プラットフォームの選択肢が広がるなか、パブリッシャーはリソースをどこに振り向けるかで難しい判断に直面する。「エコノミスト(The Economist)」は、これに向き合い、低迷するPinterest(ピンタレスト)などのアカウントを閉鎖する一方で、LinkedIn(リンクトイン)へのコミットを強化してきた。
プラットフォームの選択肢が広がる現状で、パブリッシャーは、リソースをどこに振り向けるかで難しい判断に直面する。英経済誌「エコノミスト(The Economist)」は、これに真正面から向き合い、低迷するPinterest(ピンタレスト)やTumblr(タンブラー)のアカウントを閉鎖する一方で、LinkedIn(リンクトイン)へのコミットを強化してきた。
エコノミストはこの半年間、Pinterestで実験を続けてきた。だが、ソーシャルメディアチームを2人から10人に増員しても、成果をあげられなかったという。「1日目から苦戦していた」と、同誌のコミュニティエディターを務めるデニス・ロー氏は振り返る。「気づいたのは、我々がPinterestに存在する理由を説明するのが難しいということ。Pinterestは、シリアスなコンテンツを共有する場ではない。どちらかというと、アイデアを共有する場だ」。
エコノミストは、Pinterest向けに、カルチャー&ライフスタイル雑誌「1843」(旧「インテリジェントライフ」(Intelligent Life)の記事を投稿していた。旅行ブログ「ガリバーズ・トラベルズ」(Gulliver’s Travels)の記事のほか、アーカイブの記事や「エコノミスト・ストア(The Economist Store)」へのリンクも提供していた。だが、牽引力は得られず、アカウント閉鎖時のフォロワー数は5000人にとどまった。「目立った変化をもたらすには十分でない」とロー氏は述べ、Tumblrアカウントも同じ運命をたどったと付け加えた。エコノミストは今年、多くのTwitterアカウントも閉鎖した。
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毎週2.5万のフォロワーが増加
ソーシャルメディアに対するエコノミストのアプローチは、量より質を打ち出すことだという。LinkedInに対してもそうした方針で臨み、トラフィックを増やすことよりもブランド周知のために利用している。ロー氏によると、取り組みを微調整して、掲載するコンテンツの幅を広げたところ、LinkedInのフォロワー数は昨年の50万人から240万人に増加し、週に2万5000人のペースでいまも増え続けているという。
チームはLinkedInで積極的な投稿を開始した2015年9月当初、同プラットフォーム上での読者層を想定に入れ、投稿するコンテンツをビジネスと金融関係に限定。だが、2016年6月までに、フォロワーの増加率が横ばいになりつつあった。ここでエコノミストが気づいたのは、LinkedInの読者、つまり、キャリアの面で有利な立場に立とうとする専門職の人々が、さまざまなものに関心を抱いているということだ。
「LinkedInでのコンテンツをビジネスと金融に限定したら、獲得できるフォロワーも限られることになった」と、エコノミストのソーシャルメディアライター、エドモンド・ヘンリー氏は書いた。こうしたニーズに対応するため、エコノミストは、記事のテーマを広げ、ほかのプラットフォームと同様にアートやカルチャー、エンターテインメントの分野も扱うようにした。ワインをブレンドする機械や客室乗務員を困らせないコツなどに関する記事も盛り込み、1日を通して毎時、音声、映像、図表、記事などさまざまなコンテンツを投稿しはじめた。
投稿数を減らし、関係性を構築
フォロワー数はすぐに増加したが、それもその後1カ月しか続かなかった。そこで、コンテンツの量を半分に減らして2時間に1回投稿することに決めたところ、フォロワー数は再び増えだした。LinkedInでは、ローカルすぎる政治記事はあまり受けが良くなく、シリアの内戦終結に向けたジョン・ケリー米国務長官とロシアとの交渉といったコンテンツは専門的すぎる一方、より広範囲にアピールする英国のEU脱退や米国の選挙に関する記事には、牽引力があることがわかった。
エコノミストは、LinkedInの特定フォーマットでも実験を行ってきた。たとえば、記事へのリンクが張られた質問付きの赤いテンプレートを投稿している。このテンプレートは読者に対し、コメント欄に質問への回答を書くよう促し、読者との直接的なつながりを築くものだ。

記事へのリンクが張られた質問付きの赤いテンプレート投稿
ここでもやはり、ローカルすぎたり、過剰に冗長だったり、複雑すぎたりすると、受け入れられない傾向があるが、これまでのところ、読者のエンゲージメントは良好だ。LinkedInに投稿しても、1件か2件のコメントしか書き込まれないのが普通だが、「企業の取締役会には性別による定員を設けるべき?」「あなたには常識がありますか?」といった質問には、多くのコメントが寄せられた。
Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)