サッカーニュースサイトの「ゴール(Goal)」は世界展開を目指している。同サイトは、37の国と地域において18言語でサイトを公開しているが、その世界戦略の中心となっているのは、もちろんFacebookだ。とはいえ、LINEなど、ほかの人気アプリや人気プラットフォームでもリーチを最大化すべく取り組んでいる。
サッカーニュースサイトの「ゴール(Goal)」は世界展開を目指している。同サイトは、37の国と地域において18言語でサイトを公開しているが、その世界戦略の中心となっているのは、もちろんFacebookだ。
調査会社のコムスコア(comScore)によれば、パフォーム・メディア(Perform Media)が運営するこのサイトは、英国で150万人の月間ビジターを獲得している。だが、世界展開がもっとも速いペースで進んでいるのはFacebookで、同サイトのFacebookページには5200万人のフォロワーがいるという。
Facebookにおける取り組み
「ゴール」は1年前にいち早くFacebookのライブ動画の実験をはじめたパブリッシャーのひとつで、200本を超えるライブ動画を、英国、フランス、イタリア、スペイン、米国、ブラジル、アルゼンチンなどの国々で公開してきた。各国の編集チーム(総勢350名)は、どの国でも使えるような動画を制作するのではなく、それぞれの母語でライブ動画を制作。また、制作用のツールを使いこなせるようになるにつれて、動画のスタイルも進化しているという。
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「ゴール」のグローバル編集長を務めるジェイムズ・マーリー氏は「我々が注目しているのは新しいタイプのサッカーファンだ。彼らの利用形態は変化している。もはやひとつのチームだけを追いかけるのではなく、複数のチームをフォロー。また、ひとつの集団に閉じこもるより社交的に活動する傾向があり、モバイルへの依存度が高い」という。
このような理由から、「ゴール」が注目しているのは、いわゆるファンタジー・フットボール(お気に入りの選手で仮想チームを構成し、各選手の実際の実績に応じて勝敗が決する、リアルにバーチャルが連動するスポーツゲーム:参考記事)のような分野だ。「ゴール」は現在、英国やイタリアなどの国で毎週1回、45分間の番組を午前中に配信している。この番組では「ゴール」のサッカー専門家が登場し、ファンが次週に注目すべき選手など、Facebookのオーディエンスから質問された内容に答えている。
「ゴール」でマーケティングマネージャーを務めるサム・ブラウン氏によれば、番組によっては1分間に平均で100件のコメントが付くという。特にイタリアでは、ユベントスFCがリーグで圧倒的な強さを誇っているため、ファンの関心は、試合そのものよりもファンタジー・フットボールの選手構成を考えることに向いているとブラウン氏は話す。
フランスの「ゴール」も、毎週1回Facebookで番組を配信している。「The PSG Show」と呼ばれるこの番組では、パリ・サンジェルマンFCと1部リーグ「リーグ・アン(Ligue 1)」の優勝チームのみが取り上げられる。
Snapchatよりもインスタグラム
さらに「ゴール」は、既存のFacebookオーディエンスを活用し、「Messenger(メッセンジャー)」ボットを運営。数週間前から開始されたサービスで、ユーザーはフォローしたいチームに関するニュースを選んで受け取れる。英国の「プレミアリーグ(Premier League)」、スペインの「ラ・リーガ(La Liga)」、ドイツの「ブンデスリーガ(Bundesliga)」、イタリアの「セリエA(Serie A)」、そしてフランスの「リーグ・アン」が対象だ。
英国の「ゴール」では、55名いるスタッフのうち25名が編集に携わっているが、彼らがプラットフォームとして利用しているのはインスタグラムだ。フォロワーの数は、この半年間で25万人から140万人へと増加した。
最近の流行りは、非常に多くのパブリッシャーが利用しているSnapchat(スナップチャット)だが、「ゴール」はそれよりもインスタグラムの「ストーリーズ」に力を入れている。現在、英国の編集チームは、それぞれ10~20枚の写真で構成された15のインスタグラムストーリーズを公開した。
その狙いは、「UEFAチャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)」のグループステージなど、人気の高いイベントを取り上げ、インスタグラムのストーリーズとして公開することにある。このために、さまざまな国の記者が初日の試合の写真を投稿し、チャンピオンズリーグのストーリーズはインスタグラムで45万ビューを獲得した。

「ゴール」は15のインスタグラムストーリーズを公開している
「我々が学んだのは、インスタグラムでは音声を入れるとうまくいかないということだ。誰かがカメラに向かって話しかけたり、状況を声で説明したりすると、人々はさっさとスワイプしてしまう」とブラウン氏は言う。移籍期限に関する説明やその他の音声はなくし、舞台裏の様子を見せたり、ピッチから離れた場所で起こっている面白い出来事を、説明抜きで見せたりしている。
いまでもテキスト記事は重要
また、Snapchatのコンテンツにはいまのところそれほど力を入れていない。その理由は、インスタグラムのほうがFacebookからスムーズに展開できるため、見やすくできるからだという。
Facebookでは、テキストの記事が、いまも動画と同じくらい重要だという。米国のデジタルマーケティングエージェンシーであるフラクトル(Fractl)が先週発表した調査レポートによると、「ゴール」の制作したテキストベースの記事が、BBC(英国放送協会)、BuzzFeed、メールオンライン(MailOnline)、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)、ハフィントンポスト(The Huffington Post)といったライバルを差し置いて、ソーシャルプラットフォーム上でもっとも多くのシェアを獲得した。
フラクトルが調査対象としたのは、2016年前半の6カ月にFacebookやTwitterなどのプラットフォームで多くのシェアを獲得した上位100万本の記事だ(大半の記事はFacebookでシェアされていた)。たとえば、「Made of gold! Magical Messi is the most dominant player of all time」という「ゴール」の記事は、Facebookで8万4000回シェアされ、5200万人のフォロワーを獲得している。
ファクトルのブランド・リレーションシップ・ストラテジスト、アシュリー・カーライル氏は、「ゴール」がこの調査でトップになった理由について、同サイトの記事が世界の幅広いオーディエンスにアピールできる性質を備えているからだと述べ、次のように説明した。
「サッカーは世界でもっとも人気の高いスポーツであり、ロナルドやメッシといったスター選手は地球上で最高の有名人と言っていい。このおかげで、『ゴール』は世界中のオーディエンスにリーチできるが、BuzzFeedやCNNといった競合パブリッシャーは、ファンベースが米国に集中している。米国やカナダには、Facebookのデイリーアクティブユーザーのわずか17%しかいない」。
LINEでも650万フォロワー
とはいえ、Facebookのアルゴリズムの変更に頼るのはリスクを伴うため、「ゴール」はFacebookだけを利用するのではなく、ほかの人気アプリや人気プラットフォームでもリーチを最大化すべく取り組んでいる。アジアでオーディエンスを増やそうとしている多くのパブリッシャーと同じく、「ゴール」は日本のメッセージングアプリ「LINE」に進出。650万人のフォロワーを獲得しているという。
Facebookなどのプラットフォームから収益を得るという点については、長い取り組みになることを覚悟しているようだ。「マネタイズは簡単ではないが、将来的にはチャンスがあるはずだ。そのチャンスを活用できるベストなポジションにいたいと我々は考えている。実際、いくつかの商機がすでに存在している」と、ブラウン氏は言う。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)