Facebookプロダクトは楽観視していいと、ニュースパブリッシャー勢が思えるようになってから久しい。だが、このところのFacebook Newsの急成長は注視に値する。Facebook Newsは、参加パブリッシャーのコンテンツ利用に対する補償策として米国で大々的にローンチされた。
Facebookプロダクトは楽観視していいと、ニュースパブリッシャー勢が思えるようになってから久しい。だが、このところのFacebook Newsの急成長は注視に値する。
この数カ月間、FacebookはFacebook Newsのリフェラルトラフィックとニュースフィードのリフェラルトラフィックを区別できるパブリッシャーの数を増やしている。そしてその急増ぶりは、Facebook News――参加パブリッシャーのコンテンツ利用に対する補償策として米国で大々的にローンチされた――が同プラットフォームの巨大ユーザーベースの少なくとも一部を擁し、それなりの影響力を持つと見られている証にほかならない。
あるパブリッシャーは、自社コンテンツのFacebook Newsリフェラルトラフィックは5カ月連続で上昇していると語る。別のパブリッシャーは、Facebook Newsリフェラルトラフィックのシェアは、昨年(2020年)のエレクションデーのそれを30%上回っていると語る。また別のパブリッシャーは、Facebook Newsは現在、自社コンテンツのFacebookリフェラルトラフィックの50%を占めていると語る。
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ただ、こうした数字の元であるデータベースはごく小さい――上記の1人目と2人目の情報筋は、Facebook Newsはいまだ、自社コンテンツのFacebookリフェラルトラフィックの10%にも満たず、3人目はFacebook全体でも依然、自社コンテンツの総トラフィックの10%未満だと語る。とはいえ、この急激な、しかも混乱を極めた2020年を経た現在の成長は、Facebook Newsが少なくとも失敗作ではない可能性の印にも見える。Facebookには当初、Facebook Newsのリフェラルトラフィックを区別する術がなかった。その解決策を見いだしたのが2020年のことで、同年後半から徐々に同プロダクトの展開を始めた。
「今後、Facebook Newsはその割合を増すとともに、ある時点で、リフェラルトラフィック全体を増加させることになるだろう」と、4人目の情報筋は語る。このパブリッシャーの場合、Facebookリフェラルトラフィックの内、Facebook Newsのそれは現在、20%近くを占めているという。「これから数カ月間、Facebookは信用できるニュースパブリッシャー/制作者を優先することになるだろう」。
社会/政治色を薄めるFacebook
その一方で、FacebookはFacebook Newsを急成長させるなか、自社ニュースフィードにおける社会ニュース/政治の存在感の最小化に努めている。
2020年秋から、Facebookはパブリッシャー勢に対し、明確にではないにせよ、同社のニュースフィードは今後、社会/政治色を薄めていく、との発言を始めた(2020年10月、Facebook幹部はTVキー局のデジタル部門幹部らに、「Facebookをまた楽しいものにする」試みが進行中である旨を伝えた)。そして、2021年2月10日には、ニュースフィードにおいてユーザーが目にする政治情報が今後減少していく旨を公式発表した。
Facebookのこの動きを、昨秋に端を発する流れの延長として見るパブリッシャーもいる。つまり、白熱した米大統領選中、トランプやコロナ禍と無関係のコンテンツが締め出された事態への反動だ。
その締め出しは、ローカルニュースパブリッシャーにとりわけ顕著に見られた。Facebook Newsに参加する、あるローカルニュースパブリッシャーの幹部によれば、同社のFacebook総リフェラルトラフィックは2020年後半、50%近く跳ね上がった。そして同幹部はいま、著しい落ち込みに備えているという。今年の月間総リフェラル数は必然的に、コロナ禍の初期に大半のパブリッシャーが享受した好成績と比較されることになるからだ。
「おそらく、来年はもうない」
「[何が起きているんだと]不安を投げかけてくる人もいる」と同幹部は言う。「でも、私が[Facebookに]何が起きているんだと訊ねても、率直な答えはまず返ってこない」。
確かに、Facebook Newsのリフェラルトラフィックは急成長している。だがその裏で、少なくとも一部のパブリッシャーにとっては、Facebookはリフェラルトラフィック減の源になっている。たとえば、先述の4人目の幹部は、同社のFacebook総リフェラルトラフィックは、2020年の米大統領選終了から減少していると語る。
「私はFacebookを『大して重要ではない』の部類に入れている」と、Facebookが費用を負担してFacebook Newsに参加させている、あるパブリッシャーのベテラン幹部は言う。「彼らは、我々が構築しているビジネスにとって必須ではない」。
「当社のFacebookリフェラルはこの2年、下がりつづけている」と同幹部は言い添える。「彼らはいま[Facebook Newsに]大金を投入しているが、損益計算書を見れば、『おそらく、来年はもうないだろう』と、誰でも思うはずだ」。
一方、イギリスやドイツでも展開
だが当のFacebookは、パブリッシャー勢のそうした懐疑をよそに、Facebook Newsの拡大を続けている。3月1日、同社は5月にドイツでもFacebook Newsを展開する予定であり、100社を越えるパブリッシャー/ブランドが参加を表明していると発表した。2020年12月には、U.K.での立ち上げも発表している。
Facebook Newsは初年度、パブリッシャーの関心を思うように集められなかった。どの程度のリフェラルトラフィックがあるのか、測定不能だったからだ。
ただ、現在の成長ぶりを見て、期待を口にするパブリッシャーも少なくない。Facebook Newsオーディエンスを安定した存在と、つまり、ほかのFacebookユーザーとはまた別の形でアプローチできる、確固たる集団と見なせる日がいつか訪れて欲しいと、彼らは考えている。
懐疑的な見方をするパブリッシャーも
だが、驚きと方針転換の連続だったこれまでの経緯を踏まえ、期待はするが、Facebook Newsを軸にした戦略変更は時期尚早だと、同じパブリッシャーらは断言する。ほかの情報筋――米DIGIDAYは今回、Facebook Newsに参加するパブリッシャー8社に話を聞いた――は、Facebook Newsオーディエンスを別の形でアプローチできる別個の集団と考えるのは早すぎると指摘している。
なかには、Facebookはオーディエンスを十分に獲得できないのではないか、との懐疑的な見方をする者までいた。
「だいたい、Facebook Newsユーザーをサブスクライバーにしたいなんて、誰が思う?」と、6人目の情報筋は手厳しい。「Facebookでニュースを読む人間は、コロナ禍はでっち上げだし、ホロコースト[ナチスによるユダヤ人大虐殺]はなかったと思い込んでいる輩なんだから」。
[原文:‘I’m really looking for signs’: Facebook News grows as referral source for publishers]
MAX WILLENS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU