去る2月2−3日、「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT 2017 IN ODAWARA」が開催された。この直前にDeNAの「WELQ」問題やフェイクニュース問題などが起きたため、さまざまな場面でそれらの話題が取り沙汰された。DIGIDAY[日本版]編集長・長田の視点で、その内容を整理する。
去る2月2−3日の2日間、ヒルトン小田原リゾート&スパにおいて、「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT 2017 IN ODAWARA(略称:DPS)」が開催された。国内外における有力パブリッシャーのエグゼクティブが集い、業界の未来について議論する本イベントは、昨年6月に開催されたKYOTOに続く、第2回目となる。
前回開催から、わずか7カ月あまりの時間しかなかった今回。しかし、その期間には、電通の「不適切業務」問題やDeNAの「WELQ」問題、さらには全世界的なトピックとなっているフェイクニュース問題など、業界の未来を左右する大きな事件がいくつも起きた。自然、今回のイベントでは、さまざまな場面で、それらの話題が取り沙汰された。
ちなみに、今回の参加者総数は152名(パブリッシャー37社/66名、テクノロジーベンダー50社/86名)で、前回の参加者の約1.5倍となっている。本記事では、前回同様、DPSにおける最終コンテンツとなった「5 things we’ve learned(私たちが学んだ5つのこと)」をもとに、DIGIDAY[日本版]編集長・長田の視点で、今回のイベントを整理しよう。
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1. 「質」って何?
「量より質」は前回のKYOTOでも大きな話題となった。しかし、量に対する「質」という表現だけでは、いささか漠然としている。なにしろ、このイベントに集うのは、国内外の有力パブリッシャーだ。「コンテンツの質」にかけては悪いわけがない。
我々はつい数カ月前に、DeNAの「WELQ」問題やフェイクニュース問題など、忘れられないターニングポイントを経たばかりだ。いまだその渦中にいるともいえる。そのうえで、たとえば、広告主に提供できる価値の「質」、もしくはオーディエンスに提供できる価値の「質」など、より具体的な「質」の議論が必要な段階に来ていると感じた。
2. オーディエンスとどう向き合う?
無料で情報を提供する広告モデルは、限界に近づいている。それを印象づけたのは、やはり「WELQ」やフェイクニュースの問題だ。「量より質」を具現化するには、オーディエンスとの付き合い方の見直しが必要となる。
そんななか、多くの関心を集めていたのが「サブスクリプションモデル」。有料モデルであれば、そのままマネタイズに繋がるし、無料モデルであればオーディエンスデータで別のビジネスを考えられる。ユーザーにさまざまな負担を強いるこの仕組は、まだまだ改善が求められるが、今後のデジタルパブリッシング業界において、一縷の望みとなりそうだ。
3. 指標をどう改良する?
「ページビュー(PV)という指標は破綻している」という主張は、何年も前から存在しているが、やはり例の問題で、それがいよいよ顕著となった。たとえ、莫大なPVを得られても、広告提供先が盗用紛いのコンテンツであったり、そもそもニセモノの情報ならば、資金提供を行った広告主の責任も問われるからだ。
本イベントでも講談社の長崎亘宏氏や産経デジタルの鳥居洋介氏も触れていたが、いまこそPVに代わる、しかも業界内で統一された指標が求められている。しかし、この問題を解決するには、まだまだ多くのトライアンドエラーが必要なのだろう。
4. 人材をどう構成する?
「量より質」で勝負するには、デジタルの本質をついた改革を、それぞれのポイントで施さなくてはならない。そのためには、デジタルに理解のあるクリエイター、またバックエンドを支えるエンジニアが必要だ。
アドテクノロジー業界の経験が長い、BuzzFeed Japanの上野正博氏も語っていたが、日本のパブリッシング業界には圧倒的にエンジニアの数が少ない。しかし、資金的にも人材的にも、一気に大量投入できる状況にもない。そこで、頼りにしたいのが、テクノロジーベンダーだろう。彼らもパブリッシングには疎いところもあるが、うまく補完関係を構築できれば、新しい道が拓けるはずだ。
5. 業界内でどう連携する?
今回のイベントで、特に目立った内容は、社内外のメディア連携施策だ。この夏にお披露目となるという講談社の社内メディアを束ねた「コンピレーションメディア」や、集英社の子会社Project8によるECサイト「FLAG SHOP(フラッグショップ)」とポータルメディア「HAPPY PLUS(ハッピープラス)」、そして社外のメディアと連携を図る日本ビジネスプレスの「isメディア(イズメディア)」などである。
また、連携すべきはメディア同士だけではない。今回のイベントには、ヤフー株式会社の宮澤弦氏も参加し、プラットフォームとして各メディアとどのように連携していくかのセッションも行われた。これに関しても、いますぐの答えは出てこないが、少なくともさまざまなチャレンジと話し合いが行われていることが、まずは重要といえる。
以上の5つが、「DPS 2017 IN ODAWARA」における大きな話題だ。なお、本イベントの第3回は、1年後に予定されている(詳細未定)。それまでのあいだに、少しでも大きなアップデートに貢献できるよう、業界人のひとりとして尽力したい。
Written by 長田真