WSJ 、SAP 1社提供の新しいバーチカルを立ち上げる:「エクスペリエンスレポート」の中身

ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal、以下WSJ)は2月25日、エクスペリエンスレポート(Experience Report)と呼ばれる新しいバーチカルメディアを立ち上げた。フォーカスするテーマは、顧客と従業員の体験で、SAP(エスエーピー)が単一スポンサーとなっている。

イベントのビジネスや、企業が顧客や従業員とうまくやり取りする方法をカバーするエクスペリエンスレポートは、WSJのウェブサイトに独自のセクションとして掲載され、ニュースレターの配信も行う。同社の最高収益責任者を務めるジョシュ・スティンチコム氏によると、このバーチカルメディアの目標は、メンバーシップを構築し、最終的には今年後半にイベントに拡大することだという。また、同社はエクスペリエンスレポート部門用に別途編集チームを立ち上げ、新規雇用も行った。

1社提携のバーチカルメディアは、WSJにとってはじめてのものではない。同社は2013年にAdobe(アドビ)と提携し、CMOトゥデイ(CMO Today)を立ち上げた。この提携関係は2年で終了し、スポンサーはデロイト(Deloitte)へと引き継がれた。スティンチコム氏は、これを機にデロイトとの関係を刷新し、カンヌのジャーナルハウス(Journal House)におけるスポンサー契約も結んだという。

1社提供メディアが有する魅力

スティンチコム氏は、パブリッシャーから従来のブランドコンテンツが減っていくなかで、このモデルの魅力が増していると考えている。

同氏は次のように語る。「ブランドがインハウスのコンテンツスタジオを立ち上げるようになり、それまでパブリッシャーが共同制作や外注で行っていた業務を実施するようになった。こういった業務ではパブリッシャーのニーズが減ったが、代わりにコンテンツを関連性の高いオーディエンスに届ける存在として必要とされている」。

また同氏は、エクスペリエンスレポートでは、SAPのディスプレイ広告とブランデッド広告の両方を掲載するが、やがてSAPがインハウスで制作したコンテンツを配信するための媒体となるのではないかと期待している。SAPとの具体的な契約期間は明かせないが、複数年とのことだ。この期間が終了した時点でSAPが契約更新を望まない場合、部門をなくすのではなく、ほかのスポンサーを探す予定だという。

WSJのカスタムコンテンツスタジオ

また、WSJのカスタムコンテンツスタジオ、ザ・トラスト(The Trust)は同部門のためのコンテンツ制作を行わないとのことだ。一方、ザ・トラストによるアカウントの管理機能を、SAPとの提携維持にも活用する予定だという。

「当社が配信側に徹する場合もある。デジタルパブリッシャーのブランデッドコンテンツ分野においてしばしばあることだ」。

ザ・トラストの本来の目的は提携ブランド向けにカスタムコンテンツを制作することだが、今回のプロジェクトではその役割を担うことはない。だがスティンチコム氏は、ザ・トラストにはさまざまなビジネスチャンスがあり、今後も活用されるだろうと語る。

「当社ではイベントプログラムでスポンサー用に時間を調整する形で、カスタムイベントで大きな収益をあげている」。

コンサルティングサービスにも機会

また、同氏はコンサルサービスにもビジネスチャンスを見出しており、すでにブランドがインハウスのコンテンツスタジオを立ち上げる際の支援を開始しているという。「長期的に見れば我々の仕事が減ることになるかもしれない。だが、短期的にはビジネスチャンスだろう」と、同氏は語る。

この部門のアイデアは、2年前にダボスでSAP経営陣と交わした会話のなかで着想を得たという。彼らは同分野が報道するに足るだけの重要性を持つと考えたのだ。

「これもコンテンツマーケティングやブランデッドコンテンツの一種と捉えられるが、特殊なケースなため、動画や記事などのブランデッドコンテンツやパブリッシャーに目を向けていては、なかなか思いつかない発想だ」と、同氏は語る。

現在、プログラマティック広告と高額な直販広告が同社の収益において一番大きい割合を占めるようになっているという。さらに、この収益は総収益よりも成長率が高くなっている(同氏はザ・トラストおよび広告事業の収益の具体額について明かしていない)。

パブリッシャーの新しいマネタイズ

スティンチコム氏は、WSJが今年こうした1社提供のバーチカルメディアを増やしていくと語っている。またそれがサイト上の広告を置き換える形になることはないという。

これについて同氏は、次のようにも述べている。「当社の提携関係において重要な基礎部分になったと思う。ブランデッドコンテンツやコンテンツマーケティングが、過去5年間と比べて、さまざまな面で重要性を増していると言えるだろう」。

Kayleigh Barber(原文 / 訳:SI Japan)