フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)にとって、音声は若いオーディエンスを惹きつける効果的な方法であることが実証されている。そのため、22歳から37歳までの世代が6割を占めるという、そのポッドキャストのオーディエンスへのサブスクリプションマーケティングにこの3カ月間、注力しているという。
フィナンシャル・タイムズ(Financial Times、以降FT)にとって、音声は若いオーディエンスを惹きつける効果的な方法であることが実証されている。そのため、FTは、22歳から37歳までの世代が6割を占めるという、そのポッドキャストのオーディエンスへのサブスクリプションマーケティングにこの3カ月間、注力しているという。
同社いわく、1月以来リスナーを100万人に倍増させたFTニュースのポッドキャストを含む、12のポッドキャストをFTは公開している。ポッドキャストリスナーの総数をFTは明らかにしないだろうが、その音声リスナーの3分の2はサブスクライバーではない。長い期間をかけて彼らを有料購読者に転換することを期待して、新しい種類の音声ストーリーテリングフォーマットでこうした購読者ではない人々に継続してエンゲージすることを目的にしている。
ヒドゥン・シティーズ
そのために、FTはGoogleの音声操作プラットフォーム、アシスタント(Assistant)をはじめとするスマートスピーカーを取り込もうと、その音声戦略を拡大している。同社は11月10日、GoogleのスマートスピーカーやGoogle、AppleのスマートフォンからアクセスできるGoogleアシスタントを介して、「ヒドゥン・シティーズ(隠れた街)」と呼ばれる初のインタラクティブ音声体験をローンチした。
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ヒドゥン・シティーズは、FTウィークエンド(FT Weekend)誌の付録で展開されているドキュメンタリースタイルのエディトリアルシリーズで、過去のバージョンにはGoogleのカードボード(Cardboard)デバイスを介したバーチャルリアリティ体験が含まれている。この試みにおいて選ばれた街が、ベルリンだ。ベルリンのレストラン、クラブシーン、その他の文化的な目玉を掘り下げた音声インタビューをリスナーたちは聞くことができる。FTのベルリン支局長、ガイ・シャザン氏が同シリーズのナレーションをしている。それを体験する方法を紹介するのがFTウィークエンド誌の目玉、ベルリンのイラストマップだ。
情報をリクエストしたり、「ベルリンの湖のツアーに行くには?」といった質問をして、スマートスピーカーとやりとりすることをリスナーに促すことになるだろう。ヒドゥン・シティーズのナレーターにうまく促され、リスナーたちは別の音声ファイルも聞いてみたいと思い、さらに質問をするようになるだろうという。人々がどのように反応するかをFTは注意深くモニタリングする予定だ。9つの個別記事に合計90分のコンテンツが作成されている。
プロダクトの制作背景
FTのスタッフのうち3人が、同社の音声事業提携企業、ロジーナ・サウンド(Rosina Sound)社からの4人と、リデュースド・リスニング(Reduced Listening)社からの2人と一緒に、Googleからの技術支援も受けて音声プロダクトの制作に携わっている。
「現行のポッドキャストリスナーの大多数はサブスクライバーではないが、彼らはFTのコンテンツに1日20分から30分の時間を費やしている。サブスクリプション事業の課題のひとつは、コンバージョン可能な人々をエンゲージさせることだ。だから、深くエンゲージし、その多くがポッドキャスト番組の7、8割を聞いている人々で構成される、コンバージョンの可能性が潜む、豊かな猟場を確保することは都合が良い。それを純化していくためにさらに努力していくことになる。それを利用するというのは大きなチャンスであり、サブスクリプションを促進することができる」と、FTの商用音声担当責任者、アラステア・マッキー氏は語る。
FTは新商品対してフィードバックをボランティアでしくれる1万人のパネル購読者と定期的に交流を持っている。FTによれば、そのうちの3割はスマートスピーカーを所有しているか、または、それらにアクセスできるという。
オーディエンス獲得戦略
ヒドゥン・シティーズのシリーズは、すべてのFTの音声プロダクトと同様に、常に自由にアクセスできる。テキスト記事から音声記事に変換されたあとで、ぺイウォールに阻まれてしまった音声プロダクトの割合はわずかなものだ。ヒドゥン・シティーズのコンテンツがGoogleのプラットフォームで公開されることを考えれば、対価が払われる可能性は低い。マッキー氏によれば、同プロダクトとインタラクトしエンゲージするという人々の傾向から学んだことを利用し、AmazonのAlexa(アレクサ)などのほかのスマートスピーカーで、インタラクティブな音声ストーリーテリングフォーマットについて告知することに、FTの計画はより重きを置いているという。
「これは賢明な獲得戦略だ。FTは、ジャーナリストたちの説得力を証明できる注目度の高い状況で、リスナーたちのニュース消費ルーティーンに入り込んでいく。コンテンツに関連した習慣の形成は、すべてのサブスクリプション提供サービスにとって必須だ」と、エンダーズ(Enders)のシニアリサーチアナリスト、ジョセフ・エバンス氏は述べている。
エバンス氏によると、ボーナスコンテンツがついたアドフリー・ポッドキャストに人々がお金を出しているという証拠がいくつかあるという。「我々はユーザーが資金支援できるプラットフォーム、パトレオン(Patreon)上の100近くのポッドキャストに対して集計を実施しており、少なくとも1000人の有料リスナーがいて、サブスクライバーにつき平均月額5ドル(約500円)が支払われている」と、彼は述べた。
若年層開拓の意味
ポッドキャストだけでは、サブスクリプションを増やすのに十分ではないが、FTが提供しているように、ポッドキャスト、記事の音声版、ニュースまとめ速報をを含むサブスクライバー向けの総合的な音声プロダクトを提供し、それらが人々の日々のそして毎週のルーティーンの一部になり、新規サブスクライバーを引きよせ、既存サブスクライバーの解約を減らす可能性が非常に高いと、エバンス氏はいう。
現在FTの計画は、今後、有料購読者に転換させることを期待して、若い非購読者を継続して引きよせるとともに、既存の購読者たちに付加価値を提供するためにコンテンツを利用することだ。しかし、FTが模索するこの種類の音声フォーマットにはネイティブ広告の機会もあると、マッキー氏はつけ加えている。