Facebookは6月30日、オーディエンスデータの提供を一部停止した。同プラットフォームにおけるコンテンツのパフォーマンスを知るために、パブリッシャーが利用していたものだ。そしてFacebookは8月18日、その提供再開の予定がないことを認めた。
Facebookが停止したのは、「ドメインインサイト(Domain Insights)」への新規ドメイン登録だ。サイト開発者はこのツールで、Facebook内におけるコンテンツのパフォーマンスに関して、基礎的な情報にアクセスできる。たとえば、外部でホストされたWebサイトのコンテンツをユーザーがFacebook内でシェアした回数などだ。
Facebookは6月30日、オーディエンスデータの提供を一部停止した。同プラットフォームにおけるコンテンツのパフォーマンスを知るために、パブリッシャーが利用していたものだ。そしてFacebookは8月18日、その提供再開の予定がないことを認めた。
Facebookが停止したのは、「ドメインインサイト(Domain Insights)」への新規ドメイン登録だ。サイト開発者はこのツールで、Facebook内におけるコンテンツのパフォーマンスに関して、基礎的な情報にアクセスできる。たとえば、外部でホストされたWebサイトのコンテンツをユーザーがFacebook内でシェアした回数などだ。
Facebookのスタッフは、開発者たちからの質問に対して、「残念ながら、現在のところ新規ドメインを受け付ける予定はありません」と回答した。
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翻弄されるパブリッシャー
ドメインインサイトに登録済みのパブリッシャーは引き続きデータにアクセスできるが、今回の一報は開発者からの大きな反発を招いた。これはパブリッシャーに対して、Facebook内に直接コンテンツを公開させるための強引なやり方だと、見る向きもある。
「まだFacebookの(ドメイン)インサイトを利用していなかったWebサイトにとっては大打撃だ」と、メリットペイジス(Merit Pages)を創業したジェイソン・フォックス氏はメールインタビューに答えた。同社は、教育機関が卒業生に関する情報をシェアするサービス「メリット(Merit)」の開発元だ。
しかし、すべてのパブリッシャーが、同様にとらえているわけではない。ある大手デジタルパブリッシャーのシニア・ソーシャルストラテジストは、「大したことではない」と話す。それでも、この動きによって明らかになった事実がある。パブリッシャーがFacebookのオーディエンスに一層依存するようになった状況で、パブリッシャーがオーディエンスに関して何をどんな方法で知るかを、Facebookが強力にコントロールできる立場になったということだ。
ドメインインサイト停止の余波
新興パブリッシャーのなかには、Facebook内におけるコンテンツのパフォーマンスは知りたいが、Facebookに直接コンテンツを公開するのは避けたいと考えている事業者もいる。そうしたパブリッシャーにとって今回の動きは「大きな損失」だと、先述のシニア・ソーシャルストラテジストは指摘する。
ドメインインサイトを停止する前、Facebookは開発者向けに3つのカテゴリーのインサイトを提供していた。外部サイトのコンテンツがFacebook内で達成したパフォーマンスを示すドメインインサイト。Facebookアプリ(Facebookメッセンジャーなど)内でシェアされたコンテンツのパフォーマンスを示す「アップインサイト(App Insights)」。そして、インスタント記事(Instant Articles)やFacebook動画などのコンテンツのパフォーマンスを示す「ページインサイト(Page Insights)」だ。
後者2つの情報ソースについては、パブリッシャーは引き続きアクセスできる。また、コンテンツのトラッキングに本腰を入れている開発者なら、Googleアナリティクスを使って、Facebookからトラフィックが来るタイミングを把握できる。しかし、この変更により、自社サイトのコンテンツがFacebook上でどう消費されているかを知りたいパブリッシャーにとっては、いくつかの盲点ができることになると、多くの開発者が指摘している。
巨大ハブとなったFacebook
「ドメインインサイトがなければ、誰がコンテンツをシェアしているのかわからない」と、ケンタッキー調査報道センター(Kentucky Center for Investigative Reporting)のインタラクティブ・ディベロッパー、アレクサンドラ・カニック氏は指摘する。同氏の前職は、アドテク企業メディアシフト(MediaShift)のメトリックス・エディターだった。「データの一部はGoogleアナリティクスから収集できるが、入手できないものも相当ある」。
新興パブリッシャーは、自社のコンテンツをFacebookのオーディエンスがどの程度気に入っているかを把握したいなら、今後はFacebookに直接公開するしかない。
3つあった無料のデータソースを2つに減らしたことは、Facebookの劇的な変貌を物語っている。いちプラットフォームとしてパブリッシャーたちに自らの価値を売り込んでいたFacebookは、いまや多数のパブリッシャーが頼る巨大ハブとなったのだ。「我々の見方では、FacebookはAPI提供を続けてきた比較的親切な企業のひとつだ」と、パブリッシャー向けソーシャルアナリティクス企業パースリー(Parsely)のサチン・カムダール最高経営責任者(CEO)は話す。
Facebookの動きは、パブリッシャー向けデータの簡素化を加速させる可能性があると、カムダールCEOは付け加えた。「我々の顧客の多くは、記事のパフォーマンスを把握したいがために、ダッシュボードの情報過多に陥っている」。
「これが最終決定ではない」
もちろん、この決定で影響を受けるのは、新興および将来のパブリッシャーだけだ。もしFacebookがドメインインサイトを完全に廃止するつもりだとしても、慎重に進めることだろう。2015年秋、Twitterのシェア数表示廃止がパブリッシャーらを騒然とさせた。Facebookはおそらく、同じ轍を踏みたくはないだろう。
Facebookは心変わりの可能性も残している。Facebookの投稿には、「これが最終決定ではないことに留意してください。今後さらなる変更の可能性があります」と書かれている。
現在Facebookドメインインサイトを利用中のパブリッシャーの数は不明だ。Facebookはコメントの求めに応じていない。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)
Image form Andrew Feinberg / Flickr