2019年2月13日、欧州の著作権法における改正案の合意がなされたことを受けて、Googleは大きな打撃を受けたようだ。これは、アメリカのテックプラットフォームに対して主導権を握り、パブリッシャーやクリエイターのコンテンツに対して、プラットフォーム側の責任をより重くする、欧州の立法者たちの取り組みの一貫だ。
2019年2月13日、欧州のデジタル時代の著作権法における改正案の合意がなされたことを受けて、Googleは大きな打撃を受けたようだ。これは、アメリカのテックプラットフォームに対して主導権を握り、パブリッシャーやクリエイターが作り上げたコンテンツに対して、プラットフォーム側の責任をより重くしようとする、欧州の立法者たちの取り組みの一貫だ。
現状案のまま採決されれば、この法が与える影響として大規模なパブリッシャーは、Googleニュースなどのサービス上でのコンテンツ表示にあたり、より多くのライセンス料を交渉できるようになるだろう。YouTubeなどのプラットフォームも、著作物をホストする責任を負うことになり、オンラインのクリエイターたちにはより大きな権利が与えられるはずだ。
この法案の最終版は、まだ欧州議会での決議が残されている。決議は各国独自の法律として採用される前、2019年3月または4月に行われる予定だ。企業側は法案の成立後から2年間の猶予期間が与えられる。
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両サイドの言い分
欧州雑誌メディア協会(European Magazine Media Association)や欧州新聞出版社協会(European Newspaper Publishers’ Association)、欧州出版社協議会(European Publishers Council)、そしてニュース・メディア・ヨーロッパ(News Media Europe)、この4つの欧州におけるプレスおよびパブリッシャーの業界団体は、この合意を喜んで受け入れたが、より小規模なパブリッシャーや何人かの政治家、そしてテック系のプラットフォームは、喜びを示さなかった。
「プラットフォームにはコミュニティ独自の基準があり、それを法と同等に捉えているが、パブリッシャー業界団体はそのようには捉えていない」と、スカイグループ(Sky Group)のEUオフィスを率いるダニエル・フリードランダー氏は、2018年2月にロンドンで開催されたビドコン(VidCon)のイベントで語った。「我々にとって、法規制が入るということは、信頼されていることを意味している。自分たちで決めたルールが存在し、そこに責任や監視が伴わない、という場所などあってはならない。冷静に考えれば、あってはならないことだ。コミュニティ独自の基準はビジネスモデルに支障をきたすだけで、なんの役にも立たない。これは利益幅の問題だ」。
Googleは、パブリッシャーとのライセンス料の交渉や、権利保持者への報酬の支払いが余儀なくされ、著作物の識別確認を保証しなければならなくなるような法案の通過に対して、反対キャンペーンを行なってきた。Googleは、法案が通過すればGoogleニュースのツールを極端に減らす、とちらつかせてみたり、この法に反対する若い世代のファンを集めるようにYouTubeクリエイターに働きかけたりといった、懐疑的な戦略を次々と打ち出してきている。その結果、この新しいルールがデジタルメディアにとって何を意味するか、ということ関して多数の誇大広告や誤情報が錯綜した。その代表的なふたつの例が、ネットからミームがすべて排除される、開かれたインターネットが崩壊する、というものだ。
「誤情報戦争」の様相
「(プラットフォームは)彼らのユーザーを盾にしている」と、動画ニュースのエージェンシーであるニュースフレア(Newsflare)の共同設立者であるジョン・コーンウェル氏は語る。「膨大な規則があるのは確かだが、これは将来に向けての我々の第一歩だ。今後は国レベルで、さらに言えば欧州全体でさらに多くのことが起きるだろう。だが、こうした類のキャンペーンは社会にとって非常に好ましくないことになるだろう。公平性・客観性の点でもかなりひどいことだ」。
この法案の詳細な文面はまだ公表されていないが、ソフトウェア会社のパラディン(Paladin)の共同創設者でありCEOを兼任するジェームズ・クリーチ氏の言葉を借りれば、これは「誤情報戦争」だ。
たとえば、この法の最終案に関する数多くのメディアの記事の予測では、プラットフォームはパブリッシャーとのライセンス料を交渉しなければならないとされていたが、実際にはそのような義務はなかった。また、法案改正の反対者たちは、プラットフォームには著作物が(違法に)公開されないように、アップロードフィルタが必要だと主張した。これによって、プラットフォーム側では検閲の問題が持ち上がった。
コンテンツIDの問題
Googleは、この法改正に反対するファンを集めるようにYouTubeクリエイターに働きかけていたが、クリエイター全員が興味を示したわけではなかったと、インフルエンサープラットフォームのファンバイツ(Fanbytes)の創設者、ティム・アームー氏は語る。
「ほとんどのクリエイターは、著作権を侵害されることに対して立腹するが、これはそのクリエイターのレベルによる」とアームー氏は言う。「そこまで立腹しない者もいる。拡散して人の目に触れることがもっとも大事なことだからだ」。
クリーチ氏によると、GoolgeのコンテンツID(Content ID)は、著作物を識別するためのツールであり、業界でもっとも先進的なもののひとつだが、不具合もある。その要因の一部には、コンテンツ量があまりにも多いということがある。そのほかのプラットフォームは、自前でそのようなツールを開発するか、頑強なツールが自社で作れない場合は、フリードランダー氏が勧めるように、Googleに基準を策定してもらって、その技術を使わせてもらうかのどちらかとなる。ドイツ海賊党を率いるジュリア・レダ氏などの欧州議会のメンバーたちは、Googleのようなプラットフォームがアップロードされるコンテンツの決定権を持ってしまうことは危険な前例となりかねない、と考えている。
無干渉主義と免罪符
「これまで、プラットフォームは著作権に関して無干渉主義すぎた」と、コーンウェル氏はつけ加えた。「これによって、プラットフォームは著作権問題に反応するというよりはむしろ、先を見越して準備する責任を負うようになっていくだろう」。
現状、この法案によれば、プラットフォームは権利取得に「最善を尽くした」ことを示す必要があるのだが、フリードランダー氏は、この表現に不安を感じている。「プラットフォームは、責任逃れのための免罪符としてこの言葉を乱用しかねない」。
Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac)