「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」のソーシャルストラテジーエディターであるタルヤ・ミンスバーグ氏は、同僚たちにSnapchat(スナップチャット)の仕組みを説明する機会を作った。ティーンエージャーの家族や知り合いがいるスタッフには、彼らがSnapchatを使う様子を観察し、ガイド役になってもらうよう指示したという。
同アカウントでは、1週間に2本の投稿がされているが、極めて重要な出来事が起きているときは、本数が増えることもある。民主党と共和党の全国大会の期間には、毎日1本ずつ投稿された(同紙はアカウントの閲覧回数を発表していない)。
「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」のソーシャルストラテジーエディターであるタルヤ・ミンスバーグ氏は、同僚たちにSnapchat(スナップチャット)の仕組みを説明する機会を作った。ティーンエージャーの家族や知り合いがいるスタッフには、彼らがSnapchatを使う様子を観察し、ガイド役になってもらうよう指示したという。
Snapchatの「ディスカバー(Discover)」は、そのローンチ以降、パブリッシャーにとって、まるで実験室のような場所として変貌を遂げてきた。米経済紙の「ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)」から女性向けファッション雑誌の「コスモポリタン(Cosmopolitan)」、インターネットラジオプラットフォームの「アイ・ハート・ラジオ(iHeartRadio)」にいたるまで、さまざまなブランドが、毎日Snapchatを利用する何百万人ものミレニアル世代にエンゲージするための最適な方法を試行錯誤している。
あえて通常アカウントで投稿
ところが、「ディスカバー」における23のパブリッシャーのなかに、「ニューヨーク・タイムズ」は入っていない。その代わりに、通常アカウントを通して、コンテンツの投稿を行っている。8人からなるコアチームを中心に、アンゴラから広島まで、ニューヨークファッションウィーク(NYFW)のランウェイからドナルド・トランプ氏が所有するプレスジェットのキャビンまで、あらゆる場所からスナップを投稿してきた。
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同アカウントでは、1週間に2本の投稿がされているが、極めて重要な出来事が起きているときは、本数が増えることもある。民主党と共和党の全国大会の期間には、毎日1本ずつ投稿された(同紙はアカウントの閲覧回数を発表していない)。
そのような努力に励む一方で、担当のミンスバーグ氏とシンシア・コリンズ氏(同じく同紙ソーシャルメディアエディター)は、Snapchatが「ニューヨーク・タイムズ」のストーリーテリング能力を広げ、まだ読者層の中核を占めるまでには至っていないオーディエンス層を繋ぐ役割を担っていると感じている。
「新しいオーディエンス、つまり若年層と繋がり、いままでのスタイルとは違ったストーリーテリング能力を鍛える手段として、Snapchatを活用している」とコリンズ氏。
現地投稿でライブ感を演出
そこに辿り着くまでには時間がかかった。ミンスバーグ氏は、1年半ほど前にSnapchatの「ストーリー(Stories)」機能が公開されたとき、「ニューヨーク・タイムズ」はそれをどのように活用すべきか考えるようになったという。当初、彼女と同僚たちは、Snapchatアカウントをレギュラー番組で編成されるTVチャンネルのように扱うことを漠然と考えていた。たとえば月曜日は料理、火曜日は国際ニュースレポート……などといった具合だ。
そして、それを皮切りに新しいアイデアが数多く生まれる。たとえば、コラムニストのチャールズ・ブロウ氏に、Snapchatアカウントでインタビューを行ってもらい、「ニューヨーク・タイムズ」の論説ページを活気づけた。同紙のレギュラーシリーズ「ルームフォーディベート(Room for Debate)」に対して、反対意見を表明する執筆者たちが議論の応酬を行うプラットフォームとして活用しはじめたのだ。
ほかにも彼らは、出来る限りニュース現場の近くに行くことで、より身近な体験をSnapchatユーザーに提供しようとしている。米連邦最高裁判所の前やボストンマラソンのゴール地点からの写真の投稿や、今夏のMETガラ(Met Gala:メトロポリタン美術館が主催するパーティー)のレッドカーペットからの投稿なども、Snapchatアカウントで行ってきた。
記者の手に委ねるのが一番
そのほかには、「ニューヨーク・タイムズ」のチーフファッション評論家であるバネッサ・フライドマン氏が、NYFWの会場からSnapchatを使って、「クチュール」という言葉の正しい定義を閲覧者に教える投稿も行った。
こうした実験的な活用を経て、次第にミンスバーグ氏とコリンズ氏は、Snapchatの投稿をもっとも効果的に行える記者たちの手にゆだねるという形に落ち着いた。「我々はSnapchatをすべての記者や編集者、カメラマンに使わせるようにしている」。
いまやイベントの数週間前から、報道に関する打ち合わせにSnapchatも含まれるようになっているとコリンズ氏はいうが、いまも彼女と同僚たちは、Snapchatを使いこなせるように記者たちを指導している最中だ。先月、オハイオ州クリーブランドで開かれる共和党全国大会を報道することになっていたある記者は、出発のわずか1時間前に、Snapchatの使い方を指導はじめて受けていたという。
マネタイズは考えていない
ニュース編集室にソーシャルメディアツールへの高い関心をもってもらうのは、ときとして「言うは易し、行うは難し」だ。しかしコリンズ氏は、これまでにSnapchatが達成してきた普及状況を見て(同アプリは先日、デイリーアクティブユーザー数[DAU]でTwitterを追い越した)、記者たちも関心をもつようになってきたと述べる。
「記者や編集者たちは、Snapchatが一種の社会現象になっていることを理解しており、その活用に意欲を燃やしている」と、コリンズ氏はいう。
「ニューヨーク・タイムズ」をはじめとする多くのパブリッシャーに残された大いなる課題は、マネタイズの方法を見つけ出すことだ。仮想現実(VR)などの領域で新しいスポンサーを呼び込んでいるが、いまのところ同紙のSnapchat施策では、スポンサーシップの売上を生み出そうとはしていない。コリンズ氏いわく、「その方法を模索している人々がいることは確かだが、いまのところ我々は何もしていない」ということだ。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)
Photo by Jleon(CreativeCommons)