一部 米パブリッシャー、EUユーザーの「ブロック」を検討:ちょっと過激な GDPR 対応

5月25日のEU圏での一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)施行が目前に迫るなか、多くのパブリッシャーがサイトのGDPR対応に追われている。施行後は、欧州のビジターに対して、個人情報の収集と使用の許可を得なくてはならず、これを怠ればEUプライバシー保護法に違反することになる。

欧州のオーディエンスや事業規模の小さい米国パブリッシャーの一部は、単純にサイトにアクセスする欧州のIPアドレスを全面的にブロックしてしまうという対処法を検討している。違反の罰金は、場合によってはグローバル総売上の4%に達するおそれがあり、そんなリスクは犯せないという考えだ。

「きわめて過激な」手段

健康・ライフスタイル関連ニュースサイト「ウェル+グッド(Well+Good)」は、サイトのGDPR対応の方法を検討するあいだ、欧州のIPアドレスをブロックするつもりだと、同社のデジタルメディア事業担当バイスプレジデント、クリスティーナ・ロバーツ氏はいう。ウェル+グッドは、将来的には個人情報保護方針をアップデートし、GDPRを遵守する予定だ。だが、そもそもEUからのオーディエンスは全体の3%未満であり、ブロックすれば対応のための時間を稼ぐことができる。

「GDPRの細部はあいまいな部分が多い」と、ウェル+グッドのロバーツ氏はいう。「競合他社がどう対処するかを参考にすれば、絶対に必要な部分を見極められるだろう。ブロックでそのための時間を稼げる」。

エンタメニュースサイト「トピックス(Topix)」も、同社CEOのクリス・トールズ氏いわく、ブロックを検討している。月間ユニークビジター2230万人を誇るトピックスは、売上の10%以上を英国のユーザーに頼っており、これを失うわけにはいかない。だが、それ以外の欧州各国については、必ずしもGDPR対応がコストに見合うわけではない。ドイツなど、オーディエンスのアドブロック使用率の高い国では、収益化が難しいためだ。トールズ氏によれば、英国以外の欧州各国からの売上は「誤差の範囲でしかない」。

同氏は、欧州の全ユーザーをブロックすることは「きわめて過激な」手段だと認めつつ、こうした方法は過去にも利用してきたと話す。「IPアドレスでユーザーをブロックするのは簡単だ」と、彼はいう。「アフリカやアジアの大半の国、なかでも法律上の問題、スパムや詐欺の問題のある国はすでにブロックしている。旧ソ連諸国も大半がブロック対象だ」。

米国の放送局「スクリップス(E.W. Scripps Co.)」でデジタル売上担当シニアバイスプレジデントを務めるトム・スライ氏は、同社はここ8カ月のあいだGDPR対応を進めてきたと話す。だが、もし完全に遵守することができないなら、EUのIPアドレスをブロックする方針だ。何をもってGDPR準拠といえるかはきわめて不確かで、「バックエンドデータに関する部分に多少不安がある」と、スライ氏はいう。「極端なやり方だと思われるかもしれないが、それくらいGDPR遵守を真剣にとらえている」。

GDPRの不確定要素

だが、今後のGDPR対応に関しても、不確定要素は多い。ひとつの解釈は、プログラマティック広告を販売するパブリッシャーは、アドネットワークからGDPR準拠であることを求められるというもので、Googleはこの見解を採っている。「どのアドネットワークも、『このリストにあることを実行しろ』と言ってくる」と、トールズ氏はいう。だが、別の見方では、EU圏以外のトラフィックについては、ベンダーはパブリッシャーに対して、個人情報利用の同意を得る必要性をとやかく言う立場にないとされる。もうひとつの問題は、EUのIPアドレスをフィルタリングした場合、サイトの動作が重くなり、オーディエンスが目減りする可能性があることだ。ただし、この影響はあったとしても軽微なものだろう。

EUのサイト訪問者に対して直接マーケティングを行わないなら、GDPRに対応する必要はないという、広く受け入れられている見解に立つパブリッシャーもある。デジタルパブリッシャーの業界団体「デジタルコンテンツネクスト(Digital Content Next)」で法務担当シニアバイスプレジデントを務めるクリス・ペディゴ氏は、このアプローチを妥当なものと認めつつも、長期的な解決策にはならないという。パブリッシャーのビジネスモデルや、EUの法執行機関が「マーケティング」をどう定義するかに左右されるからだ。

EU全体のユーザーをブロックすることについて、「興味深い方法だが、長期戦略には向かないと思う」と、ペディゴ氏はいう。「長期的には、市場における自社の可能性を閉ざしたいとは誰も思わないはずだ。それに、他国もいずれ同じような規制を導入するだろう。えてしてそういうものだ」。

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Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)