米・食メディア「イーター」、イベント事業を優先事業に:「体験の経済面が実に魅力的だ」

すべてのパブリッシャーがそうであるように、ボックス・メディア(Vox Media)は収益の多角化策としてイベントに目を向けている。

ボックス・メディアの食のサイトであるイーター(Eater)はこの1年、夜のワインクラブやブッククラブから、食の世界の新進気鋭の人材を取り上げる開始8年のシリーズ「ヤング・ガン(Young Guns)」を活用した終日のサミットまで、さまざまな体験的な事業の拡大に取り組んできた。イーターが今年、主催などで関わったボックス・メディアのイベントは、すでに50件以上となっており、新しいイベントのプログラムやシリーズを2019年だけで11件、立ち上げている。

イーターのイベントはビジネスモデルがさまざまだ。ロンドンではじまり、現在ではさまざまな都市で開催されている、地域のレストラン業界のディスカッションシリーズであるイータートーク(Eater Talks)は、会場であるエース・ホテル(Ace Hotel)とのパートナーシップと、約20ドル(約2170円)のチケットの販売によって賄われている。今年7月にニューヨークで開催したチケットが1枚60ドル(約6530円)のイーター・ヤング・ガン・サミット(Eater Young Guns Summit)は、およそ900人が参加した。このときは、ウォッカブランドのグレイグース(Grey Goose)などがスポンサーに名を連ねた。近く開催されるイーター・ブック・クラブ(Eater Book Club)のように、チケットが10ドル(約1080円)ほどのイベントもイーターは開催している。

イーターの編集長のアマンダ・クラド氏によると、チケット代を相対的に安くすることで若いオーディエンスが参加しやすくなる。特にサミットは、ヤング・ガンが狙う属性が業界の注目の新人だからというのがあるのだという。

「今年は、(チケット販売が)我々の本当のビジネスなのかを知る計画だ」と、クラド氏は話す。「また、チケットがあることで賛同を得られることもある。お金の問題というより、むしろ大事なのは実際に姿を見せる参加意欲が高いオーディエンスがいることなのだ」。

事業拡大に本腰を入れる

イベントはすべて、ボックス・メディアの体験的事業チームが、イーターの編集チームと協力して実施している。同チームのスタッフは現在10名だが、増やしているところだ。

ボックス・メディアの体験マーケティング担当バイスプレジデント、バネッサ・フォントネズ氏によると、ボックス・メディアが実施するイベントはすべてスポンサーに持ち込まれている。ただし、イベント事業の収益が今年どれくらいになるのかについて、イーターは明かそうとしなかった。

フォントネズ氏によると、体験的事業はフェイスツーフェイス(face-to-face)のスポンサー獲得が可能なことが主な理由で「中心的な重要な事業として成長している」という。「こうしたイベントなら、パートナーのところに行って、あなたのところだから持ちこめる機会なのだという話ができるし、とても信頼できる思慮に富んだタイアップになることを請け合える」と、同氏は語る。

クラド氏は、2020年はイーターをさらに拡大するチャンスになると見ている。この8月にヤング・ガンのシェフたちと実施した、3つのポップアップディナーのようなコンテンツが増えることもあるが、ワークショップも考えている。2019年のサミットでワークショップとデモが人気だったのだ。

ただ、チケットが40ドル(約4350円)のワイン・クラブ(Wine Club)が1時間で売り切れるなど、イーターのイベントは売り切れが早い傾向があり、イベントのチケット販売はたとえ収益の中心ではなくても続けるべきだと、クラド氏は受け止めている。

感情的な反応を引き出す力

ブランドの体験的事業への支出をトラッキングするメディアレーダー・イベント(MediaRadar Events)を最近立ち上げた、メディアレーダー(MediaRadar)の創業者でCEOのトッド・クリゼルマン氏は、体験的事業部門の拡大に大きく投資するビジネスプランは、3年前にはほとんどのパブリッシャーになかったものだと語った。それが、いまでは各社が採用を拡大してイベント専任のチームを構築している。

「(メディア企業は)デジタルへの投資を通じた成功を大きく主張すると、かつては考えられていた。しかしいまは、こうしたイベントが機能するという認識がある」と、クリゼルマン氏は語る。広告主が好む、説得力を持ちフェイスツーフェイスのレベルでオーディエンスから感情的な反応を引き出す力がブランドにあることを、同氏のプラットフォームは証明できるのだという。

フォントネズ氏によるとボックス・メディアは現在、消費者向けとB2Bとブランド活性化のあいだで、月に3本強のイベントをプロデュースしている。しかし、最近、ニューヨーク・マガジン(New York Magazine)を買収したことから、2020年はヴァルチャー・フェス(Vulture Fest)などの柱となるイベントにも関与するなど、イベントのポートフォリオはさらに増えるだろう。

「チームが小さいので対応力に一定の問題があり、これから対処することになる」と、クラド氏はいう。「しかし、対応できる限り、こうしたイベントの試みは続けていく」。

Kayleigh Barber (原文 / 訳:ガリレオ)