ペイウォールを撤廃し、広告収益モデルへ:米ラジオ局の挑戦

マイク・フランシザ氏が取り組んできたサブスクリプションへの取り組みが、終わりを迎えている。

米・ラジオのスポーツトーク番組の司会として高い人気を誇るマイク・フランシザ氏は、2018年8月にサブスクの音声および動画アプリ「マイクズ・オン(Mike’s On)」を公開した。同アプリでは同氏による独占インタビューや毎日更新のコンテンツに加え、定期的なライブ配信が行われている。同アプリは月額8.99ドル(約960円)、年間契約であれば年額99ドル(約1万600円)という強気な価格設定でも注目を集めた。

その後、フランシザ氏のラジオ番組を制作しているWFANの親会社でもあるラジオ業界大手のエンターコム(Entercom)が同アプリを買収。そしてエンターコムは、同アプリのペイウォールを撤廃し、広告収益モデルを採用しているRadio.comにコンテンツを統合している。

トピックやタレント中心の番組編成へ

マイクズ・オンは、Radio.comにいくつかの新機能をもたらした。そのひとつが動画のライブ配信で、これまでオーディエンスへ実験的な配信が行われている。たとえば、エンターコムは9月はじめに、ラジオDJとロス・タッカー氏をはじめとする元プロアスリートのコラボが売りの、動画および音声コンテンツを配信するスポーツデジタルネットワークを立ち上げた。

マイクズ・オンの料金設定が高額だったため、人気ラジオ番組司会のファンがサブスクにどれくらい登録するかについては疑問の声が多く上がっていた。モバイルアプリ分析企業のアップトピア(Apptopia)によれば、マイクズ・オンはローンチ以降、少数ながら一定規模の加入者を集めてきたが、ここ数カ月でダウンロード数が伸び悩んでおり、過去4カ月の月間ダウンロード数は1000に満たなかったという。

同じくアップトピアによると、同期間のRadio.comアプリの月間ダウンロード数は平均23万となっており、マイクズ・オンのダウンロード数は取るに足らない数字だ。だがエンターコムは現在、特定番組を重視するアプリ商品戦略から脱却し、トピックやタレント中心の番組編成への移行を目指しており、マイクズ・オンは戦略研究には十分な大きさの数字を持っている。関係者によると、エンターコムは将来的にRadio.comのサブスク化も選択肢のひとつとして検討しているという。

ほかにも当てはめられるモデル

ポッドキャストとオンデマンドの音声コンテンツが専門のエージェンシー、アドプターメディア(Adopter Media)の創設者グレン・ルーベンステイン氏によると、大企業メディアはトップタレントがより多くのコンテンツを制作、配信できるようにプラットフォームで活躍の場を提供するようになっているという。これによってトップタレントをつなぎとめ、オーディエンスと直接的な関係を築くこともできる。もしエンターコムがこういった補助的な種類のコンテンツをフラッグシップアプリであるRadio.comに統合できれば、これはほかの放送局のタレントや番組に対しても当てはめられうるビジネスモデルだ。

ルーベンステイン氏は、「エンターコムが有するほかのコンテンツにも簡単に流用できる」と分析している。

Max Willens(原文 / 訳:SI Japan)