GoogleやFacebookなどのプラットフォームにコンテンツを掲載するパブリッシャーは、その見返りに対し、いまも不満を抱いている。しかし、その流れが変化しているようだ。Googleは2017年10月はじめに、ファーストクリックフリー制度のの撤廃を発表。これに対し、パブリッシャー各社は、好意的な姿勢を見せる。
GoogleやFacebookなどのプラットフォームにコンテンツを掲載するパブリッシャーは、その見返りに対し、いまも不満を抱いている。しかし、その流れが変化しているようだ。
Googleは2017年10月はじめに、ファーストクリックフリー(First Click Free:サブスクリプションを実施しているサイトでも、毎日一定量の無料コンテンツをGoogle検索ユーザー向けに提供することで、Google検索の対象になる制度)の撤廃を発表した。これに対し、パブリッシャー各社は、Googleプラットフォームの「即座に自社利益につなげる」という姿勢が進化した、初の事例であると受け止めている。さらにFacebookも、パブリッシャーのインスタント記事から有料購読加入を促すシステムを試験的に開始した。
「はじめての動きだ」
イギリスの老舗メディア、タイムズ(Times)のマネージングディレクターであるクリス・ダンカン氏は、「プラットフォームが、有料ジャーナリズム支援のために何ができるのか、というアイデアをスタートさせているのを見たのは、はじめてだ」と述べた。
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「プラットフォームにとって、我々が作るニュースが高価値であるという認識であれば、どんなものでも歓迎する。パブリッシャーが収益を確保できるモデルであるなら、それは良いものだ。パブリッシャーがオーディエンスとのインタラクションを自らコントロールできるのであれば、それは良いモデルだ。あらゆるプラットフォームと議論するなかで、そういったことはほとんど見たことがない」。
2010年、ロンドンのタイムズはペイウォールを導入した。それ以降、同紙はGoogleの有料サイト向けファーストクリックフリー制度への参加を拒み、事実上Google検索から姿を消した。しかし10月21日現在、タイムズ紙のすべての記事が、ペイウォールのないサイト運営者のコンテンツ同様、Googleの検索エンジンで検索できるようになる。
「恐ろしい未来図」
タイムズの親会社である、イギリスのニュースUK(News UK)は長きにわたり、(GoogleとFacebookの)2社独占状態がパブリッシャーに及ぼす力について声高に語ってきた。
10月20日、ロンドンで行われたプレスガゼット(Press Gazette)とのパブリッシャー・デジタルジャーナリズム・サミットの場で、ニュースUKの最高執行責任者(COO)であるデビッド・ディンズモア氏は出席者を前に、「ニュースメディアアソシエイション(News Media Association)がニュースホイップ(News Whip)のデータを分析した結果、ここ数年、SNSにおけるイギリス国内のWebサイトへのエンゲージメントのうち、47%がイギリスのニュースブランドのコンテンツをソースとしている」と述べた。その一方で、ソーシャルメディア経由のデジタル広告費の大半が独占2社に支払われていると指摘した。
「ニュース収集にかかる費用はすべて、ニュースの発掘に使われる。ソーシャルメディアプラットフォームはそこからほぼすべての収益を吸い上げている」と、同氏は述べた。「この破綻関係を整理せずにいるとなると、編集および検証されたニュースが、国家の支援なしには存在できなくなる、という恐ろしい未来図が見える。プラットフォームの燃料といえる検証済みニュースは消え、金の川がどこかへ流れて行ってしまう危険性がある」。
「政府が介入すべき」
Facebookのインスタント記事を通じたサブスクリプションプログラムのパートナーの1社であるテレグラフ(Telegraph)は、プラットフォームが提供するリーチに対して楽観的だが、これは適切な関係性に基づいている。「我々はメンロパーク(Facebookのカリフォルニア本社)と製品レベルで関係を築いている。イギリスのチームに関しては、非常に特別な関係だ」と、テレグラフメディアグループ(Telegraph Media Group)の最高執行責任者、ロバート・ブリッジ氏は述べる。「いったん製品レベルで話をすれば、違いを生み出すことができる」。
しかし、プラットフォームの取り組みが単なるリップサービスだと捉えるパブリッシャーもいる。ニュースクエスト(Newsquest)の最高経営責任者であるヘンリー・フォール・ウォーカー氏は、「経済問題が処理されるまで、すべて見せかけにすぎない」と語った。「何年ものあいだ、(プラットフォームは)パブリッシャーが作り出したプロの報道コンテンツに便乗し、膨大なデータのインサイトを収集している。一方の我々が受け取っているのは、そこからこぼれ落ちたパンくずのようなものだ」。
プラットフォームは、有害コンテンツ拡散に対して責任を負い、また危険および不適切なコンテンツの隣にブランドが登場してしまう可能性に関して、さらに大きく進歩する必要がある。
「Googleディスプレイネットワークは、質の高い広告環境と低品質なアマチュアコンテンツの認識や区別ができない」と、フォール・ウォーカー氏は述べた。「政府はこれに対して規制を行うべきだ」。
Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac)