2017年9月、25件のアドエクスチェンジでインベントリへの不正アクセスが発覚してからFTは、一歩踏み込んだ不正広告対策を進めていた。それは、FTを名乗る不正なインベントリを購入することにより、偽のFTインプレッションを販売するベンダーを見つけるものだ。
英経済紙フィナンシャル・タイムズ(Financial Times:以下、FT)による偽ドメインとの戦いが、功を奏しているようだ。
2017年9月、25件のアドエクスチェンジでインベントリへの不正アクセスが発覚してからFTは、一歩踏み込んだ不正広告対策を進めていた。それは、FTを名乗る不正なインベントリを購入することにより、偽のFTインプレッションを販売するベンダーを見つけるものだ。10月末の数日間、FTは「FT.com」と名乗るインベントリに500ドル(約6万6500円)を費やした。
同パブリッシャーが、不正表示されたインベントリを販売していたテクノロジーベンダーに呼びかけを行ってからは、25件のうち24件がFTのドメインなりすましを中止していたと、FTのプログラマティック部門のグローバル担当責任者、ジェシカ・バレット氏は話す。いまだにFTのインベントリへのアクセスを不正表示している1件について、詳細は語らなかった。
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多くのベンダーが協力
バレット氏は、ニューオーリンズで開かれた米DIGIDAY主催の「プログラマティック・メディアサミット(Programmatic Media Summit)」の席で、「私は、多くのアドエクスチェンジが、この問題の解決のため我々に協力してくれたことに、感銘を受けた」と述べている。「当初の不安ほどは、事態は悪くなかった」。
FTは9月、同社のインベントリへのアクセスを不正表示したアドエクスチェンジを見つけるための調査を実施した。そして、ディスプレイのアドエクスチェンジ10件と動画のアドエクスチェンジ15件が不正に動画インベントリの販売を表示していることをつきとめた。FTの推計によると、不正なインベントリは金額にして、1カ月で総額130万ドル(約1億4690万円)相当だという。同パブリッシャーはオウス(Oath)、スポットX(SpotX)、そしてフリーホイール(FreeWheel)といった複数のアドテクベンダーに対し、該当のインベントリへのアクセスを中止するよう要求した。
ドメインのなりすましとは、悪意のあるパブリッシャーやベンダーが、合法サイトに似せた偽サイトにトラフィックを不正に誘導する行為だ。ジャンクサイトに無駄な費用をかけることになるため、広告バイヤーが大きな不利益を被ることになる。さらには、パブリッシャーもまた、痛手を負う。不正なインプレッションは広告主にとっても有害だ。FTは、偽のインベントリだと気づかずに広告枠を購入した広告主が、投資収益率が低いとFTを非難することになるのではと、懸念している。
「発見は簡単、阻止は困難」
バレット氏によると、FTが自身のプラットフォームで発生しているドメインなりすましの数を明らかにしてからは、ベンダーに行動の是正を求めるなど、広告業界で透明性を推進する動きが進んでいるという。インタラクティブ広告協議会(IAB)テックラボが推奨するads.txt(アズテキスト)といったイニシアチブが普及するにつれてベンダーでは、社会から取り残されないようにクリーンなインベントリという時流に乗らなければ、という気風が広まっている。
しかし、パブリッシャーへの注目が集まり、広範囲のエクスチェンジがFTの偽インプレッションを販売停止したといって、今後またFTを名乗る正体不明のURLが現れないとも限らない。
「ドメインのなりすましを発見するのは簡単だが、それを阻止するのはむずかしい」と、バレット氏は語った。