[ DIGIDAY+ 限定記事 ]DIGIDAY[日本版]が行った調査によると、旧来の「ディスプレイ広告」、新参の「動画広告」も、日本のパブリッシャーにおける収入源として、存在感は大きなものとなっている。だが、「ブランデッドコンテンツ」の収益性および期待値は、ひとつ頭が抜けた結果となった。
[ DIGIDAY+ 限定記事 ]日本のパブリッシャーにおける主な収益源は、「ブランデッドコンテンツ」に大きな比重がかかりはじめているようだ。
DIGIDAY[日本版]が行った調査によると、旧来の「ディスプレイ広告」、新参の「動画広告」も、日本のパブリッシャーにおける収入源として、存在感は大きなものとなっている。だが、「ブランデッドコンテンツ」の収益性および期待値は、ひとつ頭が抜けた結果となった。
去る2月に京都で開催されたDIGIDAY PUBLISHING SUMMITでは、参加者となった日本のパブリッシャー幹部43名にリサーチを実施。そのうち、「2018年、各チャネルから得た収益の割合は?」という設問に対して、約97%が「ブランデッドコンテンツ」から収益を得ていると回答した。また、回答者の5%が、全収益のうち75−100%を「ブランデッドコンテンツ」が占めるという。また、「2019年にもっとも期待される収益源は?」という設問に対して、「ブランデッドコンテンツ」を上げる人が49%にのぼり、ほかのチャネルを大きく上回った。
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「ディスプレイ広告」の憂鬱
日本のパブリッシャーにおいて、現段階における収益の3本柱は、「ディスプレイ広告」「動画広告」「ブランデッドコンテンツ」だ。特に「ディスプレイ広告」は、「ブランデッドコンテンツ」同様に全収益において占める割合も大きい。しかし、2019年の期待度は、「ブランデッドコンテンツ」の2分の1以下となる23%にとどまっている。
パブリッシャーの「ディスプレイ広告」収益を押し上げるヘッダー入札の日本における普及率は、ルビコンプロジェクト(Rubicon Project)のCTOであるトム・カーショー氏によると、2018年11月段階で72%に及んでいるという。それにともない、セカンドプライスオークションからファーストプライスオークションへの移行もずいぶん進んでいるようだ。「ディスプレイ広告」の価格における下降圧力を押し留め、さらに積み増しも実現できたという意味では、ヘッダー入札による功績は大きい。
しかし、いくつかのパブリッシャーのデジタル収益担当との立ち話によると、ヘッダー入札による積み増しの効果は「2〜3割ほど」と聞く。そもそも、日本の「ディスプレイ広告」の価格は、欧米に比べ、ずいぶん低い。そのため、ビジネスインパクトに対する期待値も「それなりに」という状況なのだろう。
伸び盛りの「動画広告」
その一方、「動画広告」は、いま伸び盛りという印象だ。まだまだ、全収益における比重は少ないものの、多くのパブリッシャーが収益化をはじめている。また、「2019年にもっとも期待される収益源は?」という設問でも、「動画広告」と回答した人は33%にのぼり、「ディスプレイ広告」よりも10%多かった。
「動画広告」の動向としては、ユーザー生成コンテンツ(UGC)への懸念が高まり、今後プレミアム媒体の価値が一層高まることが予想される。また2020年には、いよいよ5Gのサービスインも予定されており、単純なユーザー数だけでなく、動画広告で実行できることも大きく増えそうだ。
その一方で、動画コンテンツのネックは、さまざまなコストが膨らむことだろう。金銭だけでなく、人的リソースも多く必要となるため、収益化できるコンテンツの数および品質を実現できるパブリッシャーの数も限られている。
「ブランデッドコンテンツ」が主軸
そして、いま日本のパブリッシャーにおける収益源の主軸となりつつあるのが、「ブランデッドコンテンツ」だ。現時点における収益の実績および期待値は、ほかのチャネルの追随を得ない。今後しばらくは拡大を続ける領域といえそうだ。
報道機関はともかく、日本のパブリッシャーはもともと、クリエイティブエージェンシー機能を内包しているところが多い。そのため、パブリッシャーサイト内のコンテンツであれ、パブリッシャー外のコンテンツであれ、さまざまなニーズに対応できる「ブランデッドコンテンツ」は、もとよりお手の物といえるのだろう。
とはいえ、今後、サブスクリプションをはじめとする、読者からの収益も大きな柱となることが考えられる。ユーザーファーストがより強まった際に、どのようにバランスを取っていくべきかが、今後の「ブランデッドコンテンツ」の課題といえるかもしれない。
日米パブリッシャーの違い
なお、このリサーチは、米DIGIDAYで2018年に実施されたものと、設問の内容はほぼ同じだ。その結果と比較すると、日米パブリッシャーの事情の違いも見えてくる。
着目すべき点としては、「サブスクリプション」の導入が、アメリカでは50%程度だったのに対し、日本では60%程度まで進んでいる点。「データセールス」がアメリカでは23%程度だったのに対し、日本ではなんと48%程度まで進んでいる点が挙げられる。回答者の言葉の認識具合にも左右されたところもあると思うが、今後の注目領域となっている「サブスクリプション」「データセールス」の両分野が、アメリカのパブリッシャーよりも日本のパブリッシャーの方が先行しているという結果は、興味深いといえるだろう。
Written by 長田真
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