10月上旬、Snapchat(スナップチャット)のコンテンツセクション「ディスカバー(Discover)」に、英経済誌「エコノミスト(The Economist)」が加わった。政治、経済、科学、技術分野を対象にした、グラフィック、動画、アニメ、テキストを利用した、14~17のスナップが毎週末に投稿されるという。
Snapchat(スナップチャット)が、そのコンテンツセクション「ディスカバー(Discover)」において、どちらかといえば硬派なニュースを掲載しはじめた。10月上旬、英経済誌「エコノミスト(The Economist)」が新しいチャンネルとして加わったのだ。
エコノミストのチャンネルでは、毎週末に14~17のスナップが投稿されており、政治、経済、科学、技術分野を対象に、グラフィック、動画、アニメ、テキストを利用したストーリーが公開されるという。同誌のコンテンツが週末公開されるという事実は、Snapchatが記事の公開頻度について、以前より柔軟に対応するようになったことを示している。
多様化が進む「ディスカバー」
「ディスカバー」に当初から参加しているピープル(People)やCNNは、毎日コンテンツを投稿。その後、ハースト(Hearst)の「セブンティーン(Seventeen)」誌によるパーティー関連チャンネルなど、期間限定のポップアップチャンネルも登場した。
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また、新興メディア企業Vox Mediaの8つの媒体など、毎日コンテンツが投稿されるわけではないチャンネルもいくつか参入している。「ヴォーグ(Vogue)」(火曜と金曜に公開)や「ピープル」(日曜から木曜に公開)などもそうだ。
Snapchatにとっては、公開頻度を多様化することで、規模が拡大する「ディスカバー」セクションに、さまざまな種類のコンテンツを呼び込める。このセクションでは、今夏のアップデート以降、位置情報を利用してイベントのスナップを投稿できる「ライブストーリー(Live Stories)」のコンテンツも展開されるようになった。
エコノミストが参入した理由
一方、エコノミスト側にしてみると、1週間に一度の投稿ならば、スタッフに過度な負担を強いることなくディスカバーにおける存在感を手に入れられる。Snapchat側のニーズを満たすために専任チーム(MTVの場合、10人もの大所帯だ)を創設しなければならなかったパブリッシャーもいるのに対して、エコノミストでSnapchatを担当するスタッフは4人。いまのところ、そのうちの2人だけが専任のスタッフとなっているという。
What does a 173-year-old newspaper look like on @Snapchat Discover? Find out this weekend! pic.twitter.com/TLIrUQJ3qq
— The Economist (@TheEconomist) October 7, 2016
エコノミストは、「ディスカバー」にとって興味深いコンテンツといえるだろう。このような知的なニュースブランドは、Snapchatの若いユーザー層や遊び心に溢れた空間にマッチするものとは一見思えないからだ。
意外と相性は悪くない
Snapchatによれば、同社は米国に住む18~34歳の人々の41%にリーチしており、「ディスカバー」に参加しているほかのパブリッシャーには、MTV、コスモポリタン(Cosmopolitan)、BuzzFeedなどが名を連ねる。だが、1月にウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal:WSJ)が加わったことは、Snapchatがさまざまなコンテンツに関心を寄せていることを強く示す出来事となった。Snapchatのオーディエンスがこれから歳を重ねていくことを考えると、エコノミストのようなコンテンツは、年齢層の高いユーザーにアピールする取り組みとして、役立つ可能性がある。
Snapchatの親会社スナップ(Snap)でコンテンツ担当バイスプレジデントを務めるニック・ベル氏は声明のなかで、定評のあるエコノミストの編集記事について次のように語っている。「彼らがSnapchatのコミュニティにコンテンツを提供してくれることを喜んでいる。グローバル経済の将来、外交政策、文化など、我々の直面する重要な問題を深く分析した記事が見られるようになるだろう」。
実際のところ、エコノミストのオーディエンスは、同種のメディアのなかでは比較的若い。これは、同誌の記事が軽妙な語り口で書かれ、大学生の読者が多いことにおそらく関係している。リサーチ会社GfK MRIの調べによれば、印刷版の読者の年齢は中央値が48歳で、55歳のWSJや48.8歳のビジネスウィーク(Business Week)よりも若い。
新規読者へリーチする手段
エコノミストにとって、Snapchatに参加することは、同誌を知らない人や誤解している人たちに宣伝ができるチャンスだ。購読料による売上はエコノミストのビジネスモデルの基礎を成すものだが、Snapchatはいまのところ、サブスクリプションサービスを宣伝する機会を提供していない。それでも、エコノミストがSnapchatへの参加に価値を見出していることは明らかだ。同社にとっては、知名度を高めるためにFacebookやTwitterを利用しているのと、同じような戦略なのだ。
エコノミストの副編集長を務めるトム・スタンデージ氏は、次のように述べている。「これ(ディスカバー)は、我々が抱える問題に対処するための実に優れた手段だ。米国では、60%の人々が我々の名前をまったく聞いたことがない。また、名前を知っている40%の人たちのあいだにも、我々がカバーしている内容は経済と金融だけだという誤解がある。これは、ほかの方法ではリーチできないオーディエンスにリーチし、『おい、経済と金融だけじゃないぞ』と、知ってもらうための手段なのだ」。
Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)