OMO時代の メディアブランディング は、どうあるべきか?: DPS 2020 で学んだ5つのこと

リアルがデジタルに飲み込まれはじめた現在、そしてそれがさらに加速する未来において、1次コンテンツを提供するパブリッシャーのメディアは、どうあるべきか?

DIGIDAY[日本版]が主催するPUBLISHING SUMMIT 2020(パブリッシングサミット:DPS)が、2月12日から13日にかけて京都ブライトンホテルにて開催された。今回のテーマ「OMO時代のメディアブランディング」について、2日間に渡り、濃厚な議論が交わされた。

新日本プロレスがデジタル化によってV字回復した軌跡について語ってくれた同社メイ・ハロルド・ジョージ社長。月刊誌『文藝春秋』がnote(ノート)との協業でアジャイルなサブスクリプションサービス構築に踏み切った背景について語ってくれた「文藝春秋digital」プロジェクトマネージャー村井弦氏。自社で保有する20を超えるメディアのID統合を成し遂げたハースト婦人画報社の前西克哉氏、須藤摩耶氏など、さまざまなスピーカーが登壇し、刺激に満ちたセッションで会場を盛り上げくれた。

この2日間の議論を通して見えてきのは、もはやデジタル化が余儀なくされるなか、サスティナブルな成功の道すじが見えはじめていること。さらにデジタル化によって、ユーザーセントリックスにビジネスが進化しつつあるなか、D2C的なアプローチがパブリッシャーにおいても機能しつつあることなどが実感できた。そのうえで、我々が学んだことをあえて挙げるとしたら、次の5つとなる。

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1. インプット・アウトプットを継続する

変化のスピードが加速度的に増していく現代において、DPSのようなカンファレンスなどを通して、いち早く先端情報を入手することは欠かせない。しかし、インプットするだけではなく、その入手した情報を分類・整理したうえ、アウトプットすることも同様に重要だ。DPSでは毎回、ワーキンググループディスカッションやタウンホールミーティングなど、参加者同士が課題やチャレンジを自発的に共有できるコンテンツが用意されている。それらを通して、より深い状況理解と自己分析、そして参加者同士の仲間意識が生まれているようだった。

2. デジタル化の目的を定義する

先述したように、社会全体におけるデジタル化の流れはもはや押し止めることはできない。そんななか、ただ乗り遅れまいと、無策のままにデジタル化へ走るのは危険な行為だ。自らの事業において、デジタル化する意味を定義し、しっかりと戦略を練って推し進めないと、無駄なコストばかりかかって、最後には何も残らないという状況になりかねない。時間や言語・地域の差を超えて、グローバル化を実現するためにデジタル化を推し進めたという新日本プロレスのメイ社長のように、デジタル化の目的を定義することは重要だ。

3. やること・やらないことを明確にする

月刊『文藝春秋』の村井氏は、新規のサブスクリプションサービスを計画するにあたって、システムの自社開発をあきらめ、日本で徐々に存在感を高めつつあるコンテンツプラットフォーム、noteと手を組むことにした。そうすることで、通常なら数千万は下らない初期コストを限りなく抑え、準備期間も数カ月というごく短期間で、ローンチに至ることができたという。目的を定めたならば、そこで満足するのではなく、具現化するために本当に必要なことは何なのか、あらためて問い直すことは重要だ。

4. 適切なパートナーを選ぶ

世界的に、さまざまなデジタル規制が整備されつつある。それらは基本的に、テックジャイアントへ対抗すべく用意されたものだが、逆に火に油を注いでいる部分も否めない。そんなときに、ひとつのメディア、ひとつのパブリッシャーにできることはごく限られているが、そこで無常観に打ちひしがれている暇はないだろう。落ち着いて周囲を見渡せば、同じような悩みを抱えた別のパブリッシャーも多く存在する。さまざまなサポートを提供してくれるパートナー企業も存在する。適切なパートナーを選ぶことができれば、新たな世界を切り開く可能性も高まるはずだ。

5. まずは動き、変容し続ける

さまざまな摩擦を乗り越え、社内のステークホルダーを説得して、自社媒体の統合IDとなる「Hearst ID」を実現したのが、ハースト婦人画報社の前西克哉氏、須藤摩耶氏のふたりだ。オープンIDともなる、この「Hearst ID」を介せば、ハースト以外のメディアとも連携して、さまざまな収益機会につなげていくことが可能になるという。メディアであろうとパブリッシャーであろうと、ある程度勝ちパターンが確立できたものは、なかなかそこから抜け出すことは難しい。しかし、変化が激しい現代社会において、「現状維持」ほど危険な選択はないといえるだろう。

Written by 長田真