先日、FacebookのiOSアプリ上でニュース記事をクリックすると、アプリのブラウザ上で表示されたパブリッシャーのコンテンツに他社のインタースティシャル広告が表示される事態が起きた。Facebookは「技術上の問題」とコメントしたが、同社のオーディエンスネットワークの不透明な先行きも関係しているかもしれない。
先日、FacebookのiOSアプリ上でニュース記事をクリックすると、アプリのブラウザ上で表示されたパブリッシャーのコンテンツに他社のインタースティシャル広告が表示される事態が起きた。パブリッシャーの許可なしに彼らのウェブサイト上に広告を表示させてしまった問題について、Facebookは謝罪をした。同社はこの問題を「技術上の問題」と形容している。
Facebookの広告主たちがサードパーティアプリ上でも広告を表示させることができるインタースティシャル広告は、Facebookのオーディエンスネットワーク(Audience Network)で提供される広告フォーマットのひとつだ。しかしユーザーのひとりが、このネットワークに登録されていないパブリッシャーのサイト上でも、これらの広告が表示されていることを発見した。
「技術的な問題が原因で、Facebookアプリ上のニュースコンテンツにおいてインタースティシャル広告が表示されるユーザーがいた」とFacebookの広報担当者はコメントした。また、「この問題は現在は解決しており、このことで不便をかけたことを謝りたい」とも述べている。
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広告非表示のはずの公共放送で
Facebookによるとこの問題はiOSデバイスに限られたものであり、コード上のエラーが原因で、近日中に何か新しい広告プロダクトがローンチされる計画を意味しているわけではないとしている。このエラーがどれほどの期間続いたのか、何社のパブリッシャーと何人のユーザーに影響があったのかは発表しなかった。
影響を受けたパブリッシャーのひとつがデンマークの公共放送であるDR(Danish Broadcasting Corporation:デンマーク放送協会)のウェブサイト「DR.dk」だ。DR.dkはその性質上、サイトでまったく広告を表示しない。テレビ、ラジオ、もしくはインターネットに接続できるコンピューターやスマートフォン、タブレットを所有するデンマーク人が義務的に支払う利用料金が資金源となっている。
ウルリック・クリステンセン氏提供のスクリーンショット。Facebookのニュースフィード経由でアプリ上のブラウザからDRのサイトを訪問した際に、コードの問題でインタースティシャル広告が表示されたとFacebookはコメントした。
DRの戦略的配信エディターであるクリスチャン・ロイボーグ氏は、同社のコンテンツがすべてのサードパーティプラットフォームにおいて広告なしで表示されることに尽力しており、Facebook経由で広告が表示されたユーザーがいたと知って驚いたと話す。
「まずはFacebookが誤りを認識し、問題が解決された点は嬉しい」とロイボーグ氏は言う。「同時にDR.dkを訪問したユーザーに対して広告が表示されたかもしれない事実については非常に遺憾に思っている。事態の深刻さはFacebookにしっかりと伝えた。何人のユーザーがこの影響を受けたか、Facebookからの報告は今のところ確認できていない」。
収益にも影響を及ぼすリスク
パブリッシャーのウェブサイト上でインタースティシャル広告が表示されていることに気付いたFacebookユーザーのひとり、ウルリック・クリステンセン氏は今回の事態を「(Facebookの)誤った第一歩」だと指摘する。
クリステンセン氏提供のスクリーンショット。Facebookブラウザ上で国営テレビ局「TV 2」のサイトにアクセスした際に表示されたインタースティシャル広告。
デンマークの広告ネットワーク、ステップ(Step)のパブリッシャーパートナシップ部門責任者でもあるクリステンセン氏は、「この『技術的問題』はパブリッシャーのコントロール権利を迂回し、ユーザー体験に影響を与える行為だ」と語る。「ユーザーへの影響だけではない。多くのパブリッシャーは自社サイトのアンカー広告をマネタイズに利用しており、今回の事態は彼らの広告パフォーマンスを低下させるだろう」。
先行き不透明なオーディエンスネットワーク
Facebookは2014年にオーディエンスネットワークをローンチした。広告主はFacebookのターゲティングデータを使ってサードパーティーアプリ内で広告を展開できるようになったが、これによりGoogleのAdMob(アドモブ)やTwitterのMoPub(モパブ)といった競合とより直接的に競合することにもなった。
2016年にFacebookはこのネットワークを拡大しモバイルサイトも含めたが、今年4月にモバイルWeb部門は閉鎖された。8月後半には、オーディエンスネットワークのパブリッシャーとデベロッパーたちに対して、AppleがiOS 14のアップデートで加えるプライバシー関連の変更により、収益が下がる可能性があると警告した。アプリが他社やウェブサイトとユーザーのデータを共有するために、ユーザーの同意が必要となるためだ。
9月はじめにAppleはこのオプトインの実装を来年前半まで延期し、デベロッパーたちが対応する時間を確保すると発表している。
LARA O’REILLY(翻訳:塚本 紺、編集:分島 翔平)