英経済誌『エコノミスト(The Economist)』は、LINEアカウントのフォロワー数を数カ国で100万人近くまで増やした。同誌にとってLINEは、トラフィック増加を期待するものではなかったが、人気記事の配信において、フォロワーが800万人を超えるFacebookと同じくらいのトラフィックをもたらしている。
2016年1月にアジア発の人気アプリ「LINE」への記事配信を開始して以来、英経済誌『エコノミスト(The Economist)』は、フォロワー数を数カ国で100万人近くにまで増やした。
ほかのソーシャルプラットフォームに対するエコノミストのアプローチと同様に、LINEへの記事配信は、新しい市場でオーディエンスを獲得し、最終的に、忠実な読者に定期購読を促すのが狙いだった。LINEは、エコノミストにとってトラフィックの大幅増加につながるプラットフォームではないはずだったが、人気記事の配信で、フォロワーが800万人を超えるFacebookと同じくらい多くの参照トラフィックをサイトにもたらしている。
ソーシャルメディアのライターを務めたあと、先ごろエコノミストのニュースレター編集者に就任したサニー・フアン氏は、次のように述べている。「FacebookやTwitterを通じてトラフィックを追い求めるのに忙しいパブリッシャーもいる。比較的ニッチなこれらのプラットフォームが補足的な立場になるのは、珍しいことではない。我々から見ると、(LINEは)読者が多種多様なので実に興味深い。投資する価値があるのは間違いない」。
Advertisement
フォロワー獲得のコツ
10人からなるエコノミストのソーシャルメディアチームは、たいていの場合、全員が担当記事を各ソーシャルプラットフォームに投稿している。だが、LINEについては、オーディエンスがほかのプラットフォームよりも広く世界に散らばっていて、コンテンツを専用フォーマットにする必要もあるため、2~3人の専属チームがいる。
エコノミストが、LINEのページに配信しているコンテンツの量は、以前から変わらない。1日にだいたい6本程度の記事を4時間おきに配信しているので、世界中のオーディエンスが常に新鮮なコンテンツを閲覧できる。だが、コンテンツの幅は広がってきた。最初は、デジタル版と雑誌へのリンクをLINEに掲載していたが、いまは画像担当デスクの写真やエコノミストフィルムズ(Economist Films)の動画、姉妹誌『1843』のライフスタイル記事など、エコノミストが提供するもっと多様なコンテンツがLINEのホームページに表示されている。アジアセクションの記事は、ほかのソーシャルプラットフォームよりもLINEに数多く配信されている。

韓国の坡州(パジュ)市の軍事境界線(38度線)近くにある有刺鉄線のフェンスに掛けられた、大量のリボンを見る少女の記事に関するLINE投稿。LINEの人気コンテンツがもたらす参照トラフィックは、Facebookと同じくらい多い。
エコノミストは、送信するLINEのプッシュ通知数を1日1件から3件に増やした。たいていは、LINEのフォロワーが多いタイやインドネシアに関連する記事を選んでいる。テクノロジー関係の記事も、特に優れた成果を上げている。フアン氏によると、そのなかには有料記事もあるので、読者に定期購読を促しているが、LINEがサブスクリプションに直接与える影響について語るのは時期尚早だという。
良いところ悪いところ
プッシュ通知は、記事にリンクしている小さなカードにユーザーを誘導する。このカードは、テンプレートから作られており、ニュースの写真や図表、イラストを表示できるが、グラフィックには、LINE上にあるパブリッシャーのホームページにリンクを投稿するよりもデザイン上の努力が必要だ。だが、フアン氏によると、そうした努力が報われているという。同氏はこうしたプッシュ通知について、ホームページへのリンクと比べて、最大10倍の参照トラフィックをサイトにもたらしてくれるという記事を「Medium(ミディアム)」に投稿した。それだと、FacebookやTwitterと参照トラフィックの量がほぼ同じということになるが、フアン氏は具体的な数字を明らかにしなかった。
「(フォロワーが多い)タイに関する記事と、アーカイブにある何かに関するホームページの記事の影響力を比較することはできない。プッシュ通知は、我々にとってLINEでもっとも魅力的な機能ではある」と、ホワン氏は言う。
LINEのプッシュ通知以外に、エコノミストは自社アプリのプッシュ通知を利用している。このアプリでは、オーディエンスをセグメント化してプッシュ通知を調整できる。これは、ほかのパブリッシャーも便利だと思っている機能だが、LINEにはこうした機能がない。
アジア以外にも拡大中
アジア市場におけるリーチ拡大がエコノミスト目標だったが、読者層から見ると、このプラットフォームは米国や英国でも地歩を得ている。エコノミストでは、LINEがもたらす参照トラフィックで、米国やカナダ、英国が上位10カ国に入ることが多い。もっと順位は下がるが、シリアやイランといった、エコノミストにとって新たな市場もランキングに入っている。
「LINEのフォロワーの居住地はわかった。フォロワーの特徴と、コンテンツ消費の仕方がどのように違うかを明らかにするのが、次のステップだ」と、ホワン氏は語る。
Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)