CNNがスケールの限界を認識しはじめた。自社サイトやFacebook等の複数プラットフォーム上で膨大なオーディエンスを獲得しているCNNだが、ニュースが人々の毎日の習慣にはなっていなかったのだ。緊急ニュースの際にトラフィックが急増してもやがて減少する。オーディエンス開発を部門間で取り組む必要があると考えた。
CNNがスケールの限界を認識しはじめた。
自社サイトやFacebookなどのプラットフォーム上で膨大なオーディエンスを獲得しているCNNだが、ニュースが人々の毎日の習慣にはなっていなかった。緊急ニュースの際にトラフィックが急増してもやがて減少する。ニュースやソーシャルなどの各部門はそれぞれオーディエンス開発を行ってはいたが、共同での取り組みはしていなかった。
軌道修正は試みてきた。CNNは約1年前、オーディエンス開発チームなどを組織するため、ウェザー・カンパニー(The Weather Company)からクリス・ハーバート氏を迎え入れる。同氏は、デジタルのオペレーションと戦略を担当するシニアバイスプレジデントに就任すると、9月にオーディエンス開発担当のバイスプレジデントにアラン・シーガル氏を連れてきた。
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彼らの仕事は、ニュースレターやポッドキャストなどの製品によるオーディエンスとの直接的な関係性の強化、緊急ニュースがない期間のエンゲージメント拡大による広告主へのさらなる予測可能性の提供、そしてオーディエンスベースの売上を倍増させることだ。シーガル氏はデータサイエンティストと分析専門家を含む15名のチームを作っており、今後2年間かけて、これらを達成することが期待されている。
オーディエンス開発に重点
CNNのデジタル担当ゼネラルマネジャーであるアンドリュー・モース氏の直属にあるハーバート氏は、「オーディエンス開発では、データを活用して新しい世代にニュースを習慣化させ、マネタイズを向上させることを考えている」と語っている。「弊社は非常に大きく、現時点でとても多くのオーディエンスを抱えているが、紙媒体分野の競合企業がもっているオーディエンス掌握の経験を備えているとは言いがたい。現在、全体的なユニーク数の規模から、エンゲージメント、日割りのユニークユーザー数、動画視聴時間などに重点をシフトさせている」。
そのためには、CNNの社内文化におけるオーディエンス開発の比重を拡大する必要がある。CNNは2年前にいわゆる「作戦指令室」を設置した。CNNMoneyには、オンラインとソーシャルメディアの指標を表示するモニターが持ち込まれた。このデータを使ってリアルタイムで編集戦略に情報を活用しようとしたのだ。しかし、当時は十分にその取り組みを活かせなかった。そこでシーガル氏のチームは、ベストなユーザー体験を提供できるように、営業と編集から独立したオーディエンス開発チームを組織。ただ、このチームのメンバーはニュースルームに出入りし、朝の編集判断や、事業開発、製品、営業の各会議には参加する。
「カルチャーの変換という点で素晴らしい取り組みだった。数字はただ貼り出すだけでは十分ではないことがわかった。データから得た改善策を毎日のワークフローに浸透させることが重要」と、ハーバート氏は語った。
これまでの取り組みの成果
CNNによると、オーディエンス開発チームの取り組みの成果は、オーディエンスの態度変容や大きな収益化に結びつけるにはまだ至っていないものの、小さな成功事例はいくつかあるという。ニュースレターの分析が、クリック流入の増加につながる新しいリンク方法を見つけた。また、データから導かれたトップページの変更で、記事のエンゲージメントが向上した。そして、コンテンツ再循環モジュールのテストで、実際にはCNNが意図した形でエンゲージメントを促進できないことを発見し、高くつく恐れのあるリスクを防ぐことができた。
ところで、CNNは映像メディアであり、当然、オーディエンス開発チームのデータ分析で大きな割合を占めるのは動画だ。チームは、動画の再生を開始した人数だけでなく、離脱のタイミングの把握にも取り組んで、深く調べる。CNNは多数のプラットフォームにさまざまな方法で動画を配信しているため、その仕事は簡単ではない。
「プラットフォームごとにオーディエンスが異なるし、動画視聴者の行動傾向は多様だ。いくつもあるプラットフォームを理解し、各プラットフォームに適した方法で動画を配信することは急務だ」とシーガル氏は語った。
収益面の拡大にも期待
エンゲージメントとあわせて、シーガル氏のチームは財務面にも取り組んでいる。CNNは以前、スケールにもとづいてデジタル広告を販売していたが、これからはオーディエンスを明確なグループに分類することになる。たとえば、ポリティコ(Politico)に張り合って政治マニア向けの広告を販売するなどして、強力なライバルに対抗した。
グループコネクト(GroupeConnect)のメディア担当グループディレクターであるジェレミー・テート氏は、CNNのようなパブリッシャーがスケールを活用してニッチなオーディエンスを探し出すのは、悪くないアイデアだと語った。広告主は依然としてコンテキストを気にしているが、同じオーディエンスにより安価にリーチできるとなれば、エンデミック(地域限定)広告の購入を補完するものになり得る。
「コンテキストの関連性が重要なのは変わらない。これはオーディエンスベースのバイイングの限界ではあるが、人々が放つ信号をCNNが適切なコンテキストで配信し、オーディエンスの発見と結びつけることができれば、それはチャンスだ」と、同氏は述べた。
Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)