メディア業界は通常、過酷な世界だ。だが、過去数カ月、米国内の大手パブリッシャー間の競争が少し弱まっているようだ。計画サイクルが短縮化し、ブランドとエージェンシーがパートナー数を絞ろうとしている影響で、パンデミック中に比べて、エージェンシーが提案依頼書(RFP)を送るパブリッシャーの数が大幅に減少しているからだ。
メディア業界は通常、少なくともある意味、過酷な世界だ。だが、過去数カ月、米国内の大手パブリッシャー間の競争が少し弱まっているように感じられる。
計画サイクルが短縮化し、ブランドとエージェンシーがパートナーの数を絞ろうとしている影響で、パンデミックの最盛期に比べて、エージェンシーが提案依頼書(RFP)を送るパブリッシャーの数が大幅に減少しているからだ。特にブランデッドコンテンツなどで、その傾向が顕著に見られる。
その結果、さまざまなパブリッシャーの成約率が上昇しているという。バッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group)の最高売上責任者ジェイソン・ワーゲンハイム氏によれば、同社のRFP成約率は2020年初の時点で30%だったが、現在は1.5倍の45%に達しているという。ミニッツメディア(Minute Media)の販売・ブランドパートナーシップ担当シニアバイスプレジデントであるジョン・ライリー氏によれば、同社のRFP成約率は約15ポイント上昇し、現在は35%だという。ある大手新聞社の最高売上責任者は米DIGIDAYの取材に対して、全米規模の広告主に対する提案の成約率が20%近く上昇したと話している。ただし、具体的な数字は不明だ。
Advertisement
メレディス(Meredith)のデジタル販売担当シニアバイスプレジデント、マーラ・ニューマン氏は「彼ら(クライアント)は、以前よりはるかに合理的なアプローチを求めている」と話す。「より少なく、より大きく、より良くという考え方がとても重視されている」。
ニューマン氏は具体的な数字を明かしていないが、パンデミック以降、同氏のチームも成約率が上昇したと述べている。
RFPの数が単純に減少している
エージェンシーはあらゆる契約で、より少なく、より良くというアプローチを採用しているわけではない。メディアエージェンシー、クレーマー=クラッセルト(Cramer-Krasselt)のメディア担当シニアバイスプレジデント兼エグゼクティブディレクターであるステファニー・エステス氏によれば、eコマースなどに特化したキャンペーンの場合、エージェンシーは今も幅広いパブリッシャーにRFPを送っているという。「多種多様なプラットフォームが存在するため、大きな網を打たなければ、必要なカバレッジを得られないことがある」。
メディア関係者の大多数が、2021年は2020年ほど予測不能な年にならないと考えている。それでも、程度こそ不明だが、このアプローチは2021年も続く可能性が高いとエージェンシーは口をそろえる。「この状況は続くと思うか? 私の答えはイエスだ。RFPの具体的な数字を予想できるか? こちらの答えはノーだ」と、エステス氏は話す。
成約率の上昇には代償もある。まず現在、業界を行き交うRFPの数が単純に減少している。メディアレーダー(MediaRadar)のデータによれば、通常、第4四半期は1年間でもっともRFPが減少する時期だ。また、複数のパブリッシャーが、RFPの数は2019年から変わっていないと報告している。むしろ減少したという報告も2例ある。
積極策に出るパブリッシャーたち
さらに、計画サイクルが短縮され、パブリッシャーは広告主の望むキャンペーンを数カ月ではなく数週間で実行しなければならなくなった。「我々は昨年と同じ量のRFPを受け取っているが、半分の時間で完成させなければならない」と、ワーゲンハイム氏は話す。
RFPを受け取るパブリッシャーが減少しているということは、以前より多くのパブリッシャーがビジネスチャンスすら得られていないということだ。パブリッシャーは夏以降、新規ビジネスの獲得がはるかに難しくなったと不満を口にしている。ブランドとエージェンシーがよく知る相手との取引に集中しているためで、このような状況では、傾向として大手が選ばれる。
その結果、パブリッシャーは積極策に出ている。ミニッツメディアのライリー氏は、2019年よりRFPの数が減少したため、クライアントへの売り込みに使う時間を増やしていると話す。
多くのクライアントが年内に予算を使い切ろうとしている今、そうした戦略が成果につながっている。ライリー氏によれば、ミニッツメディアが最近結んだ大型契約のうち、5件はこのアプローチが結実したものだという。
「創意工夫を凝らすしかない」
2021年は積極策をさらに強化し、誰でも利益を上げられるフランチャイズをブランドに売り込みたいとライリー氏は述べている。
「パブリッシャーのリストが短くなり、そのリストに入っていないのであれば、何らかの創意工夫を凝らすしかない」
[原文:‘Fewer, bigger, better’: RFP close rates rise for publishers as buyers look to keep things simple]
MAX WILLENS(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:長田真)