ESPNは2017年4月11日、NFLチームであるシカゴ・ベアーズのファンの生きざまを特集したドキュメンタリー番組、「ウィ・ザ・ファン(We The Fans)」の放送を開始した。しかし、ESPNによると、「ウィ・ザ・ファン」は単なるテレビ番組ではなく「マルチプラットフォーム」シリーズ番組だという。
ESPNが手がける主なビジネスはテレビだが、同社は「家庭内で一番大きなスクリーン」を超え、そのスコープを拡大する「賭け」を続けている。
2017年4月11日、ESPNは、NFLのシカゴ・ベアーズのホームグランド、ソルジャー・フィールド(Soldier Field)のセクション250からシカゴ・ベアーズのシーズンチケットを持つ人たちの生きざまを特集したドキュメンタリー番組、「ウィ・ザ・ファン(We The Fans)」の放送を開始した。1カ月を通して続くこの番組は、8つのエピソード(各30分)で構成され、5月4日までの期間、毎週火曜日に2回分のエピソードが連続で放送される。
しかし、ESPNによると、「ウィ・ザ・ファン」は単なるテレビ番組ではなく「マルチプラットフォーム」シリーズ番組だという。デジタルとソーシャルプラットフォーム向けに作られたオリジナルの動画や、毎週の番組放送後のポッドキャスト、アートやグラフィックに富んだエッセイなども包括したコンテンツなのだ。
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横串の組織で制作する番組
「ウィ・ザ・ファン」はESPNにとって大規模なプロジェクトだが、ハリウッドでよくあるように、このプロジェクトのアイデアもランチ中に生み出された。ESPNのバイスプレジデントであり、米国内のデジタルコンテンツ事業を統括するチャド・ミルマン氏は、2016年のESPY(ESPN主催のスポーツ選手に贈られる年間表彰式イベント)の開催に先立って、ロサンゼルスで代理人のひとりとランチの最中に、この「スポーツそのものだけではなく、スポーツが人々を繋げる様を捉えた壮大な物語」という発想にたどり着いた、と語る。
これは、ESPNの関係各所から多くの人材を巻き込む必要があることを意味していた。その昼食から間もなくミルマン氏は、テレビ番組やESPN映画、主力のニュースショーである「スポーツセンター(SportsCenter)」、ESPNの雑誌、ESPN.com の責任者などを含む、およそ40の部門長にメールを送る。実際にプロジェクトが動き出し、開発や制作が進むにつれて、ESPNは社内のさまざまな部門から担当者を30人近く集め、週2回のペースで打ち合わせを開いた。ちなみにその人数には、すべてのプロデューサーや編集者、ライター、デザイナー、プログラミングチームやマーケティングチームのスタッフなどが含まれているわけではない。
「我々は全員すごいモノを作るし、全員がすごいモノを作るためにサポートしたいと思っている」と、ミルマン氏は語る。「ただ、よくある話だが、テレビ向けのプロジェクトの最終段階でデジタル側の人間が入ってきたり、逆にデジタル向けのプロジェクトの最終段階でテレビ側の人間が入ってくることがある。全員がはじめから参加できる何かがやりたかったんだ」。
「ウィ・ザ・ファン」の中身と今後
「ウィ・ザ・ファン」の核となるのはテレビで放映される8つのエピソード。しかし、ESPNには、これをマルチプラットフォームなシリーズ番組として見せるため、デジタルやソーシャル向けのプランがある。たとえば、そのセクションにおける特定ファンを獲得するため、すでにフォロワーの多いESPNのインスタグラム上で、番組の各エピソードのコンテンツを利用したインスタグラムストーリーを制作する予定だ。またさらに、ESPNのサイトやアプリ、そしてSNS向けに、テレビでは放映されなかったシーンを使った短編動画を作るという。
「これをよくあるテレビシリーズにはしたくなかったし、すべてはその発想から来ている」と、ミルマン氏は語る。「デジタルで機能するデジタル体験と、ソーシャルで機能するソーシャル体験を創り出したかった。これが、全員が初期段階から関わることが大事な理由だ」。
「ウィ・ザ・ファン」は、ESPNのコンテンツ戦略をさらに現代的なものへと押し上げるアプローチのひとつだ。2017年初頭、ESPNのネットワークは、スポーツカルチャーにおけるアメリカ国歌の役割について、動画、音声、そしてエッセイを含んだ特別なレポートを公開した。完成までに4カ月かかったこのプロジェクトには、ESPNが運営するWebサイト、ESPN.comやESPNW、ジ・アンディフィーテッド(The Undefeated)から30人近くのスタッフが貢献している。また、「スポーツセンター」用のオリジナルデジタル動画や、2016年秋に放送された番組「カレッジ・ゲームデー(College GameDay)」でのオフショットをSnapChatの「ディスカバー(Discover)」バージョンとして公開した。
「自分たちに何ができるか、どのようにコンテンツを作り出せるか、また、どのようにプロジェクトへリソースを集められるかを常に考えている」と、ミルマン氏は語る。「これらがユーザー、視聴者、そして読者が我々に期待していることであり、その期待に応えたいのだ」。
Sahil Patel (原文 / 訳:Conyac)
Image provided by ESPN