Facebookは2月17日、2017年に計画しているコンテンツと製品のロードマップについて、メディア企業に説明した。これは、メディア企業との距離を縮めようとする同社の継続的な取り組みの一環だ。その狙いは、自社のプラットフォームからフェイクニュースを排除するとともに、パブリッシャーの動画マネタイズ支援にある。
メディア企業は、Facebookがフェイクニュースを拡散させる役割を果たしたことを懸念している。そのためFacebookは、メディア企業との関係修復を試みているようだ。さらにFacebookは、メディア企業のビジネスを成功させることに最優先で取り組んでいることを、もう一度わかってもらいたいと考えている。
Facebookは2月17日(米国時間)、ニューヨークにある自社のオフィスに多数のメディア企業を招待し、2017年に計画しているコンテンツと製品のロードマップについて説明した。招待されたのは、ABCやNBCといったテレビ局、ニューヨーク・タイムズ(New York Times)やワシントン・ポスト(The Washington Post)などのニュースパブリッシャー、それにBuzzFeed、リファインリー29(Refinery29)、Viceといったデジタルメディア企業の幹部たちだ。多数のFacebook幹部も姿を見せた。キャンベル・ブラウン氏(ニュースパートナーシップ責任者)、アダム・モセリ氏(製品管理担当バイスプレジデント)、フィジー・シモ氏(製品担当バイスプレジデント)といった面々だ。
このイベントは、メディア企業との距離を縮めようとするFacebookの継続的な取り組みの一環だ。Facebookの狙いは、自社のプラットフォームからフェイクニュースを排除するとともに、パブリッシャーが動画から収益を得られるよう支援することにある。
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Facebookの広報担当者は、「『Facebookジャーナリズム・プロジェクト(Facebook Journalism Project)』の発表の際に述べたように、我々は業界との連携をさらに深めながら、ジャーナリズムに適した製品を開発することに注力している」と語った。「先週には、当社の製品チームとパートナーシップチームが、ニューヨークとロンドンで100社を超えるパブリッシャーと話し合いの場をもち、彼らから多くのことを学んだ。このような緊密な協力関係を今後も続けたいと考えている」。
大きなテーマは「動画」
2月17日のイベントでもっとも大きなテーマとなったのは動画だった。あるセッションではすべての話題が動画関連であり、動画広告やFacebookアプリでの動画の配置といった話がテーマだったという。また、Facebookがオリジナル動画に資金を提供する計画に関する話もあったと、複数の出席者は語っている(ほかのセッションでは、従来のパブリッシングやインスタント記事にまつわる問題、それにローカルニュースの問題がテーマとなったようだ)。
Facebookはこのイベントで、オリジナルコンテンツを制作する計画について説明した。「カレッジ・ヒューマー(CollegeHumor)」の共同創設者であるリッキー・バン・ヴェーン氏が中心となって、エンターテインメント分野とスポーツ分野のシリーズ番組を制作することを検討しているようだ。これには、台本のある番組もない番組も含まれるという。また、制作した番組を、モバイルアプリの動画タブと、将来リリース予定のコネクテッドTVアプリで配信する考えのようだ。
2016年にはライブ動画が最優先の取り組みと位置づけられていたように、2017年にはロングフォーム動画がFacebookのメインプロジェクトとなっている。目的は、Facebookプラットフォーム上でユーザーが過ごす時間を長くすることだ。そのため、Facebookの幹部は、ショートフォームの動画をいままでどおりニュースフィード上で配信しながら、ロングフォーム動画を動画タブやTVアプリで視聴してもらえるようにするという構想を描いている。このロングフォーム動画は、Facebookの資金提供によって制作されたオリジナル動画と、メディア企業が自社で制作した長編デジタル動画の両方が対象だ。
「彼らは、このタブ(動画タブ)でのユーザーの行動を変えたがっている」とある出席者は語った。「彼らが期待しているのは、このタブを表示したユーザーに、ニュースフィードと同じコンテンツを見てもらうことではない。彼らは(動画タブを)、YouTubeと競争できる存在にしたがっている。ここに5分~15分の動画をアップできるようにして、ユーザーにじっくり見てもらいたいと考えているのだ」。
現実味を帯びる広告挿入
Facebookは2月23日、ライブ動画にミッドロール広告を挿入できる対象を拡大する計画を明らかにした。ミッドロール広告はいまのところ、ケイシー・ネイスタット氏のようなソーシャルメディアのスターにしか認められていないが、情報筋によれば、6月末までにパブリッシャーに開放されるという。当初は、自分の携帯電話を使ってライブ動画を配信するページ所有者しか、マネタイズツールを利用できない。しかし、ゆくゆくは「Facebook Live API」を使って、ライブ動画を制作するパブリッシャーにもツールを開放すると見られる。
Facebookの発表によれば、広告を挿入できるのは、Facebook上でフォロワーが2000人以上いるパブリッシャーやソーシャルスター、および同時視聴者数が300以上のライブ動画に限定されるようだ。また、最初の広告を挿入できるのは動画開始4分後で、その後は、広告と広告の間を5分間空ける必要がある。広告の時間は最大20秒だ。
Facebookは、オンデマンド動画の途中に広告を挿入するテストも行っている。ただし、この機能を利用できるのは数社のメディアパートナーに限られる予定で、ほかの企業に開放されるのは先のようだ。この広告を利用するパブリッシャーは、動画のどこに広告を挿入するか決める必要がある。ただし、動画開始直後の20秒間と、動画が終わる前の30秒間には広告を挿入できないと、情報筋は語っている。
参加者たちの反応
ある出席者は、Facebookによるライブ動画のマネタイズ計画について、「こうした機能がどれほどの収益をもたらすのかは疑問だ」と述べる。「だが、何もしないよりはましだろう」。
一方で、これはFacebookにとって重要なステップだと考える出席者もいる。Facebookは、持続性のある広告モデルをメディアパートナーにまだ提供できていないからだ。
「『注目の動画』機能が、我々全員にとって非常にがっかりする結果に終わったことを(Facebookは)理解している」と、イベントに出席したある動画メディアの幹部は語った。「大きな利益を上げた企業は1社もなかった」
Facebookは今後、このようなイベントを増やしていくだろう。フェイクニュースを排除しつつ、収益源を構築するために、メディア企業との連携を進めているからだ。2月24日のイベントの1カ月近く前には、ニュースパートナーシップ責任者のキャンベル・ブラウン氏が、ニューヨークで記者と幹部を招待して非公開の会議を開く取り組みをはじめたと、BuzzFeedは報じている。
SAHIL PATEL(原文 / 訳:ガリレオ)