画との統合を、広告主に提案する際に役立つ可能性がある。
「(Facebookライブ動画は)発展途上のビジネスだ」とナジャリアン氏はいう。「新しいプラットフォームがすぐに大きな収益をもたらすことはない。私はこのビジネスに長く関わっており、検索ビジネスに参入したGoogleがすぐに利益を上げられたわけではないことも知っている。現在の動きが我々をどのような方向に導くのか、見極めようと思っている」。
Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)