欧州の放送局、「連合」結成で Facebook と Googleに対抗

自力でGoogleやFacebookに勝てないのなら、どこかと手を組んだほうが良い。

イギリスの公共テレビ局チャンネル4(Channel 4)は11月中旬、ドイツのプロジーベンザット・アインス(ProSiebenSat.1)やフランスのTF1、イタリアのメディアセット(Mediaset)が今年結成した全欧州にまたがる放送局のプログラマティック動画連合に参画する英国初の放送局となった。「ザ・グレート・ブリテン・ベーク・オフ(The Great British Bake Off)」のような英国の人気番組を提供するチャンネル4は、共同事業に25%出資し、ビデオオンデマンド部門オール4(All 4)が持つ数百万ポンド(数億円)規模の動画インベントリー(在庫)をプールする計画だ。

チャンネル4はすでに、登録済みの視聴者1600万人のデータを利用して、視聴者の年齢や性別、位置情報、関心事、行動などのデータに基づいた広告ターゲティングの向上やパーソナライズを行っている。欧州のメディア連合への参画で、戦略を話し合うために毎月顔を合わせるほかの提携放送局と、データを共有する機会を増やす方法を模索したいと考えている。

「飛躍する前に基礎を固めたいが、ここから派生する大きな機会がある。リニアTV分野でやっていることに関して協力できることも大きいが、(ほかの提携放送局との)データ一元化をめぐる機会も大きい」とチャンネル4のデジタルおよびパートナーシップイノベーション担当責任者であるジョナサン・ルイス氏は語る。

各種メディア連合の栄枯盛衰

メディア連合は、フランス、ドイツ、ポルトガルといった欧州大陸諸国のいたるところで誕生しつつある。ドイツのメディア企業アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)は、自動車メーカーのダイムラー(Daimler)や保険大手のアリアンツ(Allianz)、ドイツ銀行(Deutsche Bank)、航空会社ルフトハンザ(Lufthansa)、通信会社のドイツテレコム(Deutsche Telekom)とともに、ユーザーのための共通ログイン構想を打ち出した。これにより、同グループは、GoogleやFacebookのログインデータに対しスケールメリットが得られるが、データプライバシー関連の新規制「EU一般データ保護規則」(GDPR)が2018年5月から適用されると、その重要性はさらに増すことになる。フランスでは、日刊紙のル・フィガロ(Le Figaro)と夕刊紙のル・モンド(Le Monde)が提携する一方で、コングロマリットのラガルデール(Lagardère)とプリズマ・メディア(Prisma Media)、米老舗出版社コンデナスト(Condé Nast)、日刊タブロイド紙のル・パリジャン(Le Parisien)などが、独自の連合を結成している。

だが英国では、こうした連合がまだ大陸ほど広がっておらず、こういう共同事業は期待の持てる実績をあげていない。英国で唯一の大規模な連合は、英紙のガーディアン(The Guardian)、CNNインターナショナル(CNN International)」、デニス・パブリッシング(Dennis Publishing)などが参加する「パンゲア・アライアンス(Pangaea alliance)」だ。ただし、ガーディアンが不明朗な料金をめぐって訴訟を起こしたあと、提携相手のアドテク企業ルビコン・プロジェクト(Rubicon Project)と手を切らざるを得なくなるなど、この事業は発展を阻まれてきた。その後は、アップネクサス(AppNexus)が契約を請け負ってきた。テレグラフ(Telegraph)などの英大手紙が関わった別のプログラマティック連合は、軌道に乗らなかった。英国のすべての主要全国紙グループで広告販売の共同事業を立ち上げる構想「プロジェクト・ジュノー(Project Juno)」も、実現しなかった。

ルイス氏は、メディア企業はFacebookとGoogleのデュオポリーに対する競争力を保つために、従来のライバル意識を捨てざるを得ないので、来年はもっと多くの連合が結成されると考えている。「2018年は、大手デジタル企業との競争をめぐる共通の利害のために企業が協力する、提携の年になるだろう。手遅れになる前にそうなる必要がある」。

デュオポリーへの対抗手段

FacebookやGoogleともっと効果的に競争できる大規模なデータシステムをエージェンシーに提供する連合の結成は、少なくとも欧州では、長年に渡ってパブリッシャーのあいだで、ひとつのトレンドだった。これは主に、ディスプレイ広告の売り上げが、大半をGoogleとFacebookに奪われて急減したためだ。広告主の需要がまだ供給を上回っていることを考えると、放送局レベルの品質を持った動画インベントリーは、ディスプレイ広告ほどの影響を受けておらず、チャンネル4はまだダメージを受けていない。2016年のデジタル売り上げは、前年比24%増の1億200万ポンド(約150億円)で、10億ポンド(約1450億円)に達する年間総売り上げの10%を占めた。

とはいえ、FacebookとYouTubeは、もっと多くのテレビ広告予算を手に入れようと努力を続けており、Facebookの「Watch」はその最新例だ。放送局は、パブリッシャーと同じ過ちを犯し、反応が遅すぎてFacebookとGoogleにデジタル売り上げを奪われないかと心配している。「早い時期から危険信号に目を留め、出版業界の企業が現実から目を背けている様子を見てきた。同じ過ちを犯したくはない」とルイス氏は言う。

プロジーベンザット・アインスやアクセル・シュプリンガーなど、データ連合をすでに結成したドイツのメディア企業は、広告予算の大部分を独占する米国のテックプラットフォームに代わる大規模なデータシステムを構築するという、その動機に関して楽観的だ。フランスでは、ル・フィガロやル・モンドなど、データ共有連合にすべてを賭けた大手企業が、同様の姿勢を見せている。

エージェンシーの見解

エージェンシーは、特に欧州全土にまたがるキャンペーンについては、デュオポリーに代わるものを切望している。メディアエージェンシーのスターコム(Starcom)でグローバル戦略担当ディレクターを務めるマーク・ホールデン氏によると、欧州全土にまたがる動画キャンペーンを簡単に購入できるのは、いまのところFacebookとGoogleだけだという。

「両社に取って代わる存在は、大いに歓迎されるだろう。FacebookやYouTubeのような企業と対決するには、チャンネル4がどういう粒度のデータシステムを提供できるか、知る必要がある。FacebookやYouTubeのような企業が関心事や行動にどれほど正確に沿えるのか把握し、そうした企業が国内で提供するものに対抗するようにしたい」と、ホールデン氏は語る。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)