ロンドンを拠点とする「ツイステッド(Twisted)」は、Facebookフードビデオ界での成功を目指しているメディアのひとつだ。同サイトは毎日は1分のレシピ動画を2本公開。面白い食材の組み合わせや調理法が売りで、チーズや炭水化物がたっぷりと登場する。
チューブラー・ラボによると「ツイステッド」は、6週間で2億2000万もの再生回数を叩きだした。現在、100万人超のFacebookフォロワーも抱えており、BuzzFeedの「テイスティ」における5600万人と比べると見劣りはするが、2016年末までには500万人へと増やすことを目標にしている。そんななか、「ツイステッド」は、いかに競合との差別化を図っているのか?
Facebookでは食べ物を扱うビデオが急激に人気を集めている。だが、クリエイターたちにとっては、ほかのフードビデオとの差別化が喫緊の課題となってきた。
オンライン動画の調査・分析会社であるチューブラー・ラボ(Tubular Labs)が公開している、Facebookビデオ視聴数TOP5には、Buzzfeedの「テイスティ(Tasty)」やスクリプス・ネットワーク・インタラクティブ(Scripps Networks Interactive)による「テイストメイド(Tastemade)」が常連だ。2016年3月における「テイスティ」動画の再生回数は、合計でなんと22億。その一方で、常に新しいクリエーターたちが、次のバイラルを目指して、トップ動画を模倣している。
新規参入メディア「ツイステッド」
ロンドンを拠点とする「ツイステッド(Twisted)」は、Facebookフードビデオ界での成功を目指しているメディアのひとつだ。同サイトは毎日は1分のレシピ動画を2本公開。面白い食材の組み合わせや調理法が売りで、チーズや炭水化物がたっぷりと登場する。たとえば、「サーモンとアボカドを使った寿司ケーキ」や「ピザ・ワッフル」などが人気だ。
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チューブラー・ラボによると「ツイステッド」は、6週間で2億2000万もの再生回数を叩きだした。現在、100万人超のFacebookフォロワーも抱えており、BuzzFeedの「テイスティ」における5600万人と比べると見劣りはするが、2016年末までには500万人へと増やすことを目標にしている。
動画のフォーマットはというと、ほかの多くのビデオとあまり変わらない。俯瞰撮影で手元中心に調理手順を示すというものだ。Facebookのビデオは、デフォルトで無音再生となっているので、調理のガイダンスは文字で表示される。そんななか、「ツイステッド」は、いかに競合との差別化を図っているのか。
変わり種レシピ動画がメイン
「ツイステッド」は、ローンチから6カ月を迎えるレシピ動画ページ「フード・エンヴィ(Food Envy)」のスピンオフサイトだ。「フード・エンヴィ」自体は、ジャングル・クリエーションズ(Jungle Creations)という創業2年のデジタル・パブリッシャーによって、Facebookでのフードビデオ大流行を受けて作られた。
名前から分かるように「ツイステッド([ヒネられた]という意味)」は、「フード・エンヴィ」で変わり種レシピ動画が人気となったことから作られたサイトとなっている。「フード・エンヴィ」における人気の変わり種レシピは、「ファヒータ・ケーキ(1300万ビュー)」や「スティッキー・チキンのギネスビール・ソース和え(990万ビュー)」だ。
Facebookに一蓮托生の方針
Facebookだけに依存してしまうことにはリスクが伴うが、ジャングル・クリエーションズはまだまだ新しい会社で、Facebookのアルゴリズムにも機敏に対応しているようだ。同社の創業者でありCEOのジェイミー・ボールディング氏は、次のように語っている。
「Facebookから離脱する必要がないように、調理プロセスを単純化することが常に我々のモデルとなってきた。なぜオーディエンスを(Facebookから)離れさせたいなどと思うのか? 彼らが存在する場所に留まることが、このチャンスから利益を生む唯一の方法だ」。
ボールディング氏によると、制作したものの公開されないビデオが、毎週いくつか発生するという。それらは大抵、複雑すぎるという理由で公開されない。たとえば「朝食用・昼食用・夕食用ラザニア」は公開されなかったが、その理由としてボールディング氏は「誰も実際に作らないだろうから」と述べた。
広告では100万ビューを保証
レストランチェーンであるヨー・スシ(Yo Suchi)が、「ツイステッド」の最初の広告主だ。ヨー・スシで新メニューがローンチされるごとに、その関連ビデオが1本作成される。単価は2万ポンド(約320万円)/本だ。近々では、お好み焼きのプロモーションビデオが公開されるという。そこには「ヨー・スシによる提供(paid-for)」と表示されることになっている。
「ツイステッド」はブランドと制作するビデオに関して、視聴回数100万回を保証している。もし100万ビューに達しなかった場合は、ビデオを無償でもう1本制作するという契約だ。
それでも疑問は残る。なぜブランドがほかの大きなプラットフォームではなく、「ツイステッド」を選ぶのかという点だ。それに対してボールディング氏は、ソーシャルメディアにおけるオーディエンスのエンゲージメント率を分析するクラウドバブル(Crowdbabble)社によるデータを示した。「ツイステッド」のビデオは、5.8%という高いエンゲージメント率を叩きだしているのだ。これはほかのライバルたちと比べても高い。
もちろん、オーディエンスが小さいからこそよりエンゲージが起きているという側面はある。オーディエンスがさらに増えても、同じレベルのエンゲージメント率を保てるのかは、また別の問題である。
クリエーターとの関係構築
ふたりの編集部員にひとりの編集長という小さなチームで、「ツイステッド」はシンプルなレシピに集中してきた。しかし、いろいろな方法でビデオに個性を持たせている。その方法のひとつに、地元ロンドンのレストランの主人や料理人たちと、非コマーシャル提携を行っているシリーズがある。
食品を使って彫刻をつくる料理人ベン・チャーチル氏は、「ツイステッド」と一緒にビデオを制作しているひとりだ。人気テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)」の鉄の玉座をチョコレートで作るこちらのビデオは、現時点で52万ビューを集めている。
「ツイステッド」と提携してビデオを公開しはじめてから、チャーチル氏のFacebookのフォロワー数は倍に増えた。またチャーチル氏とのビデオは「ツイステッド」にとっても、ほかの「俯瞰撮影された手元が写った調理ビデオ」と差別化する助けになっている。
「Facebookビデオの次の進化は、クリエーターとの関係構築にあるだろう。YouTubeで既に起きているように、個性・性格といったものを取り組んでいくことだ。だから我々は食べ物を作っている人たちを巻き込んでいる」と、ボールディング氏は語る。
Images courtesy of Twisted.
Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)